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事の発端

はじめまして、七海星斗と申します。

以前は別HNで別HPで作品を書いていたのですが、長らく執筆から離れていたため、今回リハビリという事で作品を書いてみました。


微妙に更新が不定期になるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。




「……お話は分かりました。しかし、我が家から候補を出すつもりはありません、ミゲール様」


「しかし……。陛下からの打診でもダメでしょうか? シーゲル男爵」


「何度言われても、我が家から出すつもりはありません。どうしてもというのであれば、領民から腕のいいのを出させますが」


「それでは意味が無いと……」


 丁寧に頼み込む宰相に、頑として受け付けない父。


 その姿を見ながら、イーリス・ミル・カミジールは内心で深くため息をついた。


「ならば諦めてください。何度も申し上げている通り……娘をレンフィールド殿下の正妃候補として城にあげるつもりは無いのですよ、ミゲール様」


「ですから、本当に正妃に収まっていただく必要はないのです。陛下や我々が期待しているのは、レンフィールド殿下の貴族令嬢嫌いを直すという、その一点のみなのです」


 長女のフェリス・ミル・カミジールと次女のキキョウ・ミル・カミジール、四女のシェリス・ミル・カミジールの三人と並んで座りながら、イーリスは目の前で交わされる会話を右から左へと流していく。


 どうせ最終的には、自分が行く事になるのだろうと諦観を持ちながら。




 アークジュエル王国は、エウロパ大陸の西側ある周りを山に囲まれた国だ。


 国は広く、周辺国と比べると最も広い領土を持っている。


 国の中央にある山に建てられており、その周りは四方の山から流れ出た水が集まってできた川に囲まれている。


 大きい山が周囲にあるため攻めるに難しく護るに容易い地形でるが、周囲の国々との国交が難しいという欠点もある。


 それも数代前の王が街道を整備した事でだいぶマシになっているが、それにしても交通の便が悪い事には変わりがない。


 エウロパ大陸の西部を全ているのは全部で五国。


 東のシンクレア傭兵国。


 西のダイレイス魔法国。


 南のユーレスト神聖国。


 北のカインスレフ技術国。


 そして中央のアークジュエル諜報王国。


 カミジール男爵家は、シンクレアへと続く街道の一つが出ている地域を納めている貴族だ。


 とは言え、その領地は小さく、中央の大都市へと商人などが通る際の中継地としての役割が強い。


 その上カミジール家の領主は代々温和であり、平和主義者である。


 権力闘争自体が好きではなく、ただ自分の領地をそれなりに豊かにし、領民が飢えたり生活に過剰な不自由をしないように心を砕く傾向が強い。


 そしてそういう性格だからこそ、諸外国へと続く街道の出口を任されてると言っていい。


 もっともそれは、表向きの話だが。


 他の三街道は、全て国政の中心を担っている宰相・元帥・参謀長を務める三公爵が納めている。


 それから言っても、カミジール男爵家がこの領地を任されている事が異常であるかがわかるだろう。


 清廉潔白であり、またその温和な性格、そして過去に侵略があった際には領民全てと一丸になり援軍が来るまで防衛を成し遂げたと言う事で、『鉄壁の忠臣』という名で呼ばれている。


 現在、カミジール男爵家には四人の娘がいる。息子は一人もおらず、長女の結婚相手が男爵家を継ぐ形となる。


 眼鏡をかけた優しい風貌の少女が、長女のフェリス。ほっそりとした顔立ちに柔らかい金髪が印象的な、どこか儚さを感じさせる美人である。年齢は十八。


 自国他国問わず歴史について調べるのを趣味としており、眼鏡をかけているのは本の読みすぎで視力を悪くしたからだ。


 父と宰相の話に飽きたのか、フェリスに話しかけては窘められているのが次女のキキョウだ。


 フェリスと異なる銀髪で、少し勝気な顔立ちをしている。年齢は十七。髪の色は母親からの遺伝だろう。ちなみに姉の金髪は、父からの遺伝である。


 運動が得意であり、特に短剣術に秀でている。すばしっこい動きと共に繰り出される剣は、カミジール家に仕える騎士でも新米では絶対に捌けないと評判だ。


 イーリスの隣でうとうと船をこいでいるのが、四女のシェリス。フェリスと同じく金の髪をしている、まだ幼さが多分に残る十歳の子供だ。将来美人間違いなしと評される愛くるしい顔をしており、その性格は多彩な性格を持つ姉や両親たちにこれでもかと言うほど甘やかされており、純粋で無邪気だ。


 そして、自分――イーリスは、家族の誰とも似付かない黒目黒髪であった。年齢は十六。顔立ちも不細工までとは言わないが、姉妹たちに比べると一歩劣る。極めて平凡な顔立ちと言っていい。父が言うには、死んだ祖母――イーリスからすれば祖祖母が黒目黒髪だったと言うから、隔世遺伝なのだろう。


 性格は奔放にして豪快。勝気な姉をも振りまわすトラブルメーカーを自認しており、他者も諦めたような笑いをもってそれを認めるだろう。


 野を駆け山を駆け、古今東西の書物を読んで兵法を学び、罠作りに精を出す。


 おおよそ貴族の姫らしくないのがイーリスだった。


 無論、男爵家の令嬢に恥じない躾はされている。姉や家族がそろって『酷い猫かぶり』と称するくらいに、本来のイメージにはそぐわないらしいが。


「フェリスは婿を取って我が家を継いで貰わねばなりません。キキョウは先日想いを寄せていたバージル家の跡取りと婚約が決まったばかり。シェリスはまだ十歳になったばかりで幼すぎる」


「で、では、イーリス様なら」


「イーリスは、我が家の“要”です。宰相様であれば、その言葉が意味する所は分かるはずですが」


「……なればこそ余計にイーリス様には候補として王城に上がっていただきたいのですが」


「ダメです。イーリスは既に我が機関の長として職務に就いているんです。だからこそ、アレを家から出すわけにはいきません」


「む、むぅ……それは本当に困りましたねぇ……。正直当てが無いわけではないんですが、それでも万全を期していたいんです。どうにかなりませんか、シーゲル様」


「そう言われましても……」


 はぁ、とため息をつくいい大人が二人。


 そしてそれを苦笑しながら見ている姉二人と、不思議そうにきょとんとした顔をしている妹一人。


 そんな場の状態を一通り眺めると、イーリスは深くため息をついた後立ち上がった。


「お父様、ミゲール様。私が正妃候補として出向き、正妃にならずに帰ってくればよろしいんですよね? 候補の貴族令嬢に対しレンフィールド殿下が興味を持たれる様に仕向けた上で」


「え、ええ。イーリス様の言うとおりです。今回は正妃を決めるために爵位持ちの貴族から、候補を募っているのです。正妃さえ決まれば、他の候補様達が望むのであれば実家へとお返しする手はずになっています」


「ならば問題ないですね。所で、妃候補が集まるまで後どれくらいあるのでしょうか?」


「今からですと、一ヶ月後になりますね」


「なるほど……。わかりました、それまでに殿下に嫌われる振舞いを覚えて、目ぼしい候補者を絞ればいいわけですからね。何とかやって見せましょう」


 とんとん拍子に話を進めていく。


 姉たちは苦笑を深め、シェリスは「おねーちゃん、お嫁さんになるの?」と寂しそうな顔をする。


 あまりの可愛さに抱き寄せて頭を撫でてあやしつつ、イーリスは視線を父へと向ける。


「侍女はアイリスだけでかまわないですよね? お父様。その代わり、鼠と猫、鳩を今のうちから送り込んでおいてください」


「わかった。やれやれ……ふがいない父ですまないな、イーリス」


「あら、かまいませんわ、お父様。こうなる事は、すでに予想されていた事……。巧く嫌な女を演じられるかは分かりませんが、努力して嫌われてまいります。最も、そのせいで風当たりが強くなるかもしれませんが……」


「それはそれで構わないよ。お前が失われる事になるくらいであれば、多少風が強くなった所で何ともない」


「あら、嬉しいですわ、お父様」


 妹の頭を撫でながら話を続けていく。


 宰相から殿下の好みな女性像を調べて手紙で送るという言葉を受けた後、この話しあいはお開きとなった。


 さて、勝負は一月後からである。





お読みいただきありがとうございました。


とりあえず、プロローグ。

王太子妃になどなりたくはないイーリスがこれから王城でどういう物語を紡いでいくのか。

それは作者にもわかりません。プロット実は作ってないですし。

行き当たりばったりで筆の向くままキャラの動くままに作品を作っていきます←ダメな人


では、改めまして。今後ともよろしくお願いします。


12/13 次女の名前がイーリスの侍女と同じ名前だったのを修正。

行き当たりばったりで書いているからこうなるでござる

1/21 加筆および修正実施。

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