5人の騎士達
重い鉄の扉が閉まった。
鈍い音が石の壁に響く。
騎士たちは、城の一室に閉じ込められていた。
窓はない。
四方を石壁に囲まれた、静かな部屋だった。
中央に五人の男が立っている。
しばらく誰も口を開かなかった。
最初に沈黙を破ったのはニーロウだった。
赤髪を長く結ったロングポニーテール。
細い目をした男だった。
狐のような顔立ちで、どこか楽しそうに笑っている。
「さて」
静かな声だった。
「閉じ込められましたね」
腕を組んでいる男がいる。
ギルベルトだ。
金髪の騎士で、凛々しい目をしている。
体格も良く、武人らしい雰囲気だった。
第一王女アリーシャの騎士である。
「王の気まぐれだ」
短く言う。
ナルタルが落ち着かない様子で辺りを見る。
淡い茶色の髪の青年で、少し気弱そうな顔をしている。
第四王女ターニャの騎士だった。
「……試練って、どういう意味なんでしょう」
ルーカスが言う。
「姫を信じるしかありません」
柔らかな茶色の髪の青年だった。
真面目そうな瞳をしている。
第二王女ナナの騎士である。
ニーロウが笑う。
「ずいぶん素直ですね」
ルーカスは迷わず言った。
「ナナ様は、誰よりも美しい方です」
「そして、誰よりも強い方です」
ナルタルが聞く。
「強い?」
ルーカスは頷く。
「ナナ様は、自分が美しいと知っています」
「でも、それを誇るだけの人ではありません」
少し笑った。
「侍女が池に落ちたことがありました」
「ナナ様は迷わず飛び込みました」
「ドレスのまま」
ナルタルが驚く。
「えっ」
ルーカスは言う。
「ナナ様は言いました」
「どんな姿だって美しいからいいの、と」
ナルタルは思わず笑った。
「……なんか、ターニャ様みたいだ」
ギルベルトが鼻で笑う。
「全然違う」
ナルタルが慌てる。
「えっ」
ギルベルトは腕を組んだまま言う。
「アリーシャ様は王になる方だ」
ルーカスが聞く。
「どういう意味ですか」
ギルベルトは迷わず言う。
「迷いがない」
「自分が王になることを疑っていない」
少し笑う。
「だからこそ俺は仕える」
「第一王女だからじゃない」
「アリーシャ様だからだ」
ナルタルは静かに言う。
「……いいですね」
そして言った。
「ターニャ様は怖い方です」
ニーロウが笑う。
「怖い?」
ナルタルは頷く。
「剣は強いし」
「言葉も強い」
少し照れたように笑う。
「でも」
「誰よりも真っ直ぐです」
「嘘をつけない」
「そういう人なんです」
ルーカスは頷いた。
「いい姫ですね」
ナルタルは言う。
「だから騎士になりました」
その時、静かな声が聞こえた。
「カノン様は」
シャロンだった。
銀髪に青い瞳。
落ち着いた端正な顔立ちの青年だった。
第三王女カノンの騎士である。
ニーロウが言う。
「どんな方です?」
シャロンは少しだけ考えた。
そして言う。
「強い方です」
ルーカスが少し意外そうな顔をする。
「優しい方だと思っていました」
シャロンは頷いた。
「優しいです」
「でも」
少しだけ声が柔らかくなる。
「誰よりも強い」
「だから私は仕えています」
ニーロウが笑う。
「忠誠ですね」
シャロンは静かに首を振る。
「違います」
四人が彼を見る。
シャロンは言った。
「信頼です」
その声は揺らがなかった。
「カノン様は勝ちます」
ニーロウが聞く。
「なぜ?」
シャロンは答える。
「カノン様だからです」
少し沈黙が落ちた。
ナルタルが小さく言う。
「……好きなんですね」
シャロンは否定しなかった。
ただ静かに言う。
「騎士ですから」
ニーロウは楽しそうに笑う。
「なるほど」
「皆、姫に誇りを持っている」
そして言う。
「美しいですね」
細い目が光る。
「忠誠というものは」
ナルタルが聞く。
「ニーロウは?」
ニーロウは肩をすくめる。
「私ですか?」
少し笑う。
「もちろん」
「サシャ様を信じていますよ」
その声は軽かった。
その時だった。
壁の向こうから声が聞こえた。
姫たちの声だった。
試練が始まったのだろう。
ナルタルが壁に近づく。
「ターニャ様……」
ルーカスも言う。
「ナナ様」
ギルベルトは腕を組む。
「アリーシャ様なら問題ない」
シャロンは静かに目を閉じる。
小さく呟く。
「カノン様」
その声は祈りのようだった。
ニーロウは笑っていた。
「さて」
細い目が光る。
「生き残るのは誰でしょうね」
王の作ったゲームが。
静かに。
始まっていた。




