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姫ゲーム

玉座の間は静まり返っていた。


高い天井。

赤い絨毯。

その奥にある玉座。


そこに座っているのはカノンだった。


栗色の髪。

深い緑の瞳。


そして。


包帯だらけの身体。


腕も足も、まともには動かない。


第五の試練を越えた代償だった。


王はゆっくりと玉座へ歩み寄った。


「見事だ」


低く満足そうな声だった。


「五つの試練を越えた姫」


「やはりお前が勝った」


広間に並ぶ貴族たちは誰も声を出さない。


ただ静かに見ている。


王は続けた。


「これで国は安泰だ」


「女王がいる」


玉座を見上げる。


「そして」


少し笑う。


「優秀な宰相がいる」


王は胸を叩いた。


「政治は私が行う」


「お前はここに座ればいい」


「それだけで民は安心する」


カノンは黙って聞いていた。


王はさらに言う。


「よくできた仕組みだと思わないか」


「姫ゲーム」


少し歩く。


玉座の下に立つ。


「姫は試練を越える」


「だがその代償に身体は壊れる」


「城から出られない」


「戦えない」


「だが象徴にはなる」


王は笑った。


「そして」


振り向く。


広間の端。


そこにシャロンが立っている。


銀髪の騎士。


静かに、まっすぐ立っていた。


王は言う。


「お前は知っているだろう」


「カノンはお前を信頼している」


少し笑う。


「いや」


「それ以上だ」


沈黙。


カノンの瞳が揺れた。


王は続けた。


「だからお前はここにいる」


「騎士として」


「そして」


低く言う。


「人質として」


広間の空気が凍る。


王は楽しそうに言った。


「カノンは逃げない」


「お前がいる限り」


「私に逆らえない」


腕を広げる。


「つまり」


「私はこれからもこの国を動かす」


「宰相として」


「ずっと」


長い沈黙が落ちた。


カノンは動かない。


ただ王を見ていた。


やがて、小さく息を吐く。


「……そっか」


静かな声だった。


そして。


視線がゆっくりと動く。


シャロンを見る。


ほんの一瞬だけ。


幼い頃、王城の広場で出会った時と同じ目だった。


それからカノンは前を向く。


小さく笑う。


「これは」


少し間を置く。


「"姫"ゲームだったもんね」


王は満足そうに頷く。


「そうだ」


「お前は姫として勝った」


だがカノンは答えない。


ただ玉座の肘掛けに手を置いた。


震える手だった。


そしてもう一度シャロンを見る。


「……シャロン」


シャロンはすぐに膝をついた。


「はい、陛下」


カノンは静かに言う。


「このゲーム」


小さく笑う。


「勝ったのは、わたしだよ」


玉座の間に沈黙が落ちる。


王はその意味を理解していない。


貴族たちも気づいていない。


ただ一人。


玉座に座る女王だけが知っている。


この城から出られないのは

わたしだけじゃない。


王も。


そして。


シャロンも。


カノンはゆっくりと目を閉じた。


そして静かに思う。


これは王の遊びでは終わらない。


ここからは。


わたしの番だ。



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