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騎士達の部屋

騎士の部屋には三人だけが残っていた。


シャロン。

ナルタル。

ニーロウ。


壁の向こうから声が聞こえる。


姫たちの声。


それだけが試練の様子を伝えてくる。


ナルタルは壁に手をついていた。


「姫様!」


必死に呼ぶ。


だが何も見えない。


姫がどこにいるのかも、どんな状態なのかも。


ただ声だけ。


その声の向こうで、何かの音がする。


ごり、と。


石をこするような音。


ずる、と。


何かを引きずる音。


ナルタルの顔が青くなる。


「……」


言葉が出ない。


想像してしまう。


姫は歩いていない。


這っている。


「姫様!」


声が震える。


「もうやめてください!」


壁の向こうから返事が来る。


ターニャの声だった。


少し笑った声。


「やめないよ」


息が荒い。


「勇気の試練だろ?」


ナルタルは拳を壁に叩きつけた。


「そんなものどうでもいい!」


「姫様が死んだら意味ないじゃないですか!」


返事はない。


その代わり。


また音がする。


石を掴む音。


滑る音。


荒い呼吸。


ナルタルは唇を噛む。


そして。


小さな音。


ぱきっ。


石の割れる音。


ナルタルの身体が固まる。


「姫様……?」


次の瞬間。


ターニャの息が乱れる。


苦しそうな声。


石を掴む音。


何かが滑る音。


ナルタルは叫ぶ。


「姫様!!」


必死な声だった。


だが。


次に聞こえたのは、別の声。


カノンだった。


何かを言っている。


だがよく聞こえない。


そのあと。


ターニャの声。


静かな声だった。


「……ありがと」


ナルタルの瞳が揺れる。


そして。


「でもさ」


小さな声。


「ぼくじゃ、勝てない」


ナルタルは叫んだ。


「何言ってるんですか!!」


「姫様!!」


その時。


風の音が聞こえた。


強い風。


奈落の底から吹き上げる音。


そして。


ターニャの声。


「――勝てよ」


次の瞬間。


声が消えた。


ナルタルは壁を叩く。


「姫様!!」


返事はない。


その代わり。


しばらくして。


遠くから音が響いた。


――ドン。


鈍い音だった。


重いものが床に叩きつけられる音。


奈落の底から。


ナルタルの身体が止まる。


呼吸が止まる。


「……」


理解するまで、少し時間がかかった。


そして。


膝から崩れ落ちた。


「……姫様」


小さく呟く。


拳が震えていた。


部屋は静まり返っている。


誰も何も言わない。


ニーロウも。


シャロンも。


ただ沈黙していた。


やがて。


低い音が鳴る。


鉄の扉が開く音だった。


ナルタルが顔を上げる。


兵士が入ってくる。


槍を持っていた。


ナルタルは理解する。


静かに立ち上がる。


逃げない。


「……そうか」


小さく呟く。


ターニャのことを思う。


声しか知らない試練。


見えない場所で。


姫は落ちた。


もし。


もしこの先で死ぬのなら。


「……追いつけるかな」


小さく笑う。


「姫様」


呟く。


「すぐ行きます」


兵士が槍を構える。


ナルタルは目を閉じた。


ターニャの声を思い出す。


「勝てよ」


最後の言葉。


ナルタルは静かに息を吐いた。


そして。


槍が突き刺さった。


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