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5-22話 ボクのこれから

 ボクが目覚めた時、いろんなことが起こっていた。

 グレイスさんは元気になっていたし、ニーナも元気になっていた。

 そして、村の人たちも帰って来ていて、リンドーたちもいてすごく安心した。


 あと、よくわかんないけど知らない人が村に来ていた。

 スタンの先生になる人って言ってたけど、一旦どんな人なんだろう?

 ボクも教えてもらったらスタンの役に立てるかなぁ。


「アップちゃん。具合どう?」

「あ、ニーナ。ありがとう。僕もう大丈夫だよ。いっぱい美味しいもの食べさせてもらったし、いっぱい寝たし。元気いっぱい。」

「ほんとに?」


 ボクはニーナのお部屋で休ませてもらっていた。

 ニーナは凄く責任を感じていて、ボクが早く元気になるように看病してくれた。

 おかげでだいぶ魔力も回復したし、多分もう大丈夫。


「あ、そうだ。元気になったらガストさんがお店に来てほしいって言ってたよ。一緒に行く?」

「ガストさん? ボクお話しするの初めてかも!」


 ボクはニーナに連れられてガストさんのお店に来た。

 ガストさんのお店は冒険者用の武器や防具、あと日用品の金物や雑貨なんかも売っているなんでも屋さんみたい。


「ガストさん。こんにちは~。」


 お店に入ってニーナがガストさんを呼ぶ。

 初めてここに入るのでちょっとドキドキした。


「あ、ニーナじゃん。あ、アップ。元気になったのか~。待ってたんだよ。師匠は奥に居るから今呼んでくるね。」


 店番をしていたアル君が、ガストさんを呼びに店の奥へと入って行った。

 実はボクとアル君はすでに知り合いでトモダチになってたんだ。

 少しの間そこで待っていると、奥からガストさんがやって来た。


「おお、アップ。面と向かって話すのは初めてだな。俺はガストだよろしくな。」

「ボクはアップ。ガストさんよろしくお願いします。」

「おう。ニーナとスタンを助けてくれてありがとうよ。それでな、スタンからこれを頼まれてたんだ。受け取ってくれる?」


 そう言うとガストさんは、ボクの体にぴったりなサイズのリュックを渡してくれた。

 渡された瞬間、これが今まで僕が背負って行ってリュックだとわかる。


「これ・・・」

「そうだ。お前のリュックを手直しさせてもらった。元のリュックはボロボロになっちまってたから元道理にできなくて済まねえ。とても大事な物だったんだろう?」

「ううん。全然大丈夫。すごく嬉しいよありがとうガストさん。ボク、またみんなと冒険に行けるんだ・・・。こんなにうれしいことはないよ。」

「そうか、そう言ってくれるか。これからもスタンのやつをよろしくな。」


 ボクはリュックを背負ってニーナに見せる。


「どう? 似合う?」

「うん。すごくよく似合ってるよアップちゃん。」

「えへへ。うれしいなぁ。」


 ボクがニコニコしていると、アルが話しかけてきた。


「そうだ、アップ。リュックの中にこれだけが残っていたんだけど、これ冒険者の腕輪? だいぶ古いみたいで壊れてるっぽいけど。」


 すっかり忘れていた。

 何で忘れていたんだろう。

 ボクは、これをスタンに渡さなきゃいけないんだった。

 

「なぁアップ。一つ聞かせてくれるか?」


 ガストさんは何かを悩んでいるような表情だ

 

「うんいいよ。ガストさん。」

「その、お前が仲間と冒険して残されたものをあいつに託して、どう思ったか教えてくれ。」


 どうしてそんなことを聞くのか、その時のボクはよくわからなかった。

 だけどきっと、スタンのために何ができるのかガストさんは一生懸命考えてくれていたんだって今ならわかる。

 

「寂しかったよ。」

「そうか・・・。」

「でも、スタンに託せてよかった。スタンは自分じゃない他の誰かの心を受け入れられるすごいニンゲンさんだから。」

「よくわかった。」


 ガストさんは背を向けてまた店の奥へと入って行こうとする。


「アップ。何か困ったことがあったら俺に言え。俺がお前のために冒険に役立つものを用意しよう。」

「あ、師匠。そろそろ店番変わってくださいよ~。」

「アル。今日はもう店じまいだ。」

「え、ええ?」

「お前も来い。手伝え。」

「え、ちょっと待ってくださいよ。あ、ごめんねニーナ、アップも師匠は帰ってきてスタンがダンジョンに行ったって話を聞いてからなんかあんな感じでさぁ。またね。」


 ガストさんのお店を後にした僕たちは、グレイスさんの家に戻ることにした。

 帰り道で元気になったグレイスさんを見かけ、ニーナが駆け寄っていく。


「グレイスさーん。」

「あらニーナ。アップちゃんとお出かけ?」

「うん。ガストさんがアップちゃんが元気になったら連れて来てって言ってたから。」

「そう。これからお夕飯の準備するけどお手伝いしてくれる?」

「はーい。」


 ニーナはグレイスさんと一緒に家に戻って行った。

 ボクは、その姿を見送って手を振る。

 みんなには、そうしてあげられなかったけど、それがあったからニーナを助けられたんだと思う。


 あの時、何度も何度もくじけずに立ち上がれたのは、それまでにたくさんの悲しいをみんなのおかげで知っていたから。

 もう、あれを味わいたくなかったから。

 だから僕は立ち上がれた。


 最後までボクはみんなにもらってばっかりだ。

 何も返してあげれることがなかった。

 たくさんの物をもらったのに。


 そうだ、ボクは今のままじゃいけない。


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