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5-17話 ありがとう。さようなら。

 ボクは、どうなったんだろう。

 ニーナを守れたかな。

 スタンは・・・


「アップ安心して。スタン君は大丈夫よ。」


 懐かしい声が聞こえる。

 とてもやさしいこの声は、アリシア?


「ええ。覚えていてくれて嬉しいわ。久しぶりね。」

「おいおい、アリシアだけじゃねーぜ。俺たちもいるって―の。」


 ああ、この陽気な声はディード。


「ご名答~。他にもたくさんいるぜ。」


 シャルル、グライス、パサエル、セイウース、キーグヘンロイ。

 ボクと一緒に冒険をしてくれたみんなの気配を感じた。


「ジャックは一番会いたがってたのに、スタン君の方に行ったわ。きっとあなたに逢うのが恥ずかしかったのね。」


 クスクスとアリシアが笑う。

 そうだ、スタンは?


「大丈夫よ。彼の、スタン君のおかげで私たちもまたあなたに逢えたの。」


 そっか、そうなんだ。

 みんなごめんね。

 ボク、みんなを助けたかった。


「いいの。私たちが選んだ事だもの。」

「そうだぜアップ。寂しいことを言うなよ~。」


 でも、みんなボクが間違ったり、僕の事を庇ったせいで・・・みんなは・・・。


「気にしないで。ちゃんと妹に薬を届けてくれたじゃない。村の人にボコボコにされたのに。」

「俺だって、お前が生き延びて村に危険を知らせてくれたから皆が助かったんだ。気にすんなよ。」


 だって、もうボクにはできることが、してあげられることがそれくらいしかなかったから。


「だーからーそんなこと気にすんなって。俺たちはお前に感謝を伝えたくて来たんだからよ。」

「ええ。私たちみんなあなたに出会えて、あなたと冒険ができてとても楽しかったわ。ありがとうアップ。」


 みんなが笑っている。

 ボクが死なせてしまった、ボクの大事な人たちが笑っている。


「アップ。お前は良い奴だから、きっと俺たちが死んじまった事を自分の責任だと思ってるんだろうけど、それは違うんだ。俺たちは冒険者だからな、冒険の結果は俺たちの物なんだ。まぁ、そうはいってもお前はどーしたって自分の責任だって感じちゃうんだろうけどな。だからさ、それでいいからさ、俺たちとの冒険をこれからのお前の冒険に役立てるって約束してくれよ。せめて俺たちの最後をお前の役立つものにしてくれ。」


 ディードがみんなを代表してそう言うと、みんなの気配が遠くなっていくのを感じた。


「お別れみたいね。」

「じゃぁなアップ。」

 

「みんな、ボク、みんなと冒険出来てすごく楽しかった嬉しかった。ボク、きっとスタンとすごい冒険をするよ。」


「ああ、期待してるぜ。じゃな。」

「がんばってね。さようなら。」


 去っていくみんなが、反対側を指さす。

 そこには、暖かい光が輝いていた。

 僕を呼んでいる声がする。


 ーーアップ!! おい、アップ!! 聞こえてるか!?ーー


 スタンがボクを呼んでる。

 なんかすっごく力強くて暖かい光だ。

 行かなくちゃ、スタンが待ってる。


 一度だけ後ろを振り返る。

 『嬉しかったこと』『楽しかったこと』『悲しかったこと』『辛かったこと』を思い出す。

 ボクは、それを僕の『冒険』をちゃんと連れていく。


「みんな! ボクは冒険に行くよ。みんなとの冒険と一緒に。だから、ありがとう! だから、さようなら!!」


 光の中に飛び込んでいく。

 みんなとの『冒険』を、これからのボクとスタンの冒険につなげるために。

 

  


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