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5-16話 輝きが俺たちの力

 気が付くと、元の場所だった。

 どこかで誰かと話していたような・・・。

 なんだったんだろうか、うまく思い出せない。

 

 そして状況は、あの黒いルナティカスの魔力を持った魔物がから放たれたカースハウルを俺が拳で受け止めている。

 だが、さっきまで感じていた俺ではない誰かの魔力が体から出ている感覚が薄らいでいく。


「く、このままじゃ・・・」


 カースハウルを受け止められずやられてしまう。

 だけど、不思議と怖さや不安は感じなかった。

 俺は今、この状況を、この困難を乗り越えるために施行することができる


「できる。出来るはずだ。」


 たとえこの体が砕かれたとしても、この命の尽きるまで、最後に残る細胞の一片まで戦い続ける。

 アップの様に、何度でも立ち上がろう。

 立ち上がれなければ這いつくばっててでも立ち向かっていこう。


 あの小さな勇者の姿に、心を動かされたのだから。

 こちらを押しつぶさんとするカースハウルに押されながら、それでも何故か恐怖はなかった。

 ここから何ができるのか、それだけが俺の今の全てだ。


「今の俺は、ちょっとしぶといぞ。」


 体から放たれていた誰かの魔力が消えていく。

 『もう、大丈夫だよな、まかせたぞ』とまるでポンっと肩を叩かれバトンタッチしたようなそんな感じだった。


「ありがとう。もう、大丈夫だ。」


 自分の力だけとなった拳に力を込める。

 

「ルナティカス。お前が俺の大事な物を傷つけるなら、俺がお前を倒す。」


 ーー敵性対象の脅威がルナティカスに属する者であると確認。ーー


 ーースタン・トラヴェリアの心に迷いがなく恐怖を克服していることを確認。ーー


 ーーユニークスキル・リスクテイカーの発動を承認します。ーー


 再び俺の体が光り出す。

 その光はさっきまでの物ではなく、俺の中にあったものだとわかる。

 出所を探して彷徨っていた力が、解放され歓喜に震えているようだ。


「そうだ、輝け。見てろよアップ。これが俺とおまえの輝きだぁぁぁぁぁ!!!!」


 カースハウルを受け止めていた拳を開き、掌で受け止めそのまま握りつぶす。

 魔力は形を失い霧散して消えて行った。

 久々に感じる、魔力を操る感じ。


 今なら、わかる俺の魔力を通してこのダンジョンのあらゆる流れが。

 そうだったのか、リンドーがよく言っていた『よく見ろ』ってこういう事だったんだな。

 自分と相手と周囲の魔力の流れを感覚でとらえて、相手がどう動くのか、その動きの結果どうなるのか、それを瞬間的に理解してそこから最適な行動を選べって事だったんだな。


 いや、説明が圧倒的に足りてねーって。

 たぶんリンドーの事だ、誰に習うわけでもなく最初からその辺は出来ちゃってて、みんなも当たり前にそういう事ができると思ってるんだ。

 そして父さんも同じタイプだったに違いない。


 そんなことを思っていたら、カースハウルを無効化されたあの魔物が今度は魔力を纏った体当たりのような攻撃を仕掛けてきた。


「なるほど。放出系の攻撃がダメなら、直接攻撃してみようって事か。嫌いじゃないぜそう言うの。俺もきっとそうするしな。」


 体の中で魔力を練り上げ、体を体術系魔力のエーテルで包みその突進を受け止める。

 そのまま、観察系魔力のルーンを使って魔物の状態を観察してみた。

 久々に自分の魔力を使っているという感覚がうれしすぎて普段やらないようなことまでしたくなってしまう。


「魔物名:不明。特性:不明。弱点:不明。くっそ意味ねぇじゃねえか!!」


 どうやらスキルのレベルが低すぎて、魔物の分析が行えなかったらしい。

 受け止めた魔物が逃れようと暴れるが、そのまま抑え込む。

 俺は属性攻撃のプラーナを使い氷の槍を周囲に展開した。

  

「アップをよくも弄んでくれたよなぁ・・・」


 腕に力を込めスプリカスを地面に叩きつけ、周囲に展開した氷の槍を魔物に向けて放つ。

 腹に5~6本、頭に2~3本、ケツに3~4本くらい地面に貼り付けにするように串刺しにしてやった。

 その程度でくたばるとは思ってないけど。


「ギャアアアッ!! ガァァッ……ギィィィイイイイ!!


 串刺しにされた魔物が苦しみの叫び声をあげる。


「それで少しはおとなしくしてろ。」


 一旦魔物を置いといて、アップの元に向かう。

 生きていてくれよ。



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