5-15話 良き冒険の旅を
ーー新たな個体の認証を開始、個体名 スタン・トラヴェリア 既存登録を確認しました。ーー
ーーデータ不整合により、通常認証を破棄。特殊認証に処理を変更します。ーー
ーー既存データを切り離して保存しまた。新規IDの獲得を開始します・・・成功しました。ーー
ーースタン・トラヴェリアの基本情報を保存データより取得します。データのコピーに成功しました。ーー
ーー既存データ内にアクセス不可領域を確認しました。該当データの新規作成を実行します。ーー
ーースタン・トラヴェリアのユニークスキル再設定に移行します。ーー
ーースタン・トラヴェリア、貴方は何を求めますか?ーー
何を求めるか・・・だと?
何言ってくれてんだこの野郎・・・
俺からいくつも奪っていったお前が、世界が何を求めるかだと?
「バカにしてんのかお前。お前から恵んでもらいたいものなんかひとつもねぇよ! 」
さっきジャックから言われた言葉そのまま叫んだ。
「今度は俺がお前から俺が奪うんだ俺の戦う力を!!」
体から光があふれる。
元々あった俺の力が何かに反応して発現しようとしているのだろうか。
その瞬間、懐かしい父さんの声が聞こえた。
(世界に啖呵を切るとはさすが俺の子だな。だけどなスタン、世界には悲しい事だけじゃなかっただろ? 俺たちは俺たちの生き方をした。その結果なんだ。他のみんなもな。お前だってそれはもう受け入れてるんだろ? いつまでも世界のせいにするな。)
「そうだけど、そうだけど父さん・・・」
(リンドーやモルデン、ウィルやニーナ達のいる世界の全部が憎いってわけないよな。)
「そんなの、当たり前じゃないか。」
(ならお前の本当の目的を思い出せ。お前が冒険者を目指したのはみんなを守りたかったからだろう?)
「そうだよ、父さんみたいに凄い冒険者になって俺が皆を守るんだ。それで、悪意や理不尽で苦しんでいる人を、傷ついている人を守れるようになるんだ。」
(分かってるじゃないか。なら、それを世界にぶつけてやればいい。それに託されたんだろ? 相棒の事。 冒険者ならこの世界に挑め、そんでもって楽しんで来いよ大冒険を)
父さんの声はそこで消えた。
俺は、何もない虚空に向かって手を伸ばす。
世界に向かって宣言する。
「我、思いを受け取りし者、託されし者
我、世界に祈らぬ者、世界に挑む者
世界よ、我は今ここに宣言する
我はあえて険しき道を征く者
すなわち、我は冒険者スタン・トラヴェリアなり」
叫び声と共に体から流れ出る光が激しさを増す。
それと同時に俺の意識も広がっていき、一瞬まるで世界と一つになったような感覚に陥った。
そして、俺の意識は元の場所に戻っていく。
ーースタン・トラヴェリア からの承認要求を受諾しました。システムからの提案を破棄します。ーー
ーー承認内容の精査を開始します。ーー
ーー内容からスキル使用可能状況を生成します。スキル発動条件に敵脅威度による発動判定を追加し、新ユニークスキル『リスクテイカー』を生成しました。ーー
ーー現在の状況から発動第1条件をルナティカス級およびそれに属する者が敵性状態に設定。発動第2条件に敵性対象への恐怖の克服を設定。発動効果をルナティカスによる影響の解消に設定します。ーー
ーー『リスクテイカー』をスタン・トラヴェリアに付与し処理を終了します。ーー
ーースタン・トラヴェリア。あなたの導きで星獣の目覚めが叶うことを期待します。そして、どうか良き冒険の旅を。ーー




