5-10話 近づいてくる絶望
天井から落ちてきた岩は、俺たち三人を潰すのに十分な大きさだった。
万事休すと思われたその時。
「みんなで、みんなで帰るんだもん!」
力強くニーナが叫ぶと、鉱石がまばゆい光を放ち落下してきた岩がピタッと空中に止まった。
そして、俺たちの体が勢いよく浮かび上がり地上へと飛んでいく。
「こ、これ、もしかして集団移動スキルのムーブか!?」
「レヴィストーンがニーナの魔力に反応してスキルが発動したんだよ!! ニーナすごーい!!」
頭上の亀裂から差し込む光に向かって進み、その中へと飛び込んでいく。
そしてそのまま地面に着地。
ニーナをお姫様抱っこするような形になってしまったが、まぁそれは許してもらおう。
「ニーナありがとな。」
「うん。」
魔力を使い切ったのか、ニーナはかなり疲れている様子だった。
とにかく、ディノザウラスに見つかる前にどこかに隠れないと。
「ニーナ。もう少し我慢してくれよ。」
「スタン。あっちの岩陰に行こう。」
アップの言う通り岩陰に移動を開始する。
頼むから、気が付かないでくれよ。
そう祈りながら、岩陰に近づいた時。
「グルゥゥゥゥゥ…」
目指していた岩陰から、ディノザウラスが現れた。
「クッソ、コイツ待ち伏せしてやがった!」
「スタン逃げよう!」
「逃げるったってどこに」
とにかく岩陰から離れなきゃだ。
俺とアップは、右に曲がって走って全力で逃げた。
当然ディノザウラスも追いかけてくる。
「スタン。あいつが入ってこられないような隙間に逃げ込むしかないよ。」
「そりゃそうだろうけど、そんな都合よく見つかるわけないだろ。」
「う~ん。あ、そうだ、スタンちょっとごめんね」
と言うとアップは背中のカバンに乗って何かを探し始めた。
「あ、ちょ、アップまてバランスが・・・」
重くて動けないという事はなかったが、ニーナを抱えつつ後ろに変な荷重がかかるのは走るには困るものだった。
「あ、あった。これなら・・・」
カバンの右側のポッケから何かを取り出すと、アップはディノザウラスと対峙する。
「何する気だアップ!」
「大丈夫。ボクと一緒に冒険してくれたニンゲンさんがこういう時にボクにでも使えるアイテムを作ってくれたんだ。」
「アイテムくらいでディノザウラスが倒せるわけないだろ!」
「スタン。僕たちの目的は逃げることだよ。くらえ、発明家エッソン特性のクサクサビリビリ玉!!」
アップが手に持った玉をディノザウラスの顔に投げつける。
ディノザウラスが手の爪でその玉を切り裂くと、タマが破裂し中から赤い煙が爆散してディノザウラスの顔を覆った。
すると・・・
「グォォォォォォ!!!!」
ディノザウラスが目と鼻を押さえ苦しみ悶えだす。
「あの玉は、爆発すると目がめちゃくちゃ痒くなって、鼻や喉に吸い込むと呼吸ができないくらい咳やくしゃみが止まらなくなる赤い煙を出すんだ。」
「なんだって、凄いぞアップ!」
「魔物だけじゃなくて人間にも同じ効果が出るから、風向きには気を付けなきゃだけどね。」
この隙に逃げ切ってしまうしかない。
俺とアップは、全力で逃げ出す。
しかし、側面から俺たちの進行方向へものすごい衝撃波が飛んできて俺もアップも吹き飛ばされてしまった。
「なんだ、いったい何が・・・」
痛みをこらえながら、衝撃波の来た方向に視線を向けるとそこには、もう1体のディノザウラスがこちらに向かってきていた。




