5-9話 皆で帰ろう
俺たちはニーナが拾ったという鉱石について調べてみた。
とりあえず手にもってジャンプしてフワフワした感じになるか試してみたが、なにも起きない。
というわけで、ニーナが何か特別だったというわけではなかった事は証明された。
さてどうするかと、考えていたところ頭上がドシンドシンと揺れ始めた。
「まずい、ディノザウラスの奴、俺たちの居場所に気が付き始めたぞ。」
「あ、でも、あそこ見てよ!」
アップが指さした天井から光が漏れている。
振動でどうやら地上までの道ができたようだ。
「ここを上っていければ。」
「スタンお兄ちゃん。」
ニーナに呼ばれ振り向くと、ニーナの掌で例の鉱石が輝いていた。
「さっきは何ともなかったのに、何かしたのかニーナ?」
「ちょっとびっくりして強く握ったときに、私の魔力が少しこの石に・・・」
「魔力を受けると何かの反応をする鉱石だったのか。」
という事は、ニーナが落ちた時も落下の恐怖からニーナの魔力が鉱石の中に込められて何かしらの反応を示したという事か。
こういう時俺の魔力が使えないのが辛いな。
「アップ。この鉱石は魔力を込めると何か反応するみたいなんだ。ちょっとやってみてくれないか?」
「え、そうなの? それならボクもさっきやってみたけど何も反応しなかったよ?」
「マジ? じゃぁ、ニーナの魔力にだけ反応したって事か?」
えー、どういうこと?
「うーん。あ、もしかして。これレヴィストーンじゃないかな? 昔ぼくといっしょに冒険してくれたニンゲンさんが使ってたことがあるんだけど、すごい魔法使いの魔力に反応して浮くことができるんだよ!」
「なんだって! それならここから脱出できるじゃん!!」
「わ、私、そんなことできるのかな・・・」
ニーナはちょっと自信なさげな表情をした。
まぁ、それもそうだな、突然こんなこと言われてもできるかどうかわかんないよなぁ。
スキルがちょっと使えるからって、自分の魔力を自在にコントロールできるわけじゃないし、たぶん感覚でやってるんだろう。
「ダメだったら俺とアップが何とかするさ。みんなで頑張ってグレイスさんとウィルの所に帰ろうぜ。」
「うん。」
ニーナに鉱石を持ってもらう。
「スタンお兄ちゃんとアップちゃんも一緒にやってくれる?」
ニーナは鉱石を持つ手をそっと差し出した。
やはり不安なのだろう。
俺はニーナ手を両手でやさしく包み、アップもそれに両手を添えた。
「お願い。私たちを地上まで連れて行って。」
じわじわと鉱石は光始め、心なしか体が軽く浮いたような感じがする。
これは、本当に上手くいくかもしれない。
喜べウィルお前の妹はやっぱり物凄い才能の持ち主みたいだぞ。
とそのとき、ひときわ大きな振動が天井から伝わってきた。
その衝撃で、頭上から大きな岩が落ちてくる。
やばい、これは避けられない。




