5-5話 荒野の先に
指示されたニーナの場所へ向かうべく森の中を急ぐ俺とアップは森を駆け抜ける。
森の中でも魔物に襲われるかと思ったけど、意外とそういうのはなかった。
アップに先に行ってもらったおかげもあるかもしれない。
なにせアップは俺よりもずっとダンジョンでの生活が長い。
うまく魔物と会わないコツの様なものを体が知っているかもと思ったからだ。
だけど、ここから先はそうはいかなそうだ。
森を抜けた先、俺たちを待ち受けていたのは、地平線まで続くひび割れた赤茶色の大地。
さっきまでの穏やかさが嘘のように、空気を押し潰すような重圧がのしかかってくる。
「アップ、ここから先はなんだか魔力の質が違うな・・・」
「うん。すごく気持ち悪い、嫌な感じのする魔力だね。」
「この先にニーナがいるのか」
「うん。こんなところにニーナをいつまでもいさせられないね。」
「そうだな、しかし、森を抜けたら何か結構こっちは荒野って感じだな。ダンジョンってこんなに環境の境目みたいなのがハッキリしてるんだな。」
振り返れば、森の緑はあまりにも不自然なほど真っ直ぐに途切れていた。
まるで誰かが巨大な刃物で切り裂いたかのように。
「あー、そうだね。結構そういう所も多いんだよ~。そういう時は住んでる魔物も強さも全然別物になっちゃうんだ。」
「そいつは困ったな。」
「でもなんか、ボクが知ってるそういう時とちょっとなんか違うかも。なんだかこのダンジョンは歪な感じはする。」
「歪? やっぱり普通のダンジョンじゃないって事か。そうだとしても、とにかくニーナを探さないとな。あんまり隠れられそうなところはなさそうだけど、魔物に見つからないように進めそうか?」
「ちょっと自信ないけど、ボクがんばるよ!」
「そっか、じゃぁ、頼んだぞアップ。」
意を決して、荒野へと足を踏み出そうとしたその時。
「グギャァァァァァァ!!!!!」
とてつもない咆哮と共に、とんでもない魔力をまき散らしながら爆走する魔物が前を通り過ぎて行った。
「嘘だろ、ディノザウラスだ・・・」
「なんかメチャクチャ強い魔力の魔物だったね。どこかに向かって行ってたけど、どうしたんだろ。」
「さぁなぁ、エロ本でも出しっぱなしにしてたの思い出して慌てて家に帰ってる途中とか・・・?」
「エロ本?」
「あ、なんでもねぇや。」
「えー、スタン。なんなの~教えてよ~。」
「と、とにかくニーナを探すぞ。かなり近くに来たはずだから範囲を絞って検索できるはずだ。」
話をそらすために、冒険者の腕輪でニーナの居場所を検索する。
「あ、すぐに検索結果が出た。ニーナが近くにいる証拠だ!」
「やったねスタン! ニーナはどの辺にいるの?」
「まぁ、まてまて。えっと表示の方角からあっちの方だな・・・。」
冒険者の腕輪が指示したニーナの居場所は、先ほどディノザウラスが向かって行った方角だった。