4-6幕間 良くも悪くも
「どうやら、ルナティカスは我らの期待通りに動いてくれたようじゃ。よく追い込んでくれたな白虎」
「そうか、そいつは体を張った甲斐があったというもんだ。」
「あとはシステム、まぁこの世界との再接続じゃが、こればっかりは本人にどうにかしてもらうしかない。手出しは無用じゃぞ白虎。」
「わかってる。スタンにはいい師匠が付いている以上俺が手を貸す必要はない。」
分かったと口では言いつつも、白虎は玄武に背を向け不承不承といった顔と態度を隠さなかった。
「ほっほっほ。お前さんは、人間に対して少々過保護なところがあるからの。」
「玄武爺だって何だかんだ甘いじゃねぇか。」
「ワシはあくまで間接的にじゃ。お前のように直接助けたりはせんよ。」
白虎に玄武と呼ばれた老人の姿をしている存在は、白虎と同じ聖獣と人々から敬わられる存在。
かつての大戦時、白虎達と共にこの星を守り、そして傷ついたこの星と同化することで大地を蘇らせた。
「外敵排除は俺たちの使命なんだしいいだろ。」
「確かにそうじゃ。だが、いつまでもそうしていては人間が戦う事ができん。確かに基準を満たした者たちは戦力として加わってもらっているが、全体の底上げが重要なんじゃ。我らとて未来永劫、人間と共に在るとは限らんのじゃ・・・」
「それは心配しすぎじゃないかと思うぜ? 俺らが存在できなくなるようなことが起きたらいよいよこの世界そのもののオシマイだ。」
ふくれっ面でそういう白虎に、玄武は諭すように言う。
「安定しているようで、今世界の状況は紙一重じゃ。心配しすぎくらいがちょうどよい。」
「わかったよ。とはいえルナティカスの件は流石に見過ごす訳にはいかないだろ?」
「無論じゃ、じゃが、奴が作り出したダンジョンに関しては手出し無用。今までの様に世界の歪みからやつ自身が出てきた時だけ対処に向かってくれ。」
はぁ、とため息をついて白虎は玄武に向き直る。
「わかったよ。それで、ダンジョンを作り出したルナティカスは一体何をしようとしてるんだ?」
「ダンジョンの仕組みを反転させ、この世界の魔力を自分たちの世界にあった魔力へ戻そうとしておるのじゃよ。」
「できるのかそれ? やべえだろ? 爺さんついにボケたか?」
わーわーと抗議する白虎に対し、玄武はホッホッホとどこか愉快そうに自らのひげを撫でながら落ち着いた声で答える。
まるで、全てを操っているような素振りに白虎は、玄武の悪い癖が出てるなぁと感じた。
「試したことはないが、やれない事もないじゃろうな。魔力という仕組みがこの世界に取り込前れて数千の年月が過ぎた。かつては異質の存在だったルナティカス達の魔力も、今となっては魔力と言う概念の一種。世界からしてみれば同じものじゃ。うまくいけば、この世界に根付いた魔力が形を変え進化するかもしれん。」
「爺さん。悪い癖だぜそれ? もうちょっとこう、安定志向っていうかさぁ。未来のことも重要だけど、今生きてる人々のことだって同じくらい重要だろう? そいつらの生活を俺たちが脅かすようなことは俺はしたくない。あいつがスタンの力を取り込んだら、元の力を取り戻すどころか下手したら今の俺たちだって超えるかもしれないの本当にいいのか。」
肩を怒らせながら、白虎は玄武に詰め寄る。
しかし、玄武はそれを意に介さない。
「たしかに我々の手にすら余る存在となる可能性は十分にある。しかし、今後この世界に迫りくる危機はそのくらいでなければ乗り越えられぬかもしれんのじゃ。」
「それで人間が全滅したらどーすんだって話だよ。」
「ほっほっほ、人間はそうそう簡単に滅びたりせんよ。良くも、悪くも・・・な。」