表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/69

4-4 イレギュラーダンジョン

 ウィルに連れられて、グレイスさんの元に戻ってくるとグレイスさんはとても苦しそうで呼吸をするのが精いっぱいといった様子だった。

 おそらくグレイスさんは、今までの魔力欠乏症ではなく真逆の魔力供給過多が起きている様に見える。

 しかしなぜだ。


 その時ふと、アップが行っていたことを思い出す。

 詰まっていた魔力の流れを解消したと、アップは言っていた。

 効率よく体内に行き届くようになった魔力を、グレイスさんの体が消費しきれなくなった・・・?


 可能性はある。

 その状態で、魔力欠乏症用の薬を服用させれば余計に症状が悪化してしまうのは当たり前だ。

 なんでだよ、アップはグレイスさんに元気になってもらいたかっただけじゃないか、ウィルだってグレイスさんを助けたかっただけじゃないか。

 

「何でこの世界はいつもこうなんだ。」


 優しさが、誰かを思う心が、どうしてこういう結果に結びつこうとするんだ。


「とにかく、何とかしなきゃ。」


 過剰な状態の魔力を何とかして放出させ、かといって枯渇しないように調節しないといけない。

 相手の魔力を吸収するスキルと言うのもあるが、その類のスキルはほぼ魔物が有していて基本手には人間が使えるスキルではない。

 使える冒険者もどこかに入るかもしれないが、少なくともリジェネア村にはいない。


 となれば、魔力消費量の高いアイテムを使うことで魔力を消費させるという事になるけど、それはグレイスさんが自分で魔力をアイテムに流し込む必要があって、今の状態では難しい。

 魔物を操って魔力を吸収するスキルを使わせることも可能だが、魔物を操るスキルもまたレアで使える人がいない。

 

「魔物・・・、そうだ!!」


 俺は急いで、スラの介スラ太郎スラ座衛門を探した。

 たぶん近くにいるはずだ。

 それっぽい魔力を探しながら大声で叫ぶ


「スラの介!! スラ太郎!! スラ座衛門!!」


 その時、異常なほど強力な魔力の出現を感じた。


「な、なんだコレ・・・」


 その魔力に戸惑っていると、強力な魔力に気が付いたスラの介スラ太郎スラ座衛門が目の前に飛び出してきた。


「来てくれたのか。お前の力を貸してくれ。グレイスさんが大変なんだ。」


 強力な魔力を警戒しつつグレイスさんの元に戻る。

 出現した魔力は何故か微動だにしようとしない。

 魔物じゃないのか・・・?


「グレイスさんは今、魔力が体の許容量を超えている状態なんだ。スライムは魔力を吸収するスキルを使える種類が多い。おまえ、そういうことできるスキル持ってないか? グレイスさんを助けてほしいんだ。」


 スラの介スラ太郎スラ座衛門を持ち上げ視線を合わせて、俺は頼み込んだ。

 状況を理解してくれたのか、体の一部を変化させグレイスさんの手を掴むと何かスキルを使った様で淡く輝き出した。

 そしてその光が、グレイスさんを包み込んでいく。


 注視してみるとその光はグレイスさんの魔力を正しい流れに導いているようだ。

 現在のグレイスさんの体は、長年の魔力欠乏状態でなるべく少ない魔力で稼働できるように動いていた。

 そこに、一気に流れが良くなった魔力が流し込まれたため、魔力の消費が追いつかない状態が発生している。


 この光は、流れる魔力の量をグレイスさんの体が消費できる量に抑え残りを吸い取り、吸い取った魔力をグレイスさんの体内に戻すように作用しているように見える。

 ほんの少しずつ体内に流れる魔力の量を多くしてグレイスさんの体が、現在の魔力量に耐えられるようにしてくれているようだ。


 抱えていたスラの介スラ太郎スラ座衛門をグレイスさんの傍らに置く。

 これで、何とかなるかもしれない。


「グレイスさんを頼む。俺はさっきの魔力が何なのか確かめてくるよ。」


 俺が部屋から出ようとしたとき、またしてもウィルが血相を変えて飛び込んできた。


「スタン兄ちゃん!! ニーナのやつがどこにもいないんだ!!」


 それと同時にアップも大慌てで飛び込んでくる。


「スタン!! ダンジョンが!! ダンジョンがニーナを飲み込んじゃった!!」

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ