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4-2話 それは洗濯日和の日に

 村のみんなが明日には帰って来る。

 畑の収穫はほとんど終わってしまったので、俺は昨日からグレイスさんの手伝いに移った。

 天気もいいし、ここ数日グレイスさんも凄く調子がよさそうで見た事ないくらいあれやこれやといろいろやっている。


 本来はこんなに明るくて元気にあふれた人だったんだなぁ。

 いつもは丈夫な振りをしてるような感じがしちゃって、儚げな感じのおしとやかな大人の女性という感じがぴったり。

 いまは何というかイタズラ好きなおてんば娘がそのまま大人になったような感じだ。


 グレイスさんは朝から織物をしていて、注文分の作業が終わったらアップに帽子を作ってくれるそうだ。

 アップもすごく喜んでいたし、なんだか俺も嬉しい。

 俺は溜まっている洗濯物をアップと一緒に洗っていた。


 ニーナとウィルは率先して近くの川に水を汲みに行ってくれている。

 洗濯物を洗うためにはたくさんの水が必要だからだ。

 まぁ、その理由は洗濯物を選択し始めてすぐ分かったよ…、洗濯物って結構大変なんだな!!

 

 洗濯は意外と難しく汚れを落とそうと強くこすったりすると衣類を痛めかねない。

 俺が苦戦している横でアップは小さい手でちゃちゃっと汚れを落としていく。

 いったい何が違うんだろう…、あれか? 心の清らかさか・・・???


 考えるのをやめておこう。

 もしそれが証明されてしまったら、地味にショックが大きくかつ結構長い期間引きずってしまいかねない。

 あー、洗濯物を投げ込んで水を入れたら勝手に洗ってくれるすごい道具とか、どこかのダンジョンでドロップしないかなぁ~。


「スタン~。」

「お、おう、どうしたアップ。」

「お洗濯楽しいね。ぼく、汚れていたものが奇麗になるなんて知らなかったよ~。」

 

 もこもこの泡を体に付けながらアップは笑っていた。


「そうか、そうだな。大変だけど汚れたものが奇麗になるのは気分がいいよな!」

「うん!」

「それにしても、グレイスさんはこんな大変な仕事しながら織物までやってたのか。」


 元々体質的に疲れやすいのに、根っこの部分が無茶苦茶頑張っちゃうタイプの人なんだろうなぁ。

 洗濯物をせっせと選択していると、水を汲んだニーナとウィルが帰ってきて二人も選択に取り掛かった。

 流石に手馴れているなぁ、俺も頑張らねば。


「それにしても、最近はグレイスさん元気いっぱいだしよかったなぁ。そういやアップが来てからか。お前は人を元気にするスキルでも持ってるのかもしれないな。」


 俺は何気なくそう言い、アップはまんざらでもない顔をしてご機嫌で語りだした。

 

「えへへ。えっとね。グレイスさんの体の中で魔力が上手に回ってなかったから、ちょっとお手伝いしてみたんだよ~。」

「え、お前、グレイスさんに何したんだ…?」

「う~んと。ニンゲンさんの体には魔力が流れて、いつもおんなじ速さなんだけど、グレイスさんはちょっとほかのニンゲンさんに比べて魔力が詰まって流れがゆっくりだったんだ。だからね、うまく流れるように詰まってる魔力を解消してあげたんだよ~」


 アップはグレイスさんの魔力の流れを見て異常を感じたって事か…?

 つまり、グレイスさんの体質の問題は魔力が正常に流れていない事で無駄に消費してしまい体に魔力がいきわたってなかったって事なのか?

 俺がアップの話について考えていると、アップの正面にニーナがやってきた

 

「それをアップちゃんが治してくれたの?」

「うん。ぼくね、前にニンゲンさんと一緒に居た時に、人間さんが怪我をして体から魔力が流れて行っちゃうのを見た事があって、その時に魔力が流れ出すのを止めれたからグレイスさんの魔力の流れも直してあげられるかもって。」

「へー、アップ凄いんだな! 俺とニーナの魔力の流れも見えるのか?」


 ウィルもやってきて話に加わっている。


「えっとね、ぼくにも分らないんだけど、見えるときと見えない時があって今は見えないんだぁ。」

「え~、そうなんだ。アップちゃん不思議な力を持ってるんだね。グレイスさんを元気にしてくれてありがとね。」

「ありがとなアップ。」

「えへへ。」


 二人にお礼を言われ、頭を撫でられたアップはすごく幸せそうだった。

 カイさんが言うような魔物の本性がコイツのなかに眠ってるなんて思いたくないな。

 でも、あのカイさんがあそこまで危険視するのにはきっと何かわけがある。


「みんな。そろそろ、お昼だし一休みしようか。」


 俺は、思い出してしまったカイさんとのやり取りをから気を紛らわせたくて昼食をとることを提案した。

 それにはみんな賛成してくれたので、昼飯の準備に取り掛かる。

 グレイスさんも一緒に食べるだろうから、ニーナに呼んできて欲しいとお願いをした。


 ウィルは当然のように席に座り、手伝う気が一切ない姿勢を示す。

 こ~いつぅ。お前の分だけ薄味で物足りない味に仕上げてやるからなぁ…。

 ちなみにお昼はスパゲッティにする予定だ。


 鍋にたっぷりの水を入れ湯を沸かす。

 沸点をあげるために一つまみの塩を入れ・・・

 そこに、ニーナの叫び声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん!! 大変!! グレイスさんが・・・」


 そしてこの日、俺と相棒の最初の冒険が始まることになる。

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