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3-11話 いつもあなたを想っています

 始めてから数時間は経ったと思う。

 奇麗な青色のミオティ草はまだ見つけられていない。

 それどころか、暗闇を探し回ったせいであっちこっちぶつかってしまった。

 

 だけど、ミオティ草をいくつか見つけて分かったことがある。

 なんとなくこの花には他と違う匂いがする気がする。

 花なので匂いがあるのは当たり前なんだけど、魔力の匂いとでも言ったらいいのか何か他と違うものを感じる気がするんだ。


 でも、カイさんが言っている魔力の気配はこれではない気がする。

 これがそうなら、魔物の魔力も同じような感じがするはずだ。

 そもそも魔力ってなんなんだろう。


 生まれた時から持ってるから今までそれが何かなんて気にもしなかったけど、この力はどこから来ているんだろう。

 ゴツン!


「いってぇ、またぶつかっちまった。くっそ、そこらじゅう傷だらけだ。」


 魔力は血液と一緒に体中を循環している。

 こうやって傷つくと当然値も流れ出すけど、それと一緒に魔力も流れ出すので魔力の流出を避けるためにも手当や治療が必要だ。

 ふと、足元にミオティ草が生えていることに気が付いた。


「どれどれ」


 今まで見つけたミオティ草とそこまで変わらない魔力だと思う。

 疲れたのでそこに座って一度ミオティ草をじっくり眺めてみることにした。


「あーそっか、見る必要はないんだっけ。」


 疲れたし眠くなってきたしそこら中少し痛いし目を閉じた途端、眠ってしまいそうになった。


「いや、ダメだダメだ。探さなきゃ。」


 そう言いつつも体が横になることを強要する。

 耐えきれず、その場にごろんと横になってしまった。

 意識があいまいになる。


(ミオティ草を…見つけないとなのに…)


 不思議なことに、あいまいになった意識は冷たい地面を通して俺の体から外に拡大されていったような感覚になる。

 見てはいないのにまるで見ているようだ。

 その拡大されたと感じる感覚の中に、さっきのミオティ草を感じた。


(ああ、この花は今魔力を空気の中や地面から吸い上げているところなんだ。)


 ミオティ草の小さな花を中心に、そこへ向かって何かがゆっくりと流れているのが分かる。


(確かにこの魔力はなんかこう痛みが和らぐ感じというか、リラックスする…気が…するなぁ…)


 


「スタン君。スタン君。」

「え…、あれ、カイさん…?」

「いや~、すまない。申し訳ない。ある程度で連れて帰るつもりが、ついうっかり私も眠ってしまって。なんだかとてもリラックスしてしまってね。ミオティ草の効果が僕のところまで来てしまったのかなぁ。とにかくすまなかった。」


 何度も何度も申し訳ないと繰り返すカイさん。

 もう夜は開けて清々しい朝が来ていた。


「あ、ミオティ草…、探さなきゃ。」

「スタン君。よく見てごらん。」


 カイさんに言われて、カイさんが指さす先を見る。

 そこには、見た事ないくらい鮮やかな青色のミオティ草が花を咲かせていた。


「え、昨日はこんなに奇麗じゃなかったはずなのに。」


 戸惑う俺の様子を見ながらカイさんがミオティ草を少し調べてくれた。


「なるほど、どうやらこのミオティ草はスタン君の傷口から流れ出した魔力を吸ってここまで鮮やかな青色になったみたいだね。」

「俺の魔力…? 俺まだ魔力自体はあったんだ。」

「そうみたいだね。そして、このミオティ草は吸い切れなかった君の魔力を放出することであたり一帯に癒しの効果をもたらしたんじゃないかな。スタン君のケガがほとんど治ってるだろ?」

「え、あ、ほんとだ。昨日あんなに傷だらけだったのに…。」

 

(おそらくその効果範囲が離れた私のところまで届いて、私もうっかり眠りに落ちてしまった…。いったいどれくらいの魔力を持っていたんだこの子は。せめてその力を外部から引き出せるような何かがあればスタン君もまた戦う事ができるかもしれない。ガストさんに少し話をしてみるか…)


「ねぇ、カイさん。これ、俺が探したって言っていいのかな…。結局、見つけたっていうよりは偶然だけど俺の力でそういうふうにしたっていう感じなのが引っかかるっていうか…」

「何言ってるんだい、ここでこのミオティ草を見つけたのは間違いなく君だよ。おめでとう。これで君は少し魔力を感じることができるようになったはずだ。今はまだ多分、匂いとか振動を頼りにして魔力を感じる段階だと思うけどそれを続けて行けば魔力を感覚で感じられるようになるはずだよ。」

「そうなの…?」

「そうさ、それよりも、ガストさんが心配してるだろうから早く戻ろう。その花も押し花にしてしおりを作らないとね。」

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