3-10話 見えないものを見る必要はないからね
「さて…、この辺でいいかな。」
カイさんと俺は交易拠点周辺の森の中にやって来た。
一体何するつもりなんだよカイさん。
「さて、スタン君。君にはこれからここである花を探してもらいます。まぁ、適当にその辺漁れば見つかる華ではあるんだけどね。」
「ええ…。何それ。」
「いいからいいから、まだ説明の途中だから。」
「はぁ…。」
「その花は、ミオティ草です。この花は『草』と名前が付いていますが、れっきとした花で青くて可愛らしい小さい花です。」
「は~い。カイ先生。それくらい流石に知ってます。」
「ではスタン君。ミオティ草は回復薬に使われる事をご存じですか!」
「え、いや、回復ポーションの材料でもないし。」
「でしょうね、回復ポーションの材料は薬草に分類される草ですし。ミオティ草はですね、大気や地中の魔力を蓄える性質があります。そんなに量は多くないのですが、魔力の量が多ければ多い程ミオティ草は鮮やかな青い花を咲かせるのです。」
「へー、言われてみれば確かにたまに奇麗な青い花を咲を見た気がする。そういえばニーナは青色が好きだったなぁ。」
その瞬間、ビシッとカイさんが俺を指さす。
「それです! ニーナちゃんへのお詫びの品として魔力量の高いミオティ草を見つけて押し花のしおりを作成しましょう!!」
「え、そんなのでいいんですか…?」
その瞬間カイさんの雰囲気がガラリと変わる。
ものすごいプレッシャーを放ちながら、肩を怒らせこちらに歩いてくる。
「君は何もわかっていない。何もわかっていない。愚かだ。愚かが人の形をしている。」
え、そこまで言う???
「もし仮に、君のためにリンドーさんが最高の木材を探し回って練習用の木刀を作ってくれたら君はどう思うんだ!!」
「え、そりゃぁ嬉しいですよ。」
「じゃぁ、それは『そんなもの』なのか!!」
「!!」
俺は膝から崩れ落ちた。
「カイさん。いえ、カイ先生。俺は、愚か者です…。」
「なら、やるべきことは分かるね。」
「はい。でも、こんなに暗い中でどうやって探せばいいのか。」
カイさんは俺を立たせると、これまたすっごく意地の悪そうな顔でこういった。
「魔力を感じればいいのさ。なまじ目が見える状態だとその感覚を掴むことは難しい。見えないものを見る必要はないからね。この暗闇の中で君を呼ぶ声を聴くんだ。」




