3-2話 交易拠点
今日の特訓にはスラの介スラ太郎スラ座衛門は姿を見せなかった。
まぁ、3人のうちの誰かのところにでも行ってるのだろう。
俺にも手伝いの依頼がいくつか来ていたし、商人さんたちがもうすぐ来るから村全体が交易拠点に送る品々の準備に忙しいのだろう。
交易拠点というのは、商人さんたちが拠点としているセラピアという街からリジェネア村に直接来る場合何日も移動に時間がかかり、道中の安全を確保するのも結構な手間となるためセラピアとリジェネア村の中間地点に設置された商人さんたちとの売買に使用される施設だ。
寝泊まりと食事、取引を行う広場などがメインであとは常駐している警備の人が使うものが用意されている。
商人さんたちが来るタイミングは、冒険者協会に所属している商会ギルドが決めている。
警備の人たちはこちらも冒険者協会に所属している治安維持ギルドから派遣されてきている。
ちなみに、冒険者協会に所属する組織として鍛冶師ギルドというものもあり、こちらは冒険者の装備に関する作成や新商品の開発および研究などをしている。
図に表すとこんな感じ。
冒険者協会
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|―冒険者ギルド(冒険者の管理、ダンジョンの情報収集、各デミーの管理
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|―商会ギルド(冒険者が持ち帰った素材の買取と市場への流通管理。一般的な物資(食料、衣類、その他雑貨)の流通管理
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|―鍛冶師ギルド(冒険者の装備品に関する開発と研究
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|―治安維持ギルド(各都市や施設・拠点の警備と治安維持
商会ギルドと鍛冶師ギルドは冒険者協会が冒険者の活動を支援するために組織した事が始まりで、それまで各地でばらばらに活動していた商人と鍛冶師をまとめ4つの国の経済活動の安定と活性化に大きく貢献し、今では冒険者だけでなく全ての人々のためになっている。
その二つと比べて治安維持ギルドは設立からまだそれほど時間は経っておらず、いろいろ制度的な対応が不足している感じだ。
治安維持ギルドの目的は『冒険者くずれのならず者』を取り締まること。
昔から少なからずそういう人間はいたんだけど、冒険者の数が爆増した事をきっかけに相対的に道を踏み外す人も増えてしまったため、昔ながらのならず者の討伐を冒険者に依頼するという対応が効率の悪いものになってしまい、日常的に目を光らせる役割が必要になってしまったという悲しい事情がある。
時にはダンジョン内で悪行を働く冒険者を捕まえに行ったりする必要もあっていつでも人材不足な組織だ。
現在のメイン層が元冒険者となっていて、個々の能力は問題なくとも個別に活動していた期間が長く自分のやり方に拘りったり、そもそも連携ができなかったりで間に合わせ感が強く問題は山積みといった状態と以前リンドーやモル姉に聞いたことがある。
ちなみに、貿易拠点の警備を担当してくれているのはカイさんという俺より少し年上の男の人だ。
カイさんはデミー出身で、デミーでの成績は悪くはなかったんだけど在学中にあった出来事が原因で冒険者を目指さなくなったらしい。
でも、カイさんは結構強いんだよなぁ、リンドーもいい動きをしているって褒めてたし…何でそんなことになったんだろう?
デミーでは卒業後に冒険者になるか他のギルドに就職するかを選べるので、カイさんは卒業と同時に治安維持ギルドに就職し警備隊に入った。
それで、交易拠点の警備任務を希望して今に至っている。
そんな経歴を持っているけど、とてもいい人なのでセラピアの人からもリジェネア村の人からも結構可愛がられてたりする。
俺も以前は暇なときにちょっと様子を見に遊びに行ったりもしていた。
カイさんはいつも交易拠点の掃除や補修をしてくれていたっけなぁ。
そうじゃない時は、カイさんは槍の訓練をしていて槍を使わない俺でもわかるくらい動作が滑らかで無駄がなく奇麗だった。
そうだ、カイさんはデミーで冒険者になるための勉強をしてたんだから、今度アイテムの使い方とか魔物から逃げたり隠れたりする良い方法について聞いてみよう。
でも、交易拠点に行く途中で魔物に出くわすことがないとも言えないんだよなぁ。
何とか逃げ切ってカイさんのところまで行けなくもないと思うけど、今の俺の状態ではみんなが心配するだろうし。
仕方ない、その内交易拠点周辺の魔物を討伐して商人さんたちの安全を確保する仕事をリンドーが請け負うだろうから、その時にリンドーについていってカイさんに話を聞こう。
リンドーに話をしておけばきっと連れて行ってくれるはずだ。




