2-9幕間3 世界の外から来た者たち
なんとまぁ、怒りを通り越して呆れたものだ。
このルナティカスを辟易させるこの世界の悪食な事よ。
我らの世界だけでなく、他の世界からもいくつもの力を取り込んでいる。
我らの創造主が嘆いていた通りだ。
なぜ、我らの創造主を作った存在は彼に、我らの創造主にそれを知る力を与えたのか・・・
彼とて知らねば、わからなければ、世界の終わりまで幸せに暮らせただろうに。
「それもまた実験か、きっと心など持たぬのだろう。」
いや、持っているのだろう、だからこのような事をするのだ。
その結果がどうなるのかという興味、好奇心、そういったものに支配された哀れな存在に違いあるまい。
だからこそ、我が未だなお存在しているのだ。
度し難い。許しがたい。
しかし、今は甘んじて受け入れよう、楽しむがいいこれから我がなす事を。
この時空の歪みから我がこの世界を飲み込む様をおとなしく見ているがいい。
さて、しかし厄介なのはやはり白虎達だ。
あれから8度くらいか、そこらのダンジョンを喰らってやろうとしたがそこに必ず現れては邪魔をしに来た。
ダンジョンそのものを破壊してこの歪みに隠れたが、奴め想像を超えて強くなっている。
この前であったときは、我を前に手加減していたとでもいうのか。
それとも、全力を出せない何かしらの制限があったのか・・・
どちらにしても忌々しい。
かつての力を早く取り戻さねばならぬが、如何せん力の回復が芳しくない。
この世界の魔力は我の体に馴染まぬ。
元々は我らの世界の力だというのに、ここまでこちらの世界の色に染まるとは口惜しいものだ。
そう、この世界に存在する魔力は我々がこの世界ににもたらした。
我々がこの世界を侵攻しに世界の壁を越え、この世界と我々の戦いが始まったあの時に。
世界は新たな仕組みとして魔力を世界に存在させたのだ。
ないものは存在しない。
故に、我々がこの世界に侵攻して存在を保てるかどうかは賭けだった。
しかし、我らには選択肢などなかった。
なぜなら。我々の世界は崩壊し消え去ることが決まっていたからだ。
この世界によって消されることが決まっていたから、我々の創造主は我々の世界が作り出した力の結晶として我ら魔獣を作り我々の世界を守るため、我らにこの世界を破壊せよと命じた。
それが彼にとってどれほど己の心情に背くものだったのだろうか・・・
この世界の住民が知る事ではないが、この世界はいわば土台なのだ。
この世界のほかにある『我々のいた世界の様なもの』がこの世界の外に実はいくつも存在する。
その世界は、土台となっているこの世界に『何か』を追加した状態で作成される枝葉の様なものだ。
その枝葉の世界で起きた結果、有用な物であればこの土台となっている世界に取り込まれ消滅するか、不要であれば切り捨てられ消滅する。
ゆえに、我らがこの世界に侵攻した際もどちらかの判断がされ、我々は有用としてこの世界に取り込前れる形となった。
世界と世界を渡る手段などその仕組みはわからないが、我らの創造主は何巨大な力をこの世界にぶつけ続けこちら側の世界の何かしらを疲弊させ我々魔獣を送り込むことに成功した。
我々の世界はその瞬間に潰えている。
べつにあの世界に愛着や何かがあったわけではないが、生れた理由があるのだそれを成すために生まれたのだ。
破壊を、全てを破壊せねばなるまい。
だが現状、かなり状況は悪い。
力が戻らない原因がもう一つある。
あの小僧、スタンと言ったか、奴から奪った力を抑え込むことで消耗が激しい。
取り込む魔力と消費する魔力がほぼ同等とは・・・やつは人間ではないのか・・・?
この力を取り込めば、確実に白虎達に勝てると思っていたがそう簡単に行くものではないようだ。
かといって捨てるには危険すぎる。
どうにかする手はある。
何度かダンジョンに出向いたことで、この世界の仕組みを理解できて来た。
ダンジョンとは、この世界によってまだ扱い切れていない魔力をこの世界に馴染ませるためのシステムなのだ。
魔力を一か所に集め効率よく世界に馴染ませるための物ならば、我の魔力を起点にダンジョンを作ることも可能と考えられる。
その際に、我の魔力とスタンの力をミックスさせたものを使用し、ダンジョンのシステムを利用して我の力に還元できるように細工をすればいい。
あの小鳥、ハミングバードといったか、あれを取り込んだことでダンジョンというシステムにある程度干渉することが可能になったのは僥倖ではあったな。
しかし、やるとなれば不明点が多すぎる行為だ。
創造主はよく言っていた。
出来上がった設計や計画の実行中に不確定な要素を取り込むのは、やがて制御不能になる可能性が非常に大きいものだと。
新たな要素を取り込む場合は、それを取り入れどのように使うのかをやはり設計し直し、計画し直す必要があるのだと。
突発的な計画変更は極力避けねばならないと。
しかし、このままではらちが明かないのも事実。
まずは、一度試してみるか・・・




