霊力の実技訓練
周は深い息をつき、優雅に振り返った。「……ということで、狩人の歴史や閻魔大王の役割、霊力の基礎講座について一通り教えたわけだが、一穂、理解できたか?」
一穂は、ずっしりと重い教科書が付箋で彩られているのを示しながら、しっかりと勉強した証を周にアピールした。彼の瞳は輝き、口元には期待に満ちた笑みを浮かべていた。「おれ、心の準備は出来ている。実技訓練、よろしくお願いします!」
周はにっこりと笑い返し、力強く一穂の肩を掴んだ。「これから厳しい訓練が始まるから、しっかりついてきてくれよ。」
一穂の心臓は高鳴り、霊力訓練への期待でいっぱいになった。彼は周の言葉を胸に刻み、新たな冒険の幕が開けることを心待ちにした。
周は喜一と何やら話していた。「すまん、一穂。これから潜入任務があるから、授業の続きは喜一に頼んだ。」 一穂は残念そうな表情を浮かべたが、狩猟部の部長秘書の喜一への期待を込めた視線を送った。
「これからよろしくお願いします、一穂君。」喜一は丁寧で優しい口調で答えた。
訓練が始まると、一穂は自らを追い詰めた。「くっ……もう出来ないです、限界ですよ!喜一さん!」彼は人差し指一本で霊力を一点に集中させながら逆立ちをし続けていた。喜一は無表情でその様子を見守りながら言った。「あと1時間はその体制を保ってください。それができないと、次のステップを教えることができませんから。」
実技書のページをめくりながら、顎を触って考え事をする喜一。そんな彼に対して、一穂は耐えきれず弱音を吐いた。「もう、無理!マジ無理!」 それでも、一穂は右人差し指に霊力を流し続け、姿勢を安定させることに集中していた。
不安に駆られ、体は限界を迎えつつあったが、彼の心の中には喜一の言葉が響いていた。「頑張れ、もう少しだ。」その言葉が彼を支えているようだった。
喜一は一穂に向かい、厳しい声で言い放った。「周さんの生徒だから優しく指導しているだけだけですけれども、もし本気で周さんのパートナーになりたいと思っているなら、まだまだ修行が足りないですね。」
一穂は頭を抱え、「なんであいつと組むのがそんなに難しいんだ?実力的には、あんたやあのババアの方が上だと思うし、普段の周を見ててもそんなに能力が高そうには見えないけど」と不平を漏らした。
喜一は一穂の頭をバシッと叩き、冷たく言い返した。「こらこら、あのお方をババア呼ばわりするなんて、命取りですよ。それに、年長者にはさん付けで呼ぶか、名前で呼ぶべきです。」
一穂は頭をさすりながら、「痛てて!手加減してくれよ!本当に痛いなー!」と苦情を言ったが、喜一は冷たい眼差しを向けながら話を続けた。
「周さんはああ見えて、私たちと同格、いや、それ以上の能力の持ち主なんです。彼は根っからの教師気質で、新人研修の先生を飽きもせずに続けている。その姿勢には本当に欲がないんですよ。」
喜一は、きらりと光ったメガネを直しながら、その表情を隠した。彼の言葉は、一穂に重く響いていた。




