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俺の新しい相棒

俺の名前は有馬周。享年24歳。100年前、心臓発作でこの世を去った。しかし、死は終わりではなかった。俺は今、冥界と呼ばれる異の世界にいる。


ここには、死後の魂が集まり、審判を受ける場所がある。俺もその一人だった。普通なら、何の問題もなければ霊界へと導かれ、穏やかな転生の旅に向かうはずだった。でも、運命は俺に別の選択肢を与えた。そう、俺は狩人として、この世に潜む妖たちと戦う運命を背負ったのだ。


夜ごと、薄暗い街の路地裏で、俺はその身を潜める。霊界とは違う、現実世界の闇の中で、悪しき存在を狩る。その心臓の鼓動が、再び高鳴る瞬間を待ちながら。


倒されることのないように、そして、自らの敵と向き合うために。何が待ち受けているのか、誰も知らない。ただ、今俺は、再び命を賭ける瞬間を楽しむのだ。果たして、この戦いは俺に何をもたらすのか。興奮と不安が交錯するその瞬間、俺の冒険が始まる。




有馬 周は、紫烏色の髪を持ち、深紫の瞳で煌めく端正な顔立ちをしていた。身長は180センチを超え、その優雅な佇まいは、まるで異世界からやってきたかのような美しさを放っている。性格は穏やかで優しく、人当たりも抜群だった。彼の周囲には常に笑顔が絶えず、人々は彼の人柄に惹かれて集まってくる。それでも、彼にはなぜか長続きするパートナーはいなかった。


そんな彼の最も長いバディは、部長秘書の望月喜一だった。彼らは半年間の間、息の合ったコンビとして働いていた。しかし、望月が秘書に昇格することが決まった時、周は内心複雑な思いを抱えた。彼は決してその昇格を妨げるつもりはなかったが、彼との絆が離れてしまうことに少なからず寂しさを感じたのだった。


その後、周は部署内の他のメンバーとバディを組むことになったが、彼の高すぎる能力は、いつも周囲の人間に影を落とした。一緒に仕事をするうちに、彼の卓越した才能に圧倒され、次第にパートナーたちは恐れを抱くようになっていった。そして、早い者で数日、長くても数ヶ月という短い期間で彼らは去っていった。特に3ヶ月を超えることは稀なことで、周もそのことに心を痛めていた。


「どうして、みんなこんなに怖がるんだろう」と、周は何度も思った。彼にとっての意図は、決して相手を追い詰めることではなく、共に成長することだった。しかし、彼の存在が多くの人にとっての圧力となり、やがて彼らは職場を後にした。


周は、心にぽっかりと空いた無垢な絆の穴を抱えながら、再び新しいバディを探し続けた。しかし、その道は思った以上に険しく、彼の優しさや人間性がもたらす温もりは、他者を遠ざけるものとなっていた。理解し合える相手が現れることを、彼は静かに祈るように待ち続けていた。


閻魔庁管轄の狩猟部、一室の中は静寂に包まれていた。壁は無機質な灰色に塗られ、簡素なテーブルと椅子が配置されている。テーブルの上には、色とりどりの茶菓子が山盛りに積み上げられ、その甘い香りが周囲に漂っていた。


月曜日の朝、まるで誰もが憂鬱さを感じ取っているかのようなその空間で、周だけがひとり、ぽつんと座っていた。他のメンバーは現地の仕事に忙しく、定例会議には参加していない。彼は大欠伸をしながら、時折テーブルの茶菓子をちらりと見やる。それぞれの美しい色合いが、無邪気な心を呼び戻そうとしているかのようだ。


「朝ごはんがわりに、少しつまんでみるか」と思い、周はそっと手を伸ばした。その瞬間、部長と部長秘書が何事かコソコソと話しながら入室してきた。周は茶菓子を手にしたまま、思わずその姿に目を向ける。部長は少々焦ったような表情を浮かべ、秘書はタブレットPCを片手に持ち、何かを確認している様子だった。


「おはよう周さん。良い朝ね。」部長が周に気づき、微笑みを浮かべた。


周は軽く頷きながら、手に持った茶菓子を口に運び、甘さが広がるのを楽しんだ。「おはようございます。皆さんが来るのを待っていました。」


言葉を交わしながらも、部長はすでに今日の会議に思いを馳せているようだった。最初はのんびりとした雰囲気だったが、やがて会議は始まる。周は茶菓子をつまみながら、心の中で「またいつもの定例会議が始まるのか…」と思いつつ、その甘美なひとときを楽しんでいた。


部長、北条 千寿は、年齢不詳でありながらも、まるでお姫様のような可愛らしいワンピースを着ていた。彼女が歩くたびに、フリルが優雅に揺れ、周囲の視線を引き寄せる。見た目は二十代半ばのふんわりとした印象を与え、愛らしさが彼女の存在を一層際立たせていた。


その横には、部長秘書の望月喜一が立っていた。端正な顔立ちを持ち、知的な眼鏡の奥に隠された瞳は、どこか謎めいた色をたたえている。彼の雰囲気は神経質とも言える緊張感が漂い、物静かに佇む姿は、千寿とはまったく対照的だった。


千寿はそのふわふわとした可愛らしさで周囲を包み込むような存在であり、一方の喜一は、まるで彼女を守るかのように、キッチリとした印象を漂わせていた。お互いの役職は逆転したような見た目で、まるで一組の不思議なコンビだった。


彼女の華やかさが彼の神経質さを引き立て、彼の慎ましやかさが彼女の愛らしさを支えている。部内でもひときわ目を引く二人の姿は、互いに異なる魅力を持ちながらも、それが絶妙に融合することで、オフィスのどこか温かな空気を醸し出していた。


周は明るい笑顔で机に向かい、静かな会議室の中で会議が始まるのを待っていた。その瞬間、部長秘書の望月喜一が足音を立てずに近づいてきた。


「今日は周さんに喜ばしいお話があります。」


「ええ!?何だろう?新しい椅子の導入とか?」周の目が輝く。最近、家具屋で見つけた高級椅子が頭をよぎった。その椅子は、苦手なPC作業中に座るのにぴったりの逸品だったからだ。


「はいはい、今その椅子は検討中ですので。それではなく、」喜一は冷静に、そして少し神妙な面持ちで続けた。


「新しいパートナーが決まりました。名前は工藤一穂。最近亡くなったばかりで、すぐに狩人に志願した若者です。」


部長の千寿は、机の奥から穏やかな笑顔を浮かべ、まるで周の反応を楽しむように見ていた。周は一瞬、言葉を失った。


「若くして死んだんですか?」


「ええ、17歳で亡くなったようですね。死因は、ええっと…交通事故です。」喜一が持っていた資料に目をやりながら、淡々と話す。


周の顔から笑顔が消え、胸が締め付けられるような思いがした。その遥か若い命が短くも燃え上がり、束の間に消えてしまったなんて。周は一瞬、心の中でその若者に思いを馳せた。


「交通事故…それで狩人に?」周はつぶやくように訊ねた。


「狩人になることを心から望んでいたようです。彼の人生は短かったけれど、強い意志を持った子だったのかもしれません。」


千寿はその言葉を聞いて、微笑みながら頷いた。「彼のような若者が仲間に加わることは、我々にとっても大きな力になりますね。」


周は新しい仲間の名前を心に刻み込みつつ、同時にその哀しき運命がどのように自分の目の前で広がるのかを思い描いた。空気が変わるような予感がした。ある思いを胸に、周は決意を新たにした。


「喜一、彼のことをもっと教えて。しっかりと支えてやりたいと思うから。」


喜一はその言葉に緊張感をほぐし、微笑みを返した。「もちろんです。彼についての情報を整理して、あなたにお伝えしますね。」


周は再び机に向かい、新たな運命の扉が開かれる瞬間を感じた。彼らの物語は、始まりの合図を待っていた。


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