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黒い影

薄暗い街灯が灯り始める夕暮れ、部活帰りの生徒たちが急ぎ足で帰路につく中、校舎裏の静けさが一層引き立っていた。その時、誰もいないはずの校舎裏から、黒い影がザザッと動いた。その影は、サッカー部の部室から出てきた橘恭平をじっと見つめていた。


「そうだ、部室に忘れ物をした。」恭平は思い出した。友人たちに「恭平、俺たちは先に帰るからな!」と声をかけられ、彼らが去っていくのを見送りながら、一人暗い部室へ戻った。そこで青いタオルを見つけ、バッグに入れようとしたその瞬間、黒い影が突然大きな狼の姿に変わり、彼に襲いかかってきた。


その狼は、恐ろしい牙を持ち、まるでスローモーションのように恭平の目の前で迫ってきた。ただならぬ危機感が彼を包み込む。


しかし、その時、部室の窓ガラスが突如割れ、白い煙が流れ込んできた。煙は、まるで生き物のように黒い狼に巻きつき、苦しませながら窒息させていく。そして同時に、その煙は恭平をも包み込み、彼の意識を徐々に薄れさせていった。


恭平の視界が暗くなり、意識が遠のく中、彼は最後にその白い煙が自分を守っていることを感じながら、まどろみへと落ちていく。


しばらくして、部屋に漂っていた白い煙は消え去り、静寂が戻った。彼の周りには、すやすやと眠る恭平と、黒い用紙に切り取られた狼の切り絵だけが残されていた。暗闇の中で、彼の安らかな寝顔は、今もなお不気味な静けさの中に埋もれていた。



周は部室内の安全を確認し、一穂に入るよう促した。「もう大丈夫だ、一穂。入って来い。」声には自信が満ちていた。


一穂は不安げな表情を浮かべながら、恭平のもとへ駆け寄った。「恭平は大丈夫なのか?」彼の目は心配でいっぱいだった。


「ああ、大丈夫だ。すぐ起きるさ。」恭平は少し体を動かした。一穂は周を見上げた。しばらくの静寂の後、周は真剣な眼差しで恭平を見つめ返した。「さて、これからが重要だ。彼が狙われた理由、そして彼が何を知っているのか、少し聞いてみようか。」


部室の空気は緊張感に包まれ、周の言葉が響き渡った。

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