投手はじめました
年末年始が過ぎ、監督から呼び出しが掛かる。練習の用意をしてグラウンドへ向かった。
久々に会うチームメイト。上級生は既に居なくて、同学年の子は元々居ない。
「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」
キャップを取って一礼した。チームから離れた身、監督のご厚意で教えて戴くんだ。当然のことです。
*
左右それぞれの投げ方を教わり、投げる数も均等に。グラヴは監督からお古を頂いた。
「次は打撃練習」
バットを取りに向かう。
「沚水君はそっちじゃないよ。打撃投手」
え?
「ネットが守ってくれるし、これ着けてたら怖くない」
ヘッドギアか。そういや、初めての打撃練習の時もフェイスマスクを着用したっけ。
「左で投げますか?」
「いや、これも均等」
指示通りの腕で投げる。左右交代の時はL字ネットを裏返して貰ってた。
「最後、止水君、打撃」
これは左右の投手を出してくれた。それに対して右左の打席に立つ。これも均等に。
左打席に立つと球の動きがわかりやすく感じた。右に立つと、左投手の球ってこんな感じだったのかと思った。
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「向こうではチームに入らなかったんだって?」
「隣町まで行かないと無いんです。バスの本数も少なくて」
「高校はどうする?」
「向こうで寄宿舎のある学校へ」
「野球部入りなさい」
「通用しますかね?」
「両投げってだけで面白い。楽しみだ」
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今更、町のチームに上級生として入るのも何だし、高校で?
さぁ、どうするかはわからない。
監督から苗字で呼ばれていたか、下の名前だったか思い出せませんでした。