本屋で本を買う意義とその未来ついて
『本って本屋で買った方がいいんですか?』という肋骨屋カオル様のエッセイ非常に興味深く拝読させていただきました。
疑問→体験からの意見→作家さんの気持ちを尊重し本屋に出かけてみようという結論
非常に簡潔でわかりやすい文章でよいエッセイでした。
件のエッセイではなぜ書店で本を買わなければならないのか、という問いに解がないままでしたので私なりにこの問題について考えてみました。
感想にしては長くなりすぎましたので別エッセイとして投稿することにします。
さて、実店舗の持つ大きな役割としてその広告効果があります。
Amazonでの購入時にも類似商品をおすすめされますが、それはスマホやPC画面の狭い範囲に限られます。
それが書店であると眼前にめいっぱい多種多様の本が広がるわけです。
そしてその全てが絶版になっていないため確実に作者や出版社の利益になる本なわけですから出版社や作家さんからしてみれば理想的です。
Amazonであるとお勧めで表示された商品が中古品の取り扱いしかないということもよくあります。
少し話はそれますがAmazonに在庫がなくとも書店なら出版社に問合せ取り寄せることも可能です。
更にエッセイ中から引用しますと[本屋はイオンモールなどで暇つぶしに覗く]とありますようにこの暇つぶしに覗くという行為が実際にその店舗で購入するかは別として広告になります。
書店で目にしてSNSで評判を調べAmazonで購入するといった場合もありますし、ライト層がなんとなく訪れて「あぁ、今はあの本が売れているんだな」と思ってもらえるだけで、計り知れない業界への貢献といえます。
また出版社の立場で考えても書店ほど広告を打ちやすい場所もありません。
出版社がこれはいい本だからプッシュしていきたいと考えてもAmazonだと本以外の他業種の製品と狭い画面内シェアの奪い合いになります、kindleであっても売上ランキングなどがあってもそこに出版社側からの売りたいという気持ちが介在するのは難しい上どうしても大手出版社が有利になってしまします。
これが書店であれば本に興味がある人が集まる場所で売り場面積の制約は同じようにありますがはるかに広い場所で、本に興味を持っている顧客にダイレクトに広告を打てるわけです。
また小規模の出版社でもほんの陳列等に関して直接交渉ができます。
売上が下がり書店が無くなっていくというのは、こうした広告効果のあったものがなくなるわけですから業界自体の衰退にも繋がっていくことになります。
つまり書店は存在するだけで一定の価値があるということです。
しかし、それは出版社の事情であって利用者には何の関係もないじゃないか、出版業界の衰退も時代の流れ、仕方ないことだ、出版業界が特別なだけじゃなくどこの業界でも起こっていることだし悲劇面するな、とおっしゃる人もいるでしょう。
本好きとしては悲しいことですが、事実その通りです。
Amazon登場以降、他の小売店と同様に書店も非常に厳しい状況に置かれており、実店舗の役割というのは、その必要性を内外から厳しく問われてきました。
似たような状況にある他業態の事業として映画館があります。
映画館もネットフリックスなどのサブスクの登場により苦境に立たされています。
そこで映画館はただ映画を上映するというものではなくI-MAX、スクリーンX、4DXなど”体験”に重きを置くことで存在価値を高めるという方向を移行しつつあります。
書店もこの”体験”というものを模索しているように感じます。
例えばカフェと併設された書店などはそれの最たるものです。
書店全体としては減少していますが、ミニコミ専門店やセレクトショップ形式の個人店といったごく小規模の店舗は増加傾向にあります。
これは個人の趣味嗜好が細分化されている現代という背景もありますが“その店舗に行って買い物をする体験”という価値を提供していることが支持を集めているからです。
またサイン会やトークショーなどが行えるのも“書店体験“の魅力の一つです。
作家さんによっては実際に自分の本が店頭に並ぶことが執筆の大きなモチベーションになっているという話も聞きます。
これも作家さん側ですが一つの体験と言えます。
結論として、『本って本屋で買った方がいいんですか?』という問いかけに対し私は、「業界のことを考えれば買った方がいい、けれど本の購入自体は、もう本屋である必要はない」と答えます。
そして書店は上記のような体験に重きを置くニッチな需要を満たす場所となるでしょう。
最後に非常に個人的な理由を述べてこのエッセイを締めます。
私は月に20~30冊ほど漫画を買っていますが、Amazonは使っていません。
理由は単にAmazonの配送が糞だからです。
折れやへこみは当たり前、ひどいときには帯や表紙が千切れるほどに敗れていたりします。
一応交換には応じてくれますがその手間が面倒です。
この辺りの配送手段やシュリンクといった気配りはまだまだ書店にノウハウがあります。
あと金銭を支払ったときに商品も手に入れておきたいという個人感情もあります。(以前Amazonで在庫を確認し注文下にも関わらず1カ月経っても届かず問合わせるとやっぱり在庫がなかったといわれたことがあります。)
書店で買う必要はないといいましたが文化として書店が身近であることは重要だと思いますし、まだまだ書店には頑張ってもらいたいものです。