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侯爵様の愛しい侍従   作者: ユタニ


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30話 デビュタント (5)

クラウディオは庭園の外れの方の東屋で、ひとり座っていた。


庭園の隅々までぜいたくに灯りが配置されていて、辺りはぼんやりと明るい。


疲れたな。


まさか、あんなに囲まれるとは思ってなかった。

ケイトが結婚したせいもあるよなあ。


結局、マルとは踊れなかったな。

まあ、いいか、楽しそうだったし。


そろそろ戻ろうかな、と思った時にマルの声がした。


「クラウディオ団長。」

声の方を向くと、愛しい婚約者がそこにいた。



「マル。どうしたの?」

「ヒューゴから、こちらでお休みだと聞きました。すいません、リーゼット嬢の時にクラウディオ団長を利用してしまったせいですよね。」


「構わないよ。」

「お疲れのようです。」


「さすがに、あれだけ続けて相手をするとね。」

「すいません。」


「ううん、君が楽しそうだったし、僕はいいんだ。でも疲れたな、ちょっとこっち来て。」


マルがクラウディオに近づくと、クラウディオはマルの腰に手を回して、寄りかかった。


「わっ。大丈夫ですか?」

マルは腰にクラウディオの頭の重みを感じた。


「うん。知らない子ばかり相手したから、知ってるマルだと落ち着く。少しこうしてていい?」

「いいですよ。」


マルはクラウディオのさらさらした銀色の髪に触りたいと思ったが、我慢した。そんな事は恋人同士がする事だ。


時おり、舞踏会の演奏が聞こえてくるだけの静かな時間が流れる。夜風が心地いい。


しばらくすると、クラウディオはそっと体を離した。


「デビュタントが終わったらと思ってたんだけど、もう終わりそうだし、いいか。」

そしてぽつりとそうつぶやく。


「ねえ、マル。」

「はい。」


「君のことが好きなんだ。」

クラウディオは座ったまま、マルを見上げてそう言った。


マルはクラウディオの様子がいつもと違うな、と思いながらもすぐ返した。


「ありがとうございます、私もす、」

好きです、と続けようとしてクラウディオに遮られる。


「ちょっと待って!そうくると思ったよ。そうじゃなくて、うーん。」


「困ったな、花束とか宝石を用意するべきだったんだけどね。今日伝えるつもりじゃなかったからな、、、、。」


クラウディオはちょっと考えると、マルの前にひざまずいてその左手を取り額にあてた。


クラウディオの前髪がさらりと手の甲に触れる。マルはドキッとした。


「マルグリット嬢、貴女に騎士の忠誠を誓います。」

「えっ?」


「貴女の盾となり、貴女のために剣を振るいます。今日より、この身は生涯貴女のものです。いかようにもお使いください。」


マルは、今までの人生で一番ドキドキした。

顔が熱い。

心臓がぎゅうぎゅうする。

うわあ、なにこれ。


クラウディオにふざけてる様子はない。

一体、急にどうしたんだろう、とマルは考えた。


「クラウディオ団長。」


「はい。」

クラウディオは顔を上げて、マルを見た。


「もしかして、わざわざプロポーズをしてくれてますか?」

婚約した時は、気軽で事務的な感じだったので、やり直してくれたのだろうか。


「んー。」

クラウディオは、困ったなという顔をした。


「伝わらないなあ。僕の日頃の態度のせいもあると思うけど、マルはもう少し自惚れてほしいな。」


「プロポーズではない?」


「プロポーズでもいいけどね。もう後には引けないし、こつこつ説明しようか。マルは僕が君と婚約したのは、この縁談の内容が気に入ったからだと思っているよね。」


「はい。」


「そして、僕のマルへの好意は、最低限というか、ある程度のものだけだと思ってるよね。なんなら、君は僕とケイトの仲を疑っていて、自分との結婚が隠れみのになれるんじゃ、くらいは考えてそうだけど?」


「えーと、、、、それは、、。」

クラウディオの指摘通りだったが、結婚前から浮気を容認するつもりなんてさすがに肯定はできない。


「そうなんだね。」

「お邪魔をするつもりはないというか、、、。」


「ケイトは友人だよ。友人がピンとこないなら、双子の妹みたいなものだ。僕はターゼン邸で君に会ったときから、君に恋い焦がれているんだ、マルグリット。」


クラウディオの青い瞳が真剣な眼差しでマルを見つめた。

ドキドキする。

顔が熱いのがおさまらない。


「縁談を承諾した一番の理由は、君なんだよ。」


クラウディオはせつない表情でそう言った。

ひざまずいているままなので、マルはずっと見上げられていて、その色気にくらくらする。


「愛しているんだ。」

マルは、また心臓がぎゅうっとなった。


「手にキスしてもいい?」

言葉がでてこない。


クラウディオはマルの左手にそっと口づけした。


最初に中指の第二関節に唇をあて、次に爪にそっとキスすると、最後に指先を唇で少し食んだ。


「!」

マルは、指先を食まれて、ふうっとのぼせた。

へなへなと足の力が抜ける。


「えっ?マル、大丈夫?」


クラウディオが慌てて支えて、ベンチに座らせてくれた。



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― 新着の感想 ―
楽しく拝読しています。 マルの言葉使いで「すいません」が気になりました。貴族令嬢で目上に使うなら「すみません」が上品だなあと思いました。すまないからきている言葉なので。庶民が使うなら問題ないと思います…
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