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侯爵様の愛しい侍従   作者: ユタニ


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28話 デビュタント (3)

マルは夢のようなケイトとのダンスを終えて戻ってきた。


ランドルフがダンスをほめてくれて、りんごジュースを渡してくれる。


ジュースを飲んでひと息ついていると、1人の令嬢がマルに話しかけてきた。


「ごきげんよう。私はリーゼット・バーナードといいますの。一体どんな遠方からいらしたのかしら?初めてお見かけするようですけど。素敵な方達を一人占めですわね。おかげでお相手がいらっしゃらない方もたくさんいますわ。」


燃えるような赤い色のドレスを着た、気の強そうなご令嬢だった。


口調や目つきから、すぐに嫌味とあてこすりだと分かる。


ぽっとでの田舎娘が、生意気に騎士達を侍らせてることに我慢ならないのだ。


バーナード家は確か伯爵家で、中立よりの貴族派だったな、とマルは思い出した。

リーゼット嬢は既に社交界デビューしている令嬢だ。


けんかを買う必要はないし、マルに話しかけてきたのは、単に嫉妬からのようだ。


マルは優雅にお辞儀してから言った。


「初めてまして、マルグリット・ターゼンと申します。お会いできてうれしいです。リーゼット嬢。ターゼン領は北の端にございます。田舎娘が帝都に出るのを心配した父が、馴染みのある方に私のお守りをお願いしたのです。私の手柄ではございません。」


「あらあら、お父上の手配なんですのね。」


「ええ。私は帝都も初めてですもの。皆さん、私の話を聞いてくださる優しい方々です。優しいのは、私に限らずだと思いますよ。」


マルはリーゼットににっこり微笑み、少し申し訳ないと思いながら、ちらりとクラウディオを見た。


クラウディオは一瞬だけ戸惑った表情を浮かべたが、すぐににこやかにリーゼット嬢に話しかけた。


「こんばんは。リーゼット嬢。お話しするのは初めてですね。クラウディオ・ローレンスといいます。貴方さえよろしければダンスのお相手を希望しても?」


リーゼットが断りたければ、断ることができるように、気さくな誘い方だった。


「えっ?クラウディオ卿が私とですか?」


リーゼットは真っ赤になってまごまごした。


リーゼットは、マルに嫌味を言うためだけに来たのであって、まさか人気の騎士からダンスの申し込みを受けるなんて、考えてもいなかったのだ。


「今夜は、若い令嬢達のための舞踏会でしょう?」

クラウディオは優しく微笑む。


「ええ、はい。では、とても光栄ですわ。」


「それは、私の台詞ですよ。」

クラウディオはくすくす笑いながら、リーゼットをリードした。



「マル、、。もうラウを使いこなしているんだね。」

ケイトが呆気にとられた顔でそう言った。


「えっ、違いますよ!とっさにです。後で謝ります。」

マルは慌てて答えた。



「それが良さそうですね。さて、クラウディオ卿もいませんし、貴方の次のダンスのお相手をする幸せに私が預かってもいいですか?」


レイピアがそう言って、手を差し出した。

マルを見て微笑む。


はあ、騎士の正装をしているレイピア卿だけでも嬉しいのに、微笑んでダンスを申し込まれて断れるレディなんているんだろうか。


「喜んで、レイピア卿。」


マルはレイピアの手をとった。




「レイピア卿は男性パートも踊れるんですね。夜会ではいつもドレスなのに。」


優雅にリードしてくれるレイピアにマルは言った。


「妹の練習相手をした時に覚えました。騎士服はケイト団長とかぶるのもあって避けてたんですけど、こっちの方が楽ですね。」


「私も侍従服の方が楽です。」




ダンスをしながら、マルはクラウディオとリーゼット嬢を見かけた。


やっぱり、クラウディオ団長はケイト様と踊るのが一番絵になるなあ、とマルは思った。


クラウディオがリーゼットに優しく微笑みながら何かを話しかけているのが分かる。

リーゼットは嬉しそうに頬を染めている。


クラウディオ団長って誰にも優しいなあ。



、、、、なんか。


嫌だな。


あれ?


私、クラウディオ団長がケイト様以外と踊るの嫌なのかな。


でも、今までも色んな方と踊ってるの見てるのにな。

婚約したから、嫌になったのかな。所有欲的な?



マルは、なぜ嫌だったのか、腑に落ちないままダンスを終えた。



続けざまのダンスを終えて休憩していると、若い令嬢達がマルに話しかけにきてくれた。



「入場された時から、とてもお美しいのでずっとお話ししたかったんです。」


「初めてお見かけしますし、皆さん、興味津々だったんですよ、でも、名だたる騎士の方に囲まれてらしたから、気後れしてしまって。」


「リーゼットさんに冷静に対応されてたでしょう?穏やかな方なんだわと思って、皆で来ましたのよ。」


「リーゼットさんの言ったことは気になさらないでね。」


「ターゼン領は北の端とおっしゃってましたけど、寒いんですの?」


「ブランシュ侯爵が後見をされているのかしら?帝都にしばらくいらっしゃるならぜひ、お茶会にいらしていただきたいわ。」



いづれも、マルと同じように今回デビュタントを迎えたか、最近迎えたばかりのレディ達で、既にお茶会などで交流しているらしい。


マルはこんなに多くの年の近い令嬢に囲まれるのは初めてで、圧倒されたが、できるだけ顔と家門を一致させるようにした。



その後、マルは何人かの令嬢と話し、ケイトとレイピアと軽食を食べて、ランドルフとも一曲踊った。



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