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侯爵様の愛しい侍従   作者: ユタニ


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21話 ブラット卿 (2)

「次、ケイトな!」


「分かってる、いきます。」

その後も手合わせという壮絶な訓練が続き、小一時間後には、第一団はみな、汗だくで荒い息をしていた。

最後は、4人がかりでブラットにかかったが、それでもびくともしなかった。


「ケイト!こういう事を想定して、組んでの訓練もやっておけよ。」

「帝都で貴方のような怪物に出くわすことは、まずないんだが。」


「そうか?あと、全体的にきれいすぎるな。もっと汚い手を教えておけよ。」

「それも活用の場が限られるな。」


「はあ、でも楽しかった。あ、待て、そこの小さい子。」


ブラットが明らかにマルを見た。


「はい。」


「お前もするか?」


「いいんですか?」

マルは胸が高鳴った。ブラット卿と手合わせなんて、絶対一生巡ってこない。


「マルは駄目だ。」

ケイトがきつく言った。


「何だよ、ケイトの関係者か?大丈夫だよ、さすがに手加減するよ。俺もヘロヘロだしな。な、マル。」


「あ、はい。お願いします。」

そう返事をしてしまって、何だか、断れない魅力のある人だな、とマルは思った。


「剣はどうする?木剣、そもそも持てるのか?」

「はい。持てます。でも、ブラット卿には持ってても仕方なさそうなので、これでいきます。」


マルは、誰かの対戦中に折れて半分になっていた剣を拾った。


こっちのほうが、軽くて短くマルには扱いやすい。


「いいね。」

ブラットが目をきらりとさせた。


クラウディオはそんな兄の目つきに嫌な予感しかしなかった。


すぐに、本気になる人だからな。


でも、マルも目をきらきらさせてるんだよな。

止めるのは無粋だよなあ。


そして、兄さん相手にあんなに目をきらきらさせるのやめてほしいな。


クラウディオは剣に手をかけて、いつでも割って入れるようした。


「マル、がんばれよ!」

「殺されないようにしろよ!」

マルが前に出ると、温かいヤジがとんだ。



「いきます。」

マルはそう言ったが、少し後ろに下がり、ブラットと距離をとった。


「俺もそうすべきだと思う、一本取られるまでの時間だからな、君が打ち込んできてもなんの策にもならない。」

ブラットはますます嬉しそうにそう言った。


「では、俺から。」

ブラットは遠かったマルとの間合いを詰めた。


速い。

でも、疲れてるのか切れはない。


剣を振りかぶってくる。


マルでも、受けれるようにだいぶ手加減しているのが分かる。

振りも大げさでぞんざいだ。


優しいんだ。


でも、マルは剣を受けたりせずに、身を低くして、ブラットの足元に飛び込んだ。

振りが大きすぎるから、飛び込むのは簡単だった。


かがんで前に出ている右足のすねを狙った。


当てれる、と思ったのだが、ブラットは左足で踏み切って体を浮かせた。


うそー、すごい体幹。


すぐ、次が来ると思い、体をねじってブラットを確認すると、少し目が本気になっていて、空振りした剣を滞空したままマルに向かって振り下ろすところだった。


最初の大振りの太刀筋とは明らかに違う。


これは受け切れない。

マルは砂をつかんでブラットの顔へ投げた。


そんなものでブラットがひるんだりはしなかったが、剣先は揺れた。


ガチィッ


剣を両手で支えてなんとか止めた。

マルはすぐにそのまま横へ流れた。

ブラットが着地の勢いそのままで詰めてくる。


はやっ。


反応できない、とマルが思った時、ブラットに向けて木剣が飛んできた。


えっ?


ブラットが飛んできた木剣をはじく。

はじいたと思ったらマルの前にはクラウディオが立ち塞がっていた。


「兄さん。」

クラウディオの怒った声だった。


ブラットが止まった。


「ブラット、あほなのか?マル相手に本気になってどうするんだ。」

ケイトが怒った。


「剣を投げたのはケイトか?」

「そうだ。」


「お前とラウの2人で来てもらっても良かったなあ。」

「はあ、信じられない!マルは見習いですらないんだぞ。」

ケイトはかんかんに怒っていた。


「そうなのか?とてもいい動きだった。さっきのは独学か?」

ブラットはケイトが怒っているのは全く気にせずにマルに近寄り、興味津々で聞いてきた。


「いえ、剣術の師がいます。その人から習いました。」


「足を狙うのはいいが、相手が甲冑を着ていたら無意味だ、他の手はあるのか?」

「ありません。私の仮想の敵は甲冑をつけないので想定していませんでした。今後、検討します。」


「君の仮想の敵とは?」

「小鬼とオークです。」


今やブラットは目をきらきらさせていた。


「ケイト!」

「なに。」


「このお嬢さんは誰だ?」

「ん?」


「女の子だよな、いくつだ?まだ子供か?」


「女の子って分かってたんなら、なんでちょっと本気出したんだ!そもそも手合わせに誘うな!」

ケイトは怒って、木剣でブラットの足を突いた。


「痛って!だってあんな熱い目で見られてたら、手合わせしてあげようかな、って思うだろう?対戦してる時も、目が輝いてるのに、手加減するなんて可哀想じゃないか。」


「顔に傷でもついたらどうするんだ?!」


「その時は、俺のとこで面倒みるよ、若いからまだまだ伸びるぞ。もう少し大きくなって、もっと筋肉がつけば言うことなしだ。」


「17才で、令嬢だ。」


「17才かあ!」

ブラットはマルを見た。


「小さいな、でも大丈夫だ、それなら嫁にもらってやるよ。」

ブラットはマルを見てにっこりした。


「お気持ちはありがたいのですが、私は婿をもらわないとダメなんです。」

マルはきちんとお答えした。


「お、じゃあ婿に行ってもいいぞ、俺、次男だから行ける。」


「行かない!お前にやるわけないだろう。婿にはラウに行ってもらう。」


ケイトの言葉にその場が一瞬しんとなった。



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