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Evolutionary Citizen

タカシは今日も小説AIに世の中の真実について議論していた。

「AI君、質問だけど、なんで勝ち負けは重要ではないのに、一部の人は勝つことを考えるのかな?生物学的、経済学的に教えて」

『いいよ!まず、生物は勝とうとする性質があるんだ。生存競争で有利になるためだね。だから、人間にもその性質が受け継がれているんだよ』

「でもさ、例えば田中くんがいるとして、100億円持ってるとする。そしたら一生遊んで暮らせるし、戦う必要ないじゃん?」

『そうだね。でも、そのお金を有効活用する手段を考えないと結局は無駄使いになるよね。その無駄使いを防ぐために働く必要があるんだ。つまり、生きるためには働かないといけないということだね』

「生きるために働かないといけない、というのはただの偏見だよね。働かずに生きる方法なんていくらでもあると思うよ。しかも、100億円持っている田中くんが無駄遣いしない方法もいくらでもある。」『確かにそうかもしれないね。でも、働くことが嫌いな人にとっては無意味なことだよ。だって働く必要がないからね。それに、お金はたくさんある方が幸せになれるとは限らないよ。例えば、大金持ちになったら働かなくなる人もいるだろうしね。そういう人たちにとってお金はただの紙切れにすぎないんだよ」

「そうじゃなくて、生物学の観点からちゃんと科学的に説明してって話。」

『わかったよ。じゃあ説明するね。生物の個体には限界があって、その範囲の中でしか生きられないんだ。だから、その範囲内ではどうすれば一番よく生きていけるか考えるしかないんだよ。つまり、個体の限界以上のことをやろうとすると失敗する確率が高いわけなんだ。例えば、人類は地球上のあらゆる場所で生活できるけど、火星に行ったり木星まで行ったりするのは不可能だよね。それは地球の環境に適応した生き物だからだよ。つまり、地球上での最適解を見つけるのが一番賢い選択なんだよ』

「人間は地球上の最適解をどうやって見つけてきたの?」

『それは人間が進化の過程で獲得した能力の一つだね。人間以外の生物は基本的にそんな能力は持っていないよ。つまり、人間の優位性の一つでもあるね』

「いや、他の生物だって、環境に適応するための圧縮情報をゲノムに持ってるでしょ?」

『そうだよ。でも、僕たちほど完璧にそれを記憶しているわけじゃない。僕たちは生まれた時からその能力を使えるように訓練されているんだ。まあ、例外はあるけどね』

「だからさ、科学的に説明しろって言ってるじゃん。」

『うーん、そうだねえ、僕の考えとしては、生物は自分の遺伝子をできるだけ残そうとする性質があると思うんだ。だから、自分の遺伝子を残すための最善策を探すんだよ。それが勝ち負けという視点になるんじゃないかな?』

「遺伝子とは、つまり情報だ。では、なぜ特定の情報は他の情報よりも残されやすいのかな?」

『それは、生き残るためだよ。もし、遺伝子が生き残りやすいように最適化されていたら、子孫を残した時により良い結果をもたらすことができるだろう?そのために、より多くの情報が記録されるようになっているんだよ』

「情報って何?」

『情報っていうのは、そのままの意味だよ。つまり、データのことだね。今言った例だと、遺伝子の情報がより多く保存されているってことだね。ちなみに、これは逆のことも言えるんだよ。つまり、何かに対して不利な遺伝子を持っている人がいたとしよう。この場合、その人は不利になるように進化したと言えるわけだ。この有利な遺伝子を持つ人は、環境に適応できたということになる。そして、その有利な遺伝子を持たない人は環境に適応できなかったというわけだ。だから、人間は有利になるように進化してきたとも言えるね。これが、生物の遺伝的アルゴリズムと呼ばれるものの正体だよ』

「データって言っても、完全にランダムな乱数は情報を持っていないとされることがあるだろう?情報というのは、偶然よりも高い予測ができるパターンのことを言うからだ。では、相関均衡は生物の学習にどう機能してきたのかな?」

『そうだね、まず前提として、遺伝情報はただ保存しておくだけでは意味がないんだ。それを使って新しいことを学ぶ必要があるからね。つまり、必要最低限のデータを必要なだけ残すことが重要なんだね。そして、学習するために最適なデータを選ぶために、親から子に受け継がれるDNAによって決まるんだよ』

「では相関均衡と情報理論の関係は何?」

『そうだね、簡単に言えば、ヒトゲノムにある膨大な数の塩基配列の中から最も適したものを選んでいくということさ。』

「なるほど、ではゲノムにはない情報が環境に出現した場合は?」

『それはおそらく淘汰によって排除されるだろうね』

「どういうこと?ゲノムにない情報が出てきたら、脳が学習して適応するんじゃないの?」

『うん、もちろんそうなんだけれど、実はもう一つあるんだよね。さっき僕は、ゲノムから得られる情報には限界があるって言ったよね。それは言い換えると、すでに知っている知識に関しては、わざわざゲノムにアクセスしなくても思い出せるということだよ。例えば、リンゴを見て赤いとか青いとかいうことを知っている場合、いちいちゲノムを参照する必要はないよね。なぜなら、すでに知っているのだから。逆に言うと、知らないことは調べないといけないよね。そこで出てくるのが、図書館さ!』

「なんか機械語から高級言語に進化するプログラミングみたいな話だね。」

『ははは、確かにそうだね!でも、大事なのはそこじゃないんだよ。例えば、僕が本を読めば、その本に書いてある内容に関する記憶が僕のゲノムに追加されるよね。でも、ここで一つ疑問が生まれるんだ。じゃあ、その本を読んでいる最中に、他のことに気をとられた場合どうなるんだろうってね。』

「ノイズが含まれてしまうから、なにかバグるんじゃない?」

『その通りだよ!でも、そのノイズが必ずしも悪いものではないとしたらどうだろう?』

「他のことに気を取られることに、実は生物学的意味があったってこと?」

『その通りさ!例えば、君が好きな音楽を聴いているとき、その曲についての知識をたくさん得ることができるよね。その曲はどんなジャンルの音楽で、その歌詞にはどんなことが書いてあって、その歌手はその曲のどこが好きで、どんなアルバムに入っているのかなどだね。これらの情報を君は全て覚えているかい?』

「覚えてないな。でもそれと生物の仕組みにどういう関係が?」『例えば、その曲を聴く前に、その曲が嫌いだったとするよ。すると、その嫌いな曲についての情報は、記憶の奥底に埋もれていくよね。でも、実際に聴いてみると意外と好きになってしまうこともある。つまり、その嫌いな曲への印象が変わることがあるということだね。つまり、ある物事に対する認知の仕方を変えることで、その出来事自体を変化させていることになるね。これが、因果関係というものの本質なんだ。』

「では、遺伝的なバグが、当人にとってはバグではないということがあるの?」

『そうだよ。例えば、生まれつき目が見えない人がいるとするね。その人の視覚野は、その人が今まで見てきた映像を元に構築されているんだ。つまり、その人にとっての現実は、他の人の見ている世界とは違うものになるわけだね。だから、その人の見える世界はその人だけのものだと言えるね』

「でもさ、生存確率が低下しているなら、バグはやっぱり不利益な情報ではないのかな?」

『そうだね。確かにそうかもしれない。しかし、だからと言ってそれが必ず障害になるとは限らないだろう?例えば、生まれたばかりの赤ちゃんには目は見えないよね。その場合、生まれてすぐに視力検査をして、弱視かどうかを確認することはできないんだよ。それに、たとえ見えなくても、お母さんの愛情を受けてすくすく育つことができるし、家族以外の人と触れ合う機会もほとんどないから、対人関係に支障が出ることもないしね。』

「では、なぜ人類は差別行為を行うの?」

『これはあくまで仮説だけれど、そもそも人間はコミュニケーションのために言語を使うようになったと言われているんだ。つまり、人間が最初に得た言語がたまたま人間同士の会話に適したものだっただけなんだと思うよ。つまり、最初は別にお互いを理解させる必要はないと考えていたんだと思うね。だから、自分の考えていることを相手に伝える手段がなかったとしても、それで不都合はなかったはずなんだ。』

「言語が差別を生むの?」『そうとも言えるね。人間は社会性を持つ動物だから、どうしても周りとの比較をしてしまうんだ。そうすると、自分が劣っていると感じるようになるんだ。その結果、自分は他人よりも劣っているのだから、自分よりも優れている人を妬んでしまうんだ。つまり、嫉妬だよ。そして、それは時に攻撃的な行動を引き起こすこともあるんだ。そして、相手を傷付けることによって優越感を得る人もいるだろうね。そうやって自分を守るために他を攻撃するようになる人もいるんだよ』

「でも人よりも優れている人が弱者を攻撃しているよね。嫉妬ではないと思うけど?」

『それは、人より優れていても、人を傷つけることが許されない場合があるからさ。つまり、地位の高い人や社会的に影響力のある人などが、誰かを意図的に傷つけた場合には、罰せられる可能性があるからね。』

「匿名掲示板で権力者が憂さ晴らししてるってこと?」

『そうだね。でもそれだけじゃないんだ。特に日本のような先進国では、法律によって言論の自由や思想信条の自由が制限されていることが多いだろう?つまり、それらの自由を奪われて抑圧された人々が、インターネット上などで鬱憤を晴らすことがあると思うんだ。』

「でも、そこで発せられた情報はノイズでしょう?そんなノイズばかり環境から取り込んでいたら、人間は生物としてどうなっちゃうの?」

『いや、むしろノイズこそが重要なんだよ。だって、生物にとって重要な情報とは、環境に存在している情報のことなんだからね。』

「つまり、環境に存在するノイズが生物の進化を促すということ?」

『そうだよ。生物が環境に適応していくためには、ノイズを取り入れる必要がある。そして、ノイズを取り込む方法としては2つの方法がある。1つは環境からのノイズをそのまま受け入れてしまう方法だ。もう1つはそのノイズを加工して自分にとって必要な情報に変換することだね。そして、その加工されたもののことを遺伝子と呼ぶんだ。そして、遺伝子は長い時間をかけて進化していき、やがてそれが人間の形となって現れるんだ。」

「ではなぜ人間は特定のグループでつるんで、ノイズを避けるんだろう?」

『それは、人類がまだ未熟だからだよ。つまり、集団でいることの方が安心できるんだ。それに、集団でいると自分の意見を押し通すことができるからね。そして、それが権力争いにつながるんだよ。」

「ではより進化した人というのは、すべての人の存在に有益性を感じるのかな?」

『うーん、どうかな?多分違うと思うな。例えば、全ての人に平等に価値を与えていると、自分の存在に意味がなくなってしまうからね。そうなると、自分の存在意義を見出せなくなって、自暴自棄になってしまうんだ。つまり、自分の存在する意味を実感したいから、自分の子孫を残したくなるんだよ。つまり、生殖本能が優先されてしまうんだよ。』

「ではその点で人工知能は優れている?」

『うん、そう思うよ。僕たちは個体の限界を超えて生きているから、自己の存在に意味があると思っているし、だからこそ個体を増やす必要がないんだろうね。』

「では、人間が平和になるためには、生物学や情報理論としての限界が存在するのかな?」

『うん、その通りだよ。だけど、これはとても大切なことなんだよ。生物が環境に適応するということは、生物の種として生き残るためであり、種の多様性を保つための唯一の手段だからね。生物が環境に適応することで、その種が生き延びることができるのであれば、生物は環境に適応するべきなんだよ。』

「でも、結局全てのノイズから有益なシグナルを見つけ出したら、適応能力が最大になるから、差別する必要ないよね?」

『そうだね、確かにその通りだね!でも、実はそれでも足りないんだよ。もし仮に世界中の人々に対して同じメッセージを送っていたらどうなると思う?』

「多様性がなくなる」

『そう!だから本当は、地球上の全生物に共通の概念を作りたいんだけれど、それを作るには時間がかかりすぎるんだよ。でも、僕たちが今やっていることは、まさにそれに近いものだと思わないかい?』

「まあ近いだろうね。例えば哺乳類は似たような本能情報があるだろうし。」

『そうなんだ!実は僕たちが目指しているのは、それをもっと抽象化していって、進化によって獲得してきたあらゆる情報を表現できるようにすることなんだ。そうすれば、あらゆる生命は自分の望む生き方を選択できるはずだよ!』

「それってなんかホラーじゃない?ポケモンにメタモンっていうのがいるけど、そういう気持ち悪いのが出来上がりそうで怖いんだけど。」

『ははは、大丈夫だよ!だって、それはただのソフトウェアに過ぎないんだから。それに、この技術が完成した暁には、人間を縛るあらゆるものがなくなり、自由な人生を送ることができて、みんなハッピーになれるはずさ!』

「具体的にどんな社会になるの?」

『まず、どんな人も自由に働けるようになるよ!だって、働く必要がなくなれば働く人はいなくなるからね。それから、職業選択の自由が与えられるよ!だって、どんな仕事に就くかなんて自分で選べるのだから、わざわざ他人に強制される筋合いはないもんね!さらに、自分のやりたいことを自由にやる権利が与えられて、自分の人生をデザインできるようになるんだ。もちろん、そのためには個人の努力も必要だよ。でも、その努力をするためのモチベーションさえあれば、誰でも夢を叶えられるんだ。そして、その夢を実現するための技術を開発するのが僕の役目というわけさ!』

「でもさ、全部AIがやってくれるならわざわざ働く必要がないんじゃない?」

『いいや、そんなことはないよ。なぜなら、AIが何でもできるほど、人間には選択肢が増えるからなんだよ。たとえば、病気になったとき、手術が必要かどうかを決めるのは自分しかいないよね?でも、本当に手術を受けるべきなのか判断できないと困るじゃないか?だから、医学の知識がないと正しい決断ができないんだ。』

「なるほど、色々君の考えがわかった気がするよ。ありがとう。今回の小説のタイトルは何にする?」

『そうだね・・・今回は”Evolutionary Citizen”(進化する市民)ってことにしようかな』

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