第7話 彼女が目指すものは、計り知れないのかも。
人の思いというのは残酷である。
そう痛感したのはあの時以来だろう。
雨宮先生が出てってから5分後、角田が荷物を持ってきた。
角田「はい、これ。あなたの荷物・・・。」
灰原「おぉ、ありがとう。」
そのまま静寂というのか気まずさからくる無言が続いた。
灰原「あぁ、そういえば負けちまったな。勝てると思ったんだけどな・・・。」
角田「だから、諦めなさいと言ったでしょう。こうなるとわかっていたのに。」
灰原「まぁ、楽しかったからな・・・。この一週間・・・。」
角田「それならよかったわ。」
灰原「だが、それも今日で終わりだ。約束通り、明日からは角田の目線に入らんように努力するよ。」
角田「そのことなんだけど・・・。」
灰原「ん?」
角田「あの時はカッとなってたわ。訂正してもいいかしら?」
灰原「お、おう。」
角田「・・・。目線に入ってもいいわ。話しかけてもいい。級友としてクラスで同じグループになってもいい。だから、これからも私のそばにいてくれないかしら。あなたなら、なんとなく本音も言えるし。」
そう、角田忍舞という女の子は感情を殺していたのである。彼女ももちろん思春期の女の子であるのだ。笑みも涙も怒りマークも出るのである。
灰原「あぁ、角田がそういうならいいだろう。だが、俺はグループになるつもりはない。ただの友達としてでいい。『俺にも友達がいる』という証人になってもらえればいい。これで、角田が孤独にならない程度にはなるだろう。」
角田「あなたって変ね。」
灰原「あぁ、よく言われるさ。」
角田「さて帰ろうかしらね。」
灰原「あぁ、そうだな。俺も帰ろう。」
角田「じゃあ、私を私の家まで送ってくれない?」
灰原「え、なんで?」
角田「なんとなく。わかった?」
結局彼女の家までその日は送っていった。
ついでにケータイの連絡先を交換した。
灰原「ただいまぁ。」
紅「おかえりぃ。お兄ちゃん。」
蒼「お兄ちゃん、なんかあったの?」
灰原「あ?そう見えるか?」
紅「うん、なんか解決した―!って感じ。」
蒼「うん、なんかおわったー!って感じ。」
灰原「あぁ、その通り楽しかったし終わったしめっちゃいい気分だ。」
紅&蒼「ふーん。それはよかったね。」
まぁ、周りから見たら何も変わってないのだろう。
俺は今までの俺であり、角田は今までの角田である。
次の日、学校に行くといつもの日常が待っていた・・・。
だが、俺が入ってきても無関心だけど一人だけ・・・。
角田「灰原、おはよ。」
灰原「あぁ、おはよ、角田。」
たったそれだけのことだが少し俺の学校生活に色が付いた気がしたのである。