第6話 クラスで浮いている彼は、どのように接してくるのか。
本当に彼にあの七人を託してよかったのか。
最初は本当にわからなかった。
だが、彼は今その一人と本気でぶつかって生きている。
走るという動作を交えてだが・・・。
灰原「明日、角田と走りながら戦ってみようと思います。」
彼はそう言って時計二つをもって出ていった。
雨宮「おぉ~。本当に走ってるんだね。」
和賀「雨宮先生。どうしてここに?」
雨宮「そこで、ヘトヘトニなりながら現役選手について行ってる彼から話を聞いたのさ。手出しは出さない。そういう約束だからな。」
和賀「なんで彼は、ここまで・・・。」
雨宮「彼は学校やクラスで孤独だ。いじめられてるわけではないが・・・。自分から一人を好む性格なんだ。だが、人から頼まれたことはできないことでも引き受けてしまう。あとで、ダメージが来ることをわかっていながらも困っているやつを放っておけないんだ。一人は好きだが、一人でいる他人は見てられない奴なんだ。まったく変な奴だ。」
そう、私に似てるところが彼の美点であり、欠点でもある。
雨宮「で、あと何周するんだ?」
和賀「あと五周です。」
雨宮「おい、灰原正広。これで勝てなかったら明日から補修だからな!」
まったく、あの人は何を言っているのだろう。
そこは、『頑張れ』とか『ファイト』とか励ますとこでしょうが!!
まぁ、やはり俺は勝てなかった。
もう死ぬのかなぁと思ったぐらい酸素が足りなくなった。
こんなに精いっぱい話しながら走ったのは初めてだった。
気が付くと保健室の天井が見えていた。
雨宮「気が付いたか?ばかもの・・・。」
灰原「いや、勝てませんでしたな・・・。」
雨宮「勝てるわけがなかろう・・・。」
灰原「いやぁ、惜しいところまではいったつもりだったんですけど。」
雨宮「まったく、むちゃばかりをする。」
灰原「誰がさせてると思ってます。」
雨宮「さぁな。こんなことを教え子にさせるなんて、そいつは教師失格だな。」
灰原「いや、最高の教師ですよ。今時こんな教師はいませんし。」
雨宮「私はお前の荷物を持ってくるとする。制服に着替えて帰る準備していろ。あとこれだ。今日はお疲れ様だ。『No.005 サタンの斧』だ。」
灰原「先生、そんなポンポンくれちゃって大丈夫なんですか?」
雨宮「あぁ、私にはそいつらの価値はわからないからな。価値のわかるものが持っておくほうがいいだろう。おそらくそいつらも喜ぶしな・・・。」
灰原「先生がくれた時計、総額500万近くありますよ?」
雨宮「ほほう。そんなにするのか・・・。じゃあ、未来有望なお前への投資だと思ってくれたまえ。」
灰原「そういうことにしておきますわ。」
本当に彼にあの七人を託してよかったのか。
最初は本当にわからなかった。
今でもわからない部分はあるのだが・・・。
一つ言えるのは・・・。
雨宮「お、角田。それ、灰原のか?」
角田「はい。」
雨宮「じゃあ、届けてやれ。お前も話したいことがあるのだろう。」
角田「はい。」
まったく、こいつらは不器用で困った奴らだ。
私もその部類に入るのだろうな・・・。