第5話 イレギュラーな客は、おせっかいをやく。
どうして私はこんなバカバカしく、わかりやすい挑発に乗ってしまったのか。
それは、当人である私にもわからないものである。
どうして彼はあんなことを言い出したのか・・・。
灰原「よし、そろそろ勝負と行きますか・・・。」
風間「えぇ、始めましょう。私たち2年生の実力を発揮してやるわ。」
まぁ、この勝負に勝てればこいつも私から離れると言っていたし
この貧弱な身体・・・。女よりも細いのではと思われる足。
こんな奴に負けるほど私は軟でもないわ。
和賀「では、スタートします。・・・オンユアマーク・・・スタート。」
はじまった。この一週目でこいつを離せば一周で終わるのだから。飛ばす。
灰原「速いなぁ。やっぱり、角田。勝たせてはくれないか・・・。」
着いてきてるの?意味わからない・・・。
灰原「恐らく勘違いをしているよ。角田は・・・。」
角田「黙って走れないの?気を散らせる作戦なの?」
灰原「あぁ、その通りだ。なぜなら、角田。お前はとてつもなく速い。後ろにいる先輩たちもそれを承知だ。」
角田「だから?だったら、あなたこそきついでしょ?」
灰原「あぁ、きついなぁ。今にでも太ももや足首が飛びそうだ。」
角田「だったら、さっさと負けを認めて一周で・・・。」
灰原「だけど、楽しいんだ。」
角田「は?何言ってるの?気持ち悪いんだけど・・・。」
灰原「俺はつい最近までお前は『大人締めな女子』イメージだった。喋ったら俺のことが嫌いな普通の女子だった。だけど、この二日ここにきて分かった。角田忍舞という人間は忍耐をもって正々堂々と自分の役割を全うできる女性だったということがな・・・。だから、俺も正々堂々この25周を走りきるさ。例え、心臓が爆発したとしても脳みそが飛び出たとしてもお前についていく。角田がどんなに突き放してきても俺はお前に近づく。お前が振り向いてくれるまで・・・。」
角田「あんた、自分が何言ってるのかわかってる?」
灰原「あぁ、相当きもいことを言ってるわ。こんなきもいことをこの口が言ってるとは思いたくも信じたくもないね。」
角田「あんた、なんでそんなに必死に私にかまうのよ。」
灰原「あぁ。最初に言ったはずだ。俺は俺のやりたいようにやっていくぜ。」
もうなんなの。意味わからない・・・。
もっと飛ばそう・・・。もっと飛ばせるんだもん・・・。
私は強いのよ・・・。私は・・・・。
私は・・・・・・・。
角田父「お前は足が速いなぁ。将来は陸上選手かな。」
角田母「当たり前よ。私たちの子供なのよ。」
子供のころからそう教えられてきた。
父や母の言うことに何も文句を言わずに、
言われた通りクラスでも学校でも一番を走ってつかみ取ってきた。
だから今回のこの戦いにも勝たなきゃダメなの・・・。
残り10周。こいつを引き離せばいいのよ。
私にはそれができるのよ。