表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私が放火魔になった理由

作者: 悪の総統

朝、快晴の下、通学路を歩き切ると当然ながら学校に到着する

自分の席につくとただ授業を待った

教室はクラスメートがあちこちに大小の集団を作ってやかましい

最初は私もそれに加わろうかと思ったが、それはもう辞めた

他人と話すとイラついて最後は暴れださずにはいられなかったからだ

こうして授業を待っている間もイライラする

だが、何事も無ければ抑える事が出来る

私は何かがおかしいのだろうか

なぜ、おかしいのだろう

生まれついての性か


昼休みにグラウンドに出て山を眺めた

私はなぜ生きているのだろう

そんな疑問がずっと浮かび続けていた

いくら考えても何もわからなかった


放課後になった

帰宅の準備をする時間は虚しい気持ちになる時がある

今日もつまらない毎日の繰り返しだった

私の人生はどうなるのだろう

毎日が親や学校の言いなりだ

大人になってもそんなものだろう

誰かの言いなりでいるしかない

つまらない毎日だ

もしも、全てを自由にできたならば私はどうするだろう

やりたい事は特にない

身体を動かすのはおっくうだったし、勉強も好きではない

趣味も無いし、遊ぶのすら大しておもしろくない

クラスメートが何かやっているのを見ても興味も沸かず、何を無駄な事をやっているのだろうかと滑稽に思える

何もかもがつまらない

そもそも、この世の全てはなぜ存在しているのだろうか

いっその事すべてが消え失せてくれた方が楽そうだ


帰宅して何もせずにただ夜を待った

お母さんが夕食を作り始めた

「ねぇ、お母さん なんで私って生きてるんだろう」

「幸せになるためよ」

なんだかめんどくさそうに目をそらして返事をしている気がする

「真剣に答えて」

「それは自分で考えていくしかない」

なんだか怒ったように話を切り上げられた

これ以上の追及は出来なかった

無駄だろう


また、つまらない授業が始まる

うんざりしてはいるが反抗してはかえってめんどうになるだけだ

ここは耐えるしかない

プロジェクターに写真が写される

それは火災現場の写真だった

火災前の建物、燃え上がる炎をまとった建物や、消化後の廃墟が移された

全てが一瞬で輝かしくなった

気分が最高潮に興奮した

気づけば自宅にいた

学校が終わって帰宅した記憶がうっすらと残っている

まだ興奮は冷めやらない

すごいものを見つけた


それから私は隙あらば火事や火について調べ続けた

火事は私の想像を超えてすごいものだった

偉大に全てを飲み込み、強く全てを焼き尽くす

これだけでこの世の全てを焼失させることができる


山道から少し離れた川沿い

草木が生えずに少しだけ開けた場所

それも私の秘密の場所の一つだった

さっそく焚き木をする

燃えやすい草や葉っぱから小枝に火をつけ、薪をくべていく

何度も繰り返して慣れ切っていた

持ってきたぬいぐるみを火にくべる

ゴミ捨て場から拾ってきたものだ

隠し持ってきた酒瓶の液体を振りかけると、火は激しく燃え上がる

目につくものは何でも燃やしてみた

炎が燃え上がるとイライラは吹き飛び胸がスーッと穏やかになる

幸福感で満たされる

その燃え方を知る度に充実感を得られた

理屈ではこんな行為に何の意味も無い事はわかっている

それでも、私の本能や感情が満足してしまう

燃やして楽しんでは、次の燃やすものを探す

つけた火が燃え上がっている間は人生の全てがうまくいっているような気さえした


このまま隠れ潜んでゴミを燃やすだけで終わりたくない

そんな気持ちが芽生え始めていた

世間を驚かせるようなものを燃やしたい

そう、例えば家とか

欲望は膨れ上がるばかりだ

だが、それは出来ない

放火は重い罪だ

もしかしたら、何十年も刑務所に入って暮らす事になってしまうかもしれない

さすがに刹那の幸福の為に人生を捨てるような真似は出来ない

そう思いながらも目は探し続けていた

たくさんに人に影響が出る、燃えやすい建物を探し続けている

足も勝手に動き、私は徘徊し続けた

毎日、何か月か何年かわからないほどに無性に探し続けた

まるで何かに操られるかのように

そうしているうちにとても燃えやすく世界中の人を驚かせられるような場所を見つけてしまった


何度もこの場所に来ている

ここに火種を落とすだけでとんでもない事になる

そんな事を妄想しては帰宅する

そんな事を何度も繰り返していた

おかしな行為だ

なぜ私が火にこれほどとりつかれたのか

それは私にはわからない

ただ、世界中が燃えつくされた後の世界を見たいのだ

理由は無い

ただ、意味も無く恋焦がれている

マッチに火をつけて近づけてみる

このままマッチを落としたらどうなるのかな

想像するとわくわくした

つい妄想に夢中になってぼーっとしてしまう

熱い

気がつくとマッチの火が指まで到達していた

反射的にマッチを落としてしまう

火は想像していた通りに燃え広がる

止めないと

火を消さないと大変な事になる

・・・

・・・

・・・別にそれでもいいかな

迷っているうちに火は燃え広がりあっという間に手を付けられなくなってしまった

しまった

大変な事になってしまった

いや、私は望んでいた

わざと迷ったふりをして火が燃え広がるのを待っていたのだ

それからの私は住んでいた場所から蒸発し隠れ潜み、隙があれば放火した


「おい 起きろ」

目を覚ますと辺りは暗かった

都市だけが燃え上がって明るい光を放っていた

それは比喩では無く、夜景では無かった

文字通り一つの都市が燃えていた

「昔の夢を見ていた」

「昔の…… 感慨にでもふけっていましたか」

「さぁ、わかんない

 きれいだな」

「気が済むまで見るがいい おまえの功績だ」

昔の私よ

私はここまできた

いよいよ文字通り世界を炎で包み燃やし尽くす

おまえもはやくここまで来い


この作品を書き上げて私は興奮した

この作品を作り上げたことによって、ついに新しい世界を創り上げる事が出来たからだ

これからも無限に犯罪者たちを生み出す事が出来る

自分の世界を広げていける

その礎を築いた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ