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頼子と俺  作者: 由起
4/5

思春期

頼ちゃんは中学生になった。

俺は相変わらず専門職だ。


「はい、せいちゃん、お弁当!」

「あ、サンキュ」

「せいちゃん、靴下は表向けて脱いでね。裏向けてたら裏ばっかり綺麗になるから、毎回私がひっくり返してるの」

「…ごめん」


口うるさいおふくろがいるみたいだ…。


こうなれば!起死回生のリベンジ!

「頼ちゃん、中間テストの結果は返ってきた?」

よし、これだ。


「返ってきたよ」と出したのはいい点数ばかり。「でもね、学年で5番だった…」と悔しそうだ。

…そんなに成績が良かったのか…。


「ほら、せいちゃん、今日は早く行くんでしょ!」


…やっぱりおふくろがいるみたいだ。


「二宮、お前の弁当、相変わらずすごいな」

と同期の仲村が弁当を覗き込んで言ってきた。仲村は新婚だ。


「うん、健康第一って色々考えて作ってくれてる」

「今何年生?」

「中1」

「すごいよなぁ。小学生からだろ?」

「うん、小4から作ってくれてる」

「俺の嫁の弁当よりすごいもんなぁ…」


ヤツは俺の弁当を写真に撮った。


「俺の弁当が良くなりますように!」


そして暫く毎日写真を撮られた。撮られる内に仲村のお弁当が充実してきた。


「中1に負けるのが嫌みたいだ。ありがたや~」

と作戦勝ちした仲村は喜んで弁当を食べだした。


中学生ともなれば思春期だ。


部屋に鍵のひとつもつけてやりたいが、頼子の生理が始まってすぐ引っ越したマンションにはドアに鍵が付いていなかった。


ワンルームの値段と2LDKの値段とは全然違う。

確かに俺は昇進して少し給料はアップした。しかし家賃のアップはそれ以上になる。出来るだけ上昇幅を抑えるべく、物件を探した。


で、今の部屋になる訳だ。

ちょっと古めの物件だが、内装は最新のものに変えていてくれたので、そこにした。校区も同じなので、転校しなくていい。


「せいちゃん、大好き!」

俺の腕に抱きついて言う。


せいちゃん、君、思春期の中学生だぜ?

小4からずっと俺に抱きついて大好きとしょっちゅう言う。

そろそろ…それ、卒業しようや?


でも昔の頼ちゃんと変わった点はある。絶対に洗濯をさせてくれなくなったことだ。


下着類を俺に見られるのを極度に嫌う。

この点は思春期の中学生だな。


頼ちゃんは部活を文化系にしたようだ。元から体育がそんなに得意でなく(ほどほど…といったところだ)、体育会系だと家事が出来ないというのが理由のようだ。家事のことは気にするなと言って聞かせたが、頑として譲らなかった。


毎日きちんと栄養のあるご飯が出て来て洗濯もしてくれる。家計簿もつけて節約もしてくれ、俺の貯蓄はこの数年で劇的に増えた。まさに頼子様々だ。


時々可愛いなと頭を撫でると、「子供扱いしないで!」と言うが、少し嬉しそうにする、


思春期とはいえ、相手は子供だ。夏休みともなればどこかへ連れて行ってやらねばならないと思うが、毎年俺の実家へ行くと言い張る。


なのでGWはどこかへ行こうと思い、北海道旅行を勝手に予約したら、「余計なお金使って」と文句言いながらも嬉しそうにしてた。


…君、まだ中学生なんだぜ?

おふくろみたいな反応止めよう?


旅行を名目に新しい服を買うように言っておいた。頼ちゃんは背が止まりつつあり、今163cmだ。芸能界から目をつけられる程の美人なので、何を着ても可愛い。でもいつも頼ちゃんはあまり服を買わない。今回は上下各々3枚ずつ買うように指示した。


そしたらまぁ遠くのしまむらまで行って買うのが頼ちゃんらしいが、気に入ったのがあったらしく、俺はファッションショーに付き合わされた。


可愛いなと見ていたら、また「せいちゃん、大好き」が来た。…だからそれ、止めよう?


旅行先ではシングルルーム2室取った。さすがに中学生の女の子と同室は良くないだろう。しかし「ツインの方が経済的なのに」とぶつくさ言っていた。


ジンギスカンを食べ、北大や時計台、テレビ塔を見て…その間頼ちゃんは俺に腕組みしてきた。


「頼ちゃん、もう中学生だからこういうのやめようよ?」

「どうして?」

「いや、まぁいいけど… さ」

「じゃ、いいよね」


女の子だから友達と距離が近いのと変わらないのかもしれない。しかし…頼ちゃん、君…胸が俺の腕に当たるんだよ?


この旅行は楽しかったけど、頼ちゃんが成長してんだな、と思わざるを得ないものでもあった。


その年の冬、頼ちゃんは珍しくインフルエンザに罹患した。


「移しちゃ嫌だから部屋へ来ないで。寝てれば治るから、せいちゃんは会社へ行ってきて」


と部屋に入らせない。しかし俺は有給休暇を取り、病院へ連れていこうとした。病院を拒否する…というより俺との接触を拒否する。


仕方ない。俺は付け焼き刃の知識だが応戦した。


「インフルエンザの感染経路は"飛沫感染"と"接触感染"だ。お互いマスクをして接して、咳するときは横を向けば飛沫感染は防げる。接触感染はウイルスがついた手とかでドアノブに触り、俺がそのドアノブとかを触った手で粘膜を触ると罹患する。頼ちゃんはもう大きいから移しはしない!」


とマスクをして無理矢理部屋へ入った。


「せいちゃん、移るから来ないで」

「病院行くぞ」

「仕事が…」

「昨日頼ちゃんがしんどいと連絡くれたからパソコン持って帰ってる。家でやる」


熱は39.7℃まで上がっていた。病院へ連れていき、インフルエンザ判定されたので、薬を貰って帰宅した。 解熱まで1日半かかったが、それまで高熱が続いた。


「せいちゃん、ごめんね」

「子供は気にすんな」

「子供じゃないもん」

「はいはい」


それでも横にいて手を握るとぎゅっと手を握り返して安心して寝てた。


頼ちゃんの中学生活は実に地味だったと思う。真面目に勉強し、文化系のクラブ活動をする。家のことをする。反抗期など全くなかった。大丈夫なのかと心配したが、反抗する要素がないと本人が言い切ったのでなんか変な感じだった。


こんな超のつく優等生だったから、先生からも信頼され、でも堅物という訳ではなかったからいじめもなく、頼ちゃんは公立のトップ高校へすんなり合格して中学生活を終えた。


高校生活も通う場所や教わる内容が変わり、友達が変わっただけで、頼ちゃんの生活は変わらない。


朝早く起きて弁当を作る。俺に弁当を持たせて俺を見送ると、自分の支度をして登校する。


頼ちゃんも大きくなったので、俺はそこそこ残業するが、帰ると頼ちゃんも勉強していて、晩御飯を温めて俺に出してくれる。


頼ちゃんが先に寝てないところが変わった…といえるかもしれない。

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