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頼子と俺  作者: 由起
3/5

美少女

完全に生活は妻がいるような地味なものになってはや2年弱…頼ちゃんは小6になった。俺は上司の計らいで転勤の無い部署に異動になった。


仕事は一から覚え直しだが、決して出世コースから外れた訳ではない。専門職になるという感じだ。なので家で勉強するのが必須になったがありがたかった。


「せいちゃん…あのね、昨日美嘉ちゃんと学校の帰りに歩いてたらこんなの貰ったの」


見せられたのは俺でも知ってる大手芸能プロダクションの人の名刺だった。


「何、これ?」

「うちの事務所に来ないかって言われた」

「で、どうしたの?」

「断ったよ。だって芸能界に興味無いもん。でも今日も帰り道に同じ人に声かけられたの。うちの事務所にって。明日も声かけられるのかな…どうしよう」


俺は頼ちゃんをしげしげと見た。


綺麗な卵形の色白の顔に少し明るめの茶色い大きな瞳。二重がくっきりとしている。鼻筋も通っていて、髪は真っ直ぐで艶々したストレートで、ずばり頼ちゃんは美少女だ。しかも頭もいいから知的に見える。


芸能プロダクションの目も節穴じゃない。


「明日俺が事務所に電話してやるから、安心しろ」

「ほんと?」

「うん、保護者から連絡がいったら大丈夫だろ」

「良かった!」


ホッとしてにこっと微笑む頼ちゃんは確かに美少女だ。まぁテレビに出てくるアイドルも真っ青だろうと贔屓目で見てしまうが、でも綺麗なのは事実だ。


「頼ちゃんは将来何になりたいの?」

「…秘密」

「芸能人ではない訳だな?」

「うん!」


翌日芸能プロダクションの名刺の男へ電話をした。

頼ちゃんは絶対にスターになれるから、是非うちの芸能プロダクションへ!と散々誘われたが、彼女が芸能界に全く興味無いので、と頑として断った。


「彼女の可能性を潰したら勿体ないですよ」

と言われたが、本人が興味無いと言い切るからには俺が折れてはいけない。


「昨日もあなたが声を掛けられたので、本人は不安がっています。今後お話は私の方へお願いします」と言っておいた。


その日は残業したが頼ちゃんが寝る直前に家に着いた。


「お帰りなさい!今日電話してくれたの?」

「うん、断っておいた。そいつ、来た?」

「ううん、今日は来なかったの!だからせいちゃんが電話してくれたのかな、と思って」

「良かった」

「ありがとう、せいちゃん!」


にっこり微笑む頼ちゃんは確かに美少女だ。

きっとロリコンのヤツならたまらないだろうな…俺は大人の女性の方がいいけどね。


ところがこの話はこれで終わりではなかった。頼ちゃんの友達が頼ちゃんをオーディションに応募してしまったのだ。


子供のしたことだから、友達を責めることは出来ない。単純に頼ちゃんならいいところまでいけると思っただけだったからだ。


当然頼ちゃんは「興味ない」と言っていたが、突然家に実行委員会から連絡が来た。どうやら頼ちゃんが優勝候補らしく、是非出て欲しいと懇願されたのだ。


「絶対嫌!」


当然本人が嫌がるから断ったが、今度はうちにまで押し掛けてきた。平日だったから家に居たのは頼ちゃんだけで、頼ちゃんは半泣きで俺の携帯に電話してきた。


慌てて仕事の段取りだけしてパソコンを持って家に帰った。


「せいちゃん…」


俺が帰ると頼ちゃんが俺にしがみついてきた。実行委員会らしき男2人と芸能プロダクションらしき男2人が玄関に居て、頼ちゃんをかなり強引に説得していたのだ。


気の強い頼ちゃんだからなんとか踏みとどまったんだと思う。


「お帰りください。そのオーディションは頼子が申し込んだ訳ではありません。本人は別の進路を希望していますので、参加はお断り致します」


俺は彼らからすれば若造だろう。しかし俺は頼ちゃんの保護者だ。頑として言い張った。


「あまりしつこく玄関におられるようでしたら警察へ通報させていただきます」


と言うと、今日のところは…と帰って行った。

オーディションまで3日、きっと明日も来るだろう。

仕方ないので駅前のビジネスホテルを押さえて泊まることにした。


でも…空きがなくてシングル1室しか取れなかった。学校が終わると頼ちゃんはそこで過ごし、夜俺が会社帰りに迎えに行く。出来るだけ家でやれる仕事は持ち帰り、早く頼ちゃんを迎えに行けるようにした。ホテルのフロントには事情を話し、配慮して貰った。


しかし奴らはやりやがった。


頼ちゃんの隠し撮り写真で"こんな美少女がいる"とWebニュースに載せたのだ。美少女がいるとして全国区で有名にし、オーディションに参加しなければならないように画策しやがった。


学校へ写真を撮りにマスコミが来る。登下校も当然マークされる。


仕事に行ったら頼ちゃんを守れなくなる…。しかし仕事はピークだ。休めない。


「おふくろ…頼む、助けてくれ」

頼ちゃんをおふくろに託し、頼ちゃんに学校を休ませて実家へ隔離した。


オーディションは日曜日だ。

オーディションが終わった日曜日の夜に頼ちゃんを迎えに実家へ帰った。


「すごくしっかり者のいい子だねぇ」


おふくろは惚れ惚れとしている。

一緒にご飯を作ったり、お風呂へ入ったり、おふくろは相当楽しんだようだ。


「頼ちゃん、すまん!迎えに来た」

「せいちゃん!」


ぎゅっと俺に抱きつく。いや、頼ちゃん…もう大きいから、それは止めよう…?


「せいちゃん、ご飯食べた?」

「いや、まだ…」

「じゃあ用意するね。おばさん、残ったおかず使ってもいいですか?」

「いいよー。好きにして」

「はい!」


晩御飯のおかずの残り物だけだと俺には少ないからとリメイクして晩御飯を作る。本当に小学生なのだろうか。


「はい、せいちゃん。せいちゃんの苦手な人参が入ってるけど残しちゃだめよ」

「…はい」


いつもの頼ちゃんの味だ。


暫くマスコミ対応が大変だったが、オーディションが終わったこともあり、1週間もしたら収束した。

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