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2話:恋愛相談所とはなんだ?

翌日、うちのクラスはお祭り騒ぎだった。

教室の中心には山田と綾瀬の2人が仲睦まじくおしゃべりをしていた。

もともと関わりのなかった2人が、急にこんな状態だったことに、周囲は受け入れられなかったようだ。


その2人を取り囲むように、クラスの周辺部分が混雑していた。

俺は教室の窓際にある自分の机に座ると、後ろから声をかけられた。

「赤井…これは、どういうことなんだ」

「まぁ...そういうことなんじゃないのか?」

「マジかーーーー!!!!!僕の綾瀬たんがーーー!!!」

芳賀健。端的にいうとメガネ属性の優男である。見た目通りの知性の持ち主だが口調はそれと反して常にハイテンション。

メガネはクールキャラという固定概念を崩してくれる、数少ないキャラクターだ。

「おかしくないか!?確か綾瀬たんって3年生と付き合っていたんじゃないの?」


「先々週別れたみたいだよ。先輩が受験に集中したいって紫音を振ったみたい」

俺の前の席である、黄清月コウ・セイゲツが後ろを振り返って代わりに答える。彼女は帰化した中国人だが、中国語もほとんど忘れたという中国人だ。ウェーブのかかった黒髪と鋭い目つきは、Sっ気なオーラを作り上げており、ファンを何人か有するといった人気である。確かに綾瀬たんほどの美女とは言わないが、可愛いといえば可愛い。


「タイミングよすぎね!!?」

「だよねー」

黄は頬をつきながら、そういう。確かに少しタイミングが良い。

そういえば昨日の告白現場では、山田は『3回デートした』と言っていた。付き合ってもいないのに1週間に3回というのは難しい。別れた瞬間からアプローチを始めなければ難しい、あるいはそれ以前から…なのか。


「ちなみに俺は、その告白の現場を見てしまった」

「マジで?」

俺の得意気な言葉に反応した黄は、目を細め、ニヤリとした。

「あぁ、放課後教室で告白してた」

「セリフは?」

「君と一緒いたとき、本当に楽しくて、これからも一緒にいたい…と」

俺は声を山田らしく、少し低めにしてセリフを真似た。

「...ぶははははははは、なーにそれ、あの顔で似合わないんだけど」

黄は腹を抱えながら机をバンバンと叩く。

「でもさ…なんか、少しイケメンになってないか?」

芳賀は昔スマホで撮ったクラスの集合写真で、山田をズームしたものを俺たちに見せる。

黄はそれを受け取ると、教室にいる山田と見比べるが、

「えー女の私がわからないから変わってないよ」

と、一蹴。

「お前、女という自覚あったのか…」

「失礼ね!!」

「ぶほっおお」

余計なことを言った俺も、拳で一蹴された。


「でもこれってさ、たぶん学校専用恋愛サイトのせいだと思うんだよ」

拳を引っ込めた黄は切り出す。恋愛サイト…だと?出会い系みたいなものか。


「なんだそれ?」

「知らないの?女子の間じゃみんな噂してるよ。うちの学校専門の恋愛相談所があるって」


「ほんとか!?。じゃあ早速僕も相談してもら…」

「でも恋愛相談所は紹介制みたいで、めっちゃお金取るって話だよ」

勢いつく芳賀を黄はへし折る。


「綾瀬たんと付き合えるならいくらでも払う!!!!」

「場合によっちゃ100万とか超えるって」

「100万!?」

俺と芳賀はハモって反応してしまった。

100万とか…学生が払える金額を超えている。ただの恋愛相談所じゃなさそうだ。


「恋愛相談所って何してくれるんだ?100万となると、ただのアドバイスだけじゃないだろ」

俺は少し興味を持って聞いてみる。


「うん、アドバイスするだけじゃなくて、実際にいろいろしてくれるみたいよ。噂によると恋人を作れるようにと身だしなみとか性格の矯正までやってくれるって」

身だしなみや性格の矯正…確かに最近の山田の変わりようは、それをほのめかすものだった。


「しかも追加料金払えば、狙う相手が仮に彼氏持ちでも、別れさせてくれるんだって」

恋愛相談所の域を超えていた。恋のキューピットというより悪魔に近いなこれは。


「黄さん詳しすぎない?使ったことあるんじゃないの?」

芳賀ニヤニヤしながら黄さんをおちょくった。

「はあ!?ないわよ!!うちの親厳しいからそんなことにお金出してくれるわけないでしょ!」

「え、そういう問題?」


ちらっと綾瀬と山田を見てみる。

2人はただ雑談しているだけだが、本当に楽しそうだった。

特に綾瀬は表情をころころと変えて無邪気に笑っており、

この数週間の中でも一番いい顔をしていると思う。

3年生の誰かと付き合っていたと聞いた時でもこんな顔をしていなかった。


この笑顔を作ったのが自分じゃなくて山田ということ、

そしてその笑顔を向けられているのもまた山田ということが、

俺の心を締め付けていた。


「あんれ〜、赤井くん、寂しい目をしてますね〜」

黄が俺の頬をツンツンしながら言ってくる。

「うるせーよ」

「まぁね〜。一時期は綾瀬はいつか俺が落としてみせるとか豪語していたんだもの。仕方ないわ」

「くっ...」

昔、といっても4月の始業式が入ってだが、黄と恋バナをしたことがあった。ちょうどその頃俺は綾瀬に惚れたてで、少し熱くなっていた。たぶん黄が言っているようなふざけたセリフも言ったのだろう。覚えてないが。

「諦めなさいよ。自分で動かなかったあなたが負けよ。綾瀬が3年生と付き合っていたときでもしてなかったあんなにいい笑顔を崩すなんてあなたになんかできないわ」

「ぐぬぬ...」

確かに、山田は自分から行動して、綾瀬に告白した。そしてそれがうまくいった...それだけの話だ。


「失恋してるねー赤井くん〜♪」

芳賀は体をくねくねと動かしていう。

「お前が言うな」


失恋したのは事実だ。でもここでとどまっても仕方ない。

思ったより自分も落ち込んでいなかったので、次の恋を見つけるのも、きっとすぐだろう。

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