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ハッピートリガー!  作者: YuTalos
第1章
9/33

Hit.8 サクラと駆ける戦場


「いや〜、ゴメンねレイジくん。サポートするって言ってたのに、はぐれちゃって」


 マカロと別れセーフティエリアの自分のテーブルに戻ってくると、先にフィールドから出ていたサクラが拝むように手を合わせて待っていた。


「私、あれから結構前線をあちこち移動してレイジくんを探してたんだけど、見つからなくて……。どの辺で戦ってたの?」

「サクラさんがやられた後に俺もすぐやられちゃったんですよ。その後復活場所に戻った時に一緒になった人と、バスを占拠してそのままバスの中にいましたよ」


 弾切れしちゃって大変でしたよ。と続けるレイジを、サクラやアケミが驚いたような目で見やる。


「最後10人くらいから撃ちまくられてたあのバスの中にいたのか!? バリケード押し込んでたアタシらなんて目じゃないくらいの大活躍してんじゃねぇか。こりゃあトンデモない新人(ニュービー)だな。裏面はサクラがサポートしてもらった方がいいいんじゃないか?」

「うぅ。啖呵切っておいて活躍できなかった私の罪は重い……。いやいや、裏面では頑張るし!」


 落ち込んでいたかと思えば、即座に立ち直るサクラ。

 前回のゲームで活躍できなくても、次のゲームでまた頑張ればいい。

そんな楽しみ方もまたサバイバルゲームの醍醐味なのだと、サクラは行動で示してくれていた。


「ただいまのゲームの結果を発表します。赤チーム、カウント68! 黄色チーム、カウント72! よって、黄色チームの勝利です!」


 セーフティエリアに運営スタッフの声が響き渡る。僅差ではあったが、黄色チームが勝利したようだ。

 レイジたちがいる方のセーフティエリアは赤チームだ。なので、今回のゲームでは負けたことになる。


 周囲を見回せば、悔しそうにしているチームメンバーもちらほらと居るが、多くはあまり気にしていないようだ。そのことをアケミに聞いてみると、多くのサバゲーマーは勝ち負けにはそれほど拘らないとのことだった。


「今日の最初のゲームってのもあるだろうな。最初はチームバランスに偏りがないかを調べる意味合いが強いし、フルオートでバカスカ撃てれば気持ちいいし」


 もちろん、みんな勝つつもりで戦ってはいるけどな。とアケミは続けた。



 さて、5分ほどの小休憩を挟み、同じルールでスタート地点を入れ替えて戦う通称『裏面』が開始される。

 今回もレイジのサポートにはサクラが付くようだ。

 サクラは前回活躍出来なかった分を取り返そうと、鼻息荒くフィールドを見回している。


「今回は私が後ろを付いてくから、レイジくんは好きなように動いてくれればいいよ」

「わかりました。動き方のコツとかはありますか?」

「裏面だと、自分がさっき気付かず撃たれたところとか、見落とした場所に行くといいよ。自分が気付かなかったってことは、相手にも気付かれず倒せる確率が高いはずだからね」

「それじゃあ、最初にサクラさんが撃たれた場所に行ってみますね」


 うぐっ、とサクラが呻く。やはり自分だけ先に撃たれたことを結構気にしていたようだ。


「いいもん。そんなこと言うレイジくんは後ろからカレンちゃんにフレンドリーファイヤしてもらっちゃうもん!」

「……私は自分からフレンドリーファイヤなんてしない。それはそうとサクラ。屈んで走る時には尻に気をつけた方がいい」

「くそぅこの合法ロリ容赦がない!」


 大袈裟に泣き崩れる真似をするサクラを、青筋を浮かべたカレンが見下ろす。


「サクラ。その言葉は禁句。私は優雅なレディ」


 我々の業界ではむしろご褒美です!

 そう言いたげなたくさんのギャラリーがいたが、あえて口に出せる勇者は流石に現れなかった。


 復活地点に到着し、ゲーム開始の時を待つ。

 レイジとサクラは前線へ、こころとカレンは前回同様側面攻撃、アケミたちはバスを占拠するのが今回の作戦のようだ。


「フィールドの皆さま。ゴーグルチェックはお済みでしょうか? それではフルオート復活無制限、カウンター戦の裏面を開始します! 3……2……1……スタートッ!」

「行くぞ野郎共ッ! バスに乗り込めぇ!」


 開始の合図と共に、ニシノたち4人を引き連れてアケミが疾駆する。3キロ超、1メートル近い長さのライフルを抱えているにも関わらず、かなりの健脚ぶりだ。

 その後ろをニシノ、アズマ、キタヤマ、ナンジョウの4人が追いかける。

 4人とも前回アケミに引き摺り回された後遺症なのだろうか。ゲーム開始直後なのに、どことなく疲れてみえた。


「……行こう、こころ。バスに入ったアケミさんたちを狙う敵を叩く」

「了解です、カレン先輩。露払いはお任せを。……こんなセリフ言ってみたかったんですぅ」


 Kar98kを携えたカレンと、若干変なスイッチの入ってしまったこころがバリケードの隙間へと消えていく。何も言うまい。ロールプレイもまた、サバゲーの楽しみ方の1つなのだから。


「俺たちも行きましょう、サクラさん」

「僅か2戦目にしてこの行動力。成長したねぇレイジくん。君をサバゲーに誘った甲斐があったよ」


 感慨深げに呟くサクラと共に、レイジも前線へと走る。

 アケミたちが向かったバス付近では既に戦闘が始まっており、激戦を表すかのように複数の銃声とヒットコールが入り乱れていた。


 バス周辺は大きく迂回し、敵陣地の奥へと隠れながら進んでいく2人。その様子はさながら、小さなスニーキングミッションを彷彿とさせた。


 いくつかのバリケード抜けたところで、先行するレイジが敵チームの内の1人とばったり鉢合わせする。

 急いで銃を構える両者だったが、それよりも早く後方にいるサクラの8○式から放たれた弾が敵の腹部を撃ち抜いた。


「レイジくん気をつけて!」

「すみません、サクラさん!」

「おっけい! 今のヒットコールで位置もバレちゃったし、一気に奥まで切り込むよ! 目に付いた敵に片っ端から撃ち込んで撹乱だ!」

「了解!」


 サクラの機転により、作戦を急遽変更する。

 裏に回り込んでこっそりと襲うのでは無く、大胆に撃ちまくって気を引き敵全体を撹乱するのだ。

 スタートしてからフィールドの左端を進んで来たこともあり、銃声は右やや後方からが最も大きく聞こえる。

 2人はゴーグル越しに一度頷き合い、進路変更。激戦区へと足を向けるのだった。


 バリケードに身を隠すこともせず、小走りでフィールドを走り抜けるレイジとサクラ。

 先行するレイジが何度か敵に見付かるが、慌てて振り向いて銃を向ける頃には既にフルオートの斉射を浴びてハチの巣だ。


「サクラさん! 前方にバス見えました!」

「中にいるチームの色はっ!?」

「遠過ぎてわかりません!」

「だよねっ! 私にも見えない!」


 味方が占拠してることを祈りながら、2人は周囲のバリケードへと鋭い視線を飛ばす。

 しかし、いくら目を凝らしてもバス目掛けて放たれる弾は見当たらず、バスに当たって弾けるBB弾の音も聞こえない。そう、()()()()()()


 気付いた時にはもうバスは目と鼻の先で。

 バスの中で狙いを定める敵と視線を交わし。

 苦し紛れに撃った弾は窓ガラスに弾かれる。


 お返しとばかりに車内から降り注いだBB弾の雨によって、2人は仲良くヒットコールを叫ぶのだった。



 その後復活場所から前線に戻った2人だったが、残り時間が少なかったこともあり、散発的にバリケード越しの撃ち合いを行っただけで10分間のゲームは終了となった。


「今回は結構いい連携取れてたよね、私たち。ヒットもだいぶ取れたし、勝ててるといいなぁ」

「あの時バスの中にいるのが敵だと分かってたら、前後から挟撃出来て奪えたかもしれないですよね。悔しいです」


 セーフティエリアへと戻る道すがら、2人で今回のゲームの感想を言い合う。


「最初に会った時はもっと大人しそうな雰囲気だったけど、レイジくんってば意外と大胆な子だったんだね。お姉さん思わずドキドキしちゃった……」

「脇を抜けていく弾に俺はヒヤヒヤでしたよ……」


 頰を赤らめてうっとりするサクラだが、内容はサバゲーの戦い方のことだ。誤解を招いてはいけない。

 レイジはまだ知らなかったが、サクラの戦い方は無駄のない精密射撃だ。

 足音や影から敵の位置を予測し、素早く狙い、的確にヒットを取る。

 今回はレイジが先行していたことが、サクラの得意な戦い方に大きく貢献していたのである。

 レイジが怖気付かず大胆に走り回る姿は、思いの外サクラをときめかせていたのだ。主に囮として、ではあったが。


 セーフティエリアに戻っても、次はこうしよう。あそこに行こうと話題が尽きることは無い。

 カレンやこころ、アケミたちが戻ればどこでどんな戦い方をしていたのかをお互いに報告し合うため、話は更に盛り上がるのだった。


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