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ハッピートリガー!  作者: YuTalos
第2章
26/33

Hit.24 青空を想う

 

 両手いっぱいに幾つもの大きな買い物袋を抱えて、5人はガンショップを後にした。

 ガンショップを訪れたのはまだ朝と言っていい時間帯だったはずだが、既に太陽は昇りきり、雲ひとつない青空が広がっている。

 サクラなどは空を見上げて「いい天気だなー」なんて呟いて太陽の眩しさに目を細めていた。


 レイジはアケミの、こころはカレンの車のトランクにそれぞれ今日買い漁った品々を楽しそうに詰め込んでいる。

 早く開けたくて仕方がないのだろう。ビニール袋からゴーグルか何かの入った箱を取り出してうっとりと眺めるこころを、カレンが窘めていた。


 そんな光景を微笑ましそうに眺めながら、アケミもサクラの横で空を見上げる。

 無論、レイジの手伝いなどはしていない。自分の装備は自分で管理する。レイジとこころに告げられた、副部長からのお達しだ。


「青空、か。確かにいい青空だなぁ。次のサバゲーも、こんな日になるといいな」

「お? アケミさん次のサバゲーの計画ですかい?」

「……アケミさん。次は森林フィールドに行きたい」


 アケミの独り言を耳ざとく聞きつけたサクラとカレンが、アケミへと擦り寄る。

 アケミは両腕に絡みついてきた後輩たちを腕の一振りで振り払うと、お返しとばかりに2人の肩に腕を回して万力のように締め上げる。


「アケミさん、極まってる極まってる! ギブギブギブ!」

「うわっはは。アタシに色目を使おうなんて10年早いわ。どうしてもって言うんならアタシ好みの格好でもしてくるんだな!」

「ん。理解した……」

「おっと、口が滑ったか。まぁ、サクラよりかはカレンの方がまだ望みはあるか? その仏頂面を何とかすればの話だがな」


 アケミの腕から逃れようともがくサクラと、困り顔で固まるカレンを愛でながら(物理)、アケミはレイジとこころを見やった。


「装備を一新したアイツらが、心の底から楽しめるフィールドに連れて行くからさ……。アタシらも負けないくらい楽しもうな」


 思わず漏れ出たその言葉は、2人に向けてか独り言か。一瞬だけきょとんとしたサクラとカレンだったが、アケミに釣られて笑みを浮かべるのだった。


「だぁっ! 暑いから引き剥がしたのに、くっ付いてくんなっての!」

「アケミさんが羽交い締めにしたんじゃないですか。冤罪を主張します!」

「……サクラ。これは照れ隠し」

「お、ま、え、ら、なぁっ!」


 アケミの羞恥心が今まさに爆発しようとする寸前、車のトランクに購入した装備品を積み終えたレイジとこころが戻ってきた。

 立ち上がって叫び出そうとするアケミに2人は何事かと首を傾げたが、アケミは聞くなとばかりにフンと鼻を1つ鳴らして腰を下ろす。


「アケミさん、荷物の積み込み終わりました」

「おう。駅までは運んでやるから、そこからはサクラに手伝ってもらえ」


 車のキーを受け取ると、アケミは先ほどまでの痴態を誤魔化すかのように素知らぬ顔でレイジにそう告げた。


「私も終わりました。これからどうしますか? 何も無ければちょうどお昼時ですし、みんなでお昼ご飯でも食べません?」

「おっ。こころちゃんナイスアイディア! せっかくみんな迷彩服じゃない格好してるし、たまには女子力も上げないとね」


 気を利かせたこころの提案にサクラとカレンが快諾する。反対に、アケミの表情は渋い。1人だけ上下共にジャージ姿とあっては、難色を示すのも無理はなかった。


「アタシはジャージだっての。ったく、こんなことならもう少しちゃんとした服でも着てくるんだったよ」

「大丈夫ですよアケミさん。俺だっていつものパーカーですし、仲間はいます」

「あ゛ぁ!? オマエみたいなオンナゴコロの分からねぇ朴念仁と一緒にすんじゃねぇ! それとも何か?アタシは女らしく無いってかー!?」

「アケミさんお、落ち着いて…。レイジくんもほら! 早く謝って」


 憤慨するアケミをどうにかサクラが収め、レイジも平謝りすることでなんとかアケミは機嫌を直す。

 元はと言えば夜更かししてだらしのない格好で来たアケミの自業自得ではあるのだが、それを指摘する者は流石にいなかった。



「そういえば、アタシは次のサバゲーの予定の話をしようと思ってたんだよな」


 機嫌を直したアケミが車に乗り込もうとドアノブに手を伸ばして、はたと思い出す。

 レイジたち他のメンバーは既に車に乗り終えてしまっていたため、その呟きに反応する者は誰もいない。

 アケミはしばし青空を見上げると、何事かを思い付いたかのようにニヤリと唇を釣り上げた。


「よし、決めた。次のサバゲーは、“青空ハッスル”に行こう」


 どんなフィールドかは、昼食の時にでもレイジとこころに話してやろう。そんなことを考えながら、アケミは鼻歌交じりに車へと乗り込むのだった。



これにて第2章 軍拡編は終了です。章としては第1章より短めですが、レイジとこころの銃と装備選びが目的だったため、コンパクトにまとめました。


また少しの間執筆のための猶予を頂き、年度内には第3章「青空ハッスル」編を投稿したいと思っています。

今後とも、レイジたちの活躍をお楽しみに!


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