プロローグ
この小説は、サバゲーの用語やルール説明、サバゲーを取り巻く環境などの要素を多分に含みます。
サバゲーを知らなくても楽しめ、この物語でサバゲーを知り、やってみたいと思えるような小説を目指しています。
これは、サバイバルゲームがもう少しだけ、人々の生活に浸透した世界の物語。
1人の少年が銃と出会い、仲間との絆を深めていく、そんな物語。
20XX年 4月某日
私立大豊大学 入学式
満開の桜が咲き誇る大学の構内へ、新年度の入学式を終えた新入生達を体育館が吐き出している。
普段はスポーツマンが汗を流す体育館も、今日はすし詰めにされたスーツ姿の新顔達にどことなく辟易しているようだ。
まるで早く出て行けとでも言わんばかりに、出入り口から黒い塊を吐き出し続けているのだった。
南部レイジもまた、そんな中の1人だった。
身長170センチ程度、特段筋肉質というわけでもなく、太っているというわけでもない。所謂中肉中背という表現がぴったりの体格を、今はおろし立てのスーツで包み込んでいる。
大学への入学を機に家を出て、大学の近くに一人暮らし。
高校時代は帰宅部で、とりたてて目立つことも無く、よく言えば代わり映えのしない、悪く言えば陰鬱とした日々を送っていた。
正直に言って、大学生デビューでちょっと何か新しいことを始めて見たいお年頃だった。いや、かなり。
退屈だったガイダンスや入学式もやっと終わり、明日からの楽しい学生生活への期待でレイジの胸が期待に踊る。
体育館の外から聞こえてくる活気のある声に、自然と足が進んでいく。
そんなレイジが体育館から出て目にしたのは、新入生を覆い尽くさんとする無数の部活動・サークルの勧誘だった。
「野球部員募集中! 高校球児よ、あの時の熱意をもう一度!!」
「テニスサークルに入ってみないか!? 未経験者大歓迎!わいわい楽しめる人歓迎中だよ!」
「漫研はこっちだ! 入るかどうかはウチの秘蔵書を見てからでも遅くは無いぞ!!」
どの部活動・サークルも新入生を獲得しようと躍起になっている。
その姿はまるで、獲物を狙う肉食獣のようだ。
肉食獣にしては自己主張が激しいなぁ、とレイジは独り言ちる。
新しいことにチャレンジはしてみたいが、ガッチガチの体育会系は今から始めるにはだいぶ厳しい。
ちょいとナンパなサークルも、レイジとしてはあまり魅力が感じられないでいた。
きょろきょろと辺りを見回しながら人混みを掻き分けていく。
強引な勧誘もいくつかはあったが、曖昧な笑顔でごまかす。
そうして構内を幾ばくか歩いていくと、サークル勧誘の輪を少し遠巻きに見ている数人のグループにふと目が止まった。
そのグループは、メンバー全員が迷彩服を着込んでいた。
ラグビー部のゴツい肩パッド、テニスサークルのユニフォーム、登山同好会の暑そうな登山服のなかでも、その緑の迷彩服はとりわけ異彩を放っていた。
大学の構内に迷彩服というある種異様な出で立ちのグループに、レイジは思わず立ち止まってまじまじと見つめてしまった。
そうしていつしか、そのグループの1人と視線が交差する。
「あっ……」
溢れた呟きはレイジのものか。それとも。
目が合った瞬間、迷彩服がものっすごい勢いで走ってきた。
目線を外すヒマも無く、瞬きしたら目の前にいた。
「サバイバルゲーム、やりませんか!? 」
それが、レイジとサバイバルゲームとの出会いだった。