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6:いい女に盗まれた!!前編

「おらよ!!パンケーキ10人前!!」


「皿が足りません!!!!」


「食ったやつの回収しろ!!!」


「はちみつがもうないです!!」


「ああん????贅沢言うな!!!!」


「小麦粉到着しました!!」


「てか・・・・・・」


どうしてこうなった?


話は2日前にさかのぼる。


俺たちはセントラル、つまり国王のいる首都に向かっていた。


王国は一つの首都と、各方角に位置する4つの大きな町、その街を中心として広がる幾つかの小規模な町や村からなる。


俺たちの住んでいた村は最も帝国に近かった西の町、ウエストに近い。


馬で1週間ほどのところにあるウエストを最初の食料調達地点として選んだ俺たちは、街道沿いに馬を走らせていた。


ロスが手を上げたので、停止する。そろそろ休憩の時間のようだ。


「一日目にしちゃ順調に進んでいるよ。まぁ、順調じゃなきゃ困るんだけどな」


ロスがリュックから水筒を取り出し、一気に煽る。


「おいおい、そんなに飲むなんて。お代わり貰えるっけ?すいません!!・・・・残念ながらここに店員はいないらしいぜ?」


「はぁ、悪いな。騎士団の癖だ。これといって遠征もやらないから、慣れてないんだよ」


「なら覚えとけ、水筒の水は滅茶苦茶大事なんだぜ」


俺はリュックから取り出した飴玉をなめた。


「おいおい!!!何やってんだよ!」


「なにって、おやつだけど?」


「へー」


「なんだよ?」


「いや・・・・なんか、言おうと思ったんだけど、なにも注意できなかった。・・・・その飴玉滅茶苦茶重かったりしない?」


ロスが水筒を俺に渡す。


一口飲むと、水はもうほとんど残っていなかった。


「もうないな。汲まなきゃ」


俺は近くの川を探しに行くことにした。


「おい、飲んだのは俺だぜ?俺が行ってくる」


「元冒険者だからな、慣れてるんだよ」


俺は弓を持ち、森に入っていった。うっそうとした森だが、街道沿いの森はあまり魔物も出ない。定期的に町の依頼で冒険者が討伐しているからだ。


俺もなりたての頃はよくそのような依頼を受けていた。


しばらく歩いていると、水の流れる音が聞こえた。


そちらに向かって進んでいくと、魔物の鳴き声が聞こえたので、木の裏に隠れながら近づくと、二体のオークが女を捕まえているところだった。


グフグフとなくオークに嫌悪を感じた俺は弓を引き絞り、オークに向かって放った、


ヒュッと風を切る音とともに一体のオークが頭に矢を受け倒れ、もう一体がこちらに気が付き、岩陰に隠れた。


「チッ、仲間でも呼ばれると面倒だな」


弓の弦を外し、崖を降りて、走って小川を渡るとオークが岩から出でて刀を振り上げた。

解体包丁で刀を受け、背負った矢筒から矢を取り出し、腕に突き刺すと悲鳴を上げて後ずさったので、すぐに解体包丁を振るい、頭を切り落とした


「大丈夫か?」


女の顔はひどく青ざめ、オークと俺を交互に見ていた。


「安心してくれ、俺は怪しいものじゃない」


「・・・・ええ、助かったわ。あの・・・・もしよければこの縄も切ってくれない?」


女の腕を見ると、荒縄で縛られているようだった。


包丁で切ってやると、女は立ち上がり、腕をさすった。。


「君は?」


「冒険者のリリーよ。あんたは?」


「・・・解体屋のゼロだ」


「解体屋?あの剣筋で?」


「元冒険者だよ」


「ふーん、でも強いみたいね」


オークは稀にひもで女を縛り、監禁することがあると聞く。だが、あの縛り方は・・・・


リリーが腕に胸を当てる。


「なっ!」


「ねぇ、あたしを次の町まで連れて行ってくれない?」


「よせよ!!」


「だめ?」


リリーが上目遣いでこちらを見つける


「わかった、別にそれくらいはいいけど、くっつくな」


「硬いこといわないでよ!さっ!じゃあ、行きましょ!」


リリーは俺の手を引き、街道に向かって歩き出した。


暫くし、街道につくとロスは木々を集めている最中のようだった。


「どうして薪を?」


「もう夕方だからな。ここらでいったん野宿だ・・・・って、その女は?」


俺の腕にしがみついている女を見てロスが目をむいた。


「リリーよ。オークに襲われているところをダーリンに助けてもらったの」


「だれがダーリンだ!!おい、どうにかしてくれ、こいつ」


「あら、あんたもいい男じゃない」


「黙ってろ!!」


「マジで? 俺は、ロスっていうんだ」


「凄い筋肉・・・・もしかして冒険者?」


「違うよ、俺は騎士だ」


「え?」


リリーがべたべたと張り付いていたロスから身を引く。


「違うよ、こいつは俺らの村の騎士。王都や、町の奴らとは違うよ」


「はぁ、そっか。ねぇ、私も町まで一緒に行ってもいい?」


「もちろん。もちろんいいに決まってるよ!」


その夜、俺はロスとリリーについて話した。


「なぁ、あの女危険だぜ。オークの縛り方にしてはどう見ても複雑で、妙だった。なんか、嫌な予感がする」


「大丈夫だろ。それに、もう寝ちまった。町に連れていくだけだよ」


「大丈夫・・・か。だといいけどな」


ロスが見張りをするというので、俺は焚火のすぐ近くで目をつぶった。



目を覚ますと、すでに日が昇っていた。


その前に交代だったはずだ。ふと、ロスがいた場所を見ると、そこにはぐっすりといびきをかいている奴の姿があった。


「おい、起きろよ!」


ロスをゆするとパチッと目をあけ、飛び起きた。


「何寝てんだよ。見張りだったはずだろ。ったく、そんなんじゃ困るぜ」


すぐに立ち上がり、周りを見渡すロス。


「やられた・・・・・」


「は?」


「荷物も、馬も全部取られた」


「なに?」


持ってきたリュックも、弓も解体包丁もすべてがなくなっていた。


「あのやろう!!!!」


ロスが地面を殴りつけた。


少し時間がたち、俺は昨日のことについて尋ねた。


「で、なにしてたんだよ」


「いや・・・見張りを後退してしばらくたったら、あの女が後退しないかと、で.....」


「何?」


「ああ・・・・」


「後退したのか?見ず知らずの女に?」


「いや・・・うん」


「なんだと??」


「ホントにごめん」


「ふざけるな!おれ達の荷物はどうするんだ?あの中には渡航費も嘆願書も、おれの鎧だってあるんだぞ!・・・・それに俺のポルノも!!」


「ほんとに、ごめん!!!」


「信じられないよ。騎士団がこんな初歩的なミスをするなんて」


「俺もだ」


「俺も??」


「ああ・・・・今から考えると正気の沙汰じゃなかった。多分、薬を盛られた」


「何だって?」


「それか・・・・・・」


「いい女で油断した?」


「う・・・ん」


「馬鹿か!!」


俺とロスはその後、盗まれていないものを確認していた。


「とりあえず、俺が身に着けていた加工用ナイフ、弓、弦は無事だった。取り合えず、街道で何かに襲われても対応できる。お前は?」


「俺の方は全然・・・・おい!」


「何?」


「彼女の写真だ!!」


「だから!!!???」


「おい、いいだろ!!!」


「よくない!!お前のせいですべてなくなったんだぞ!!!最悪だ。俺の親父を取り戻すことだってできなくなるかもしれない」


「あ・・、ごめん。でも、大丈夫だ。必ず捕まえるよ。恐らく、彼女はこの先の村に潜伏していると思う。彼女は丸腰だったし、荷物も持っていなかった。それに、あの縄は自分で出来るやり方じゃない。恐らく、なんらかのトラブルに巻き込まれたんだよ」


「だったら、この先の村にはいないかもしれないだろ。犯罪者だったら」


「そう・・・かな」


「・・・まてよ。いないかもしれないが、身元は分かるかもしれない」


「なんでだ?」


「身のこなしや、状況からみて、彼女が盗賊や冒険者には見えなかった。それなのに、二頭の、それも他人の馬を操って夜のうちに逃げた」


「だから?」


「・・・・、じぶんで少しは考えろよ!!!」



彼女は盗賊や冒険者ではない。森から出てくるとき、彼女は川を渡るときにぬれるかもしれないと、大きめな岩を探したのち、結局一番不効率的なわたり方をしていた。


それに、森の歩き方も素人丸出しだった。


しかし、馬の扱いにたけている。


それはすなわち、徒歩の旅には慣れてはいないが、馬の扱いには慣れているということにならないだろうか。


馬の扱いに慣れている女はそんなにいない。


それも、こんな田舎の道に転がってる可能性があるのは・・・・・くらいだろう。



「次の村に急ぐぞ!!」


「わかった!」


「何が?」


「犯人は泥棒だ!」


「・・・・・お前はあほだ」



俺たちが村につくと、既に暗くなっていた。


「とりあえず、さっさとここの領主様に会いに行こう。取り合えず、ロスが行ってくれるか?」


「なんで俺が?」


「その指輪があるだろ?」


騎士団はそれぞれ、その所属している都市などをしめす指輪を配布する習慣がある。これで彼が、村の正式な騎士であることが証明できるため、ある程度協力要請の助けになる。


「なら、さっさと行こうぜ」


「・・・そういったろ?」


領主の館につき、門番に取次ぎを頼んだが、願いをはねのけられた。


「オイ、ロス。指輪」


「は?俺は結婚してないぞ?・・・あ、騎士団のね」


ロスは再び、門番の方に向き合う。


「これがその証拠だ。騎士団の指輪だぞ」


「騎士団の・・・・、ちょっと待っててください。領主様は就寝なさっていますが、副領主様はまだ執務室にいる時間です。お通ししましょう。」


「ありがとうございます」


俺たちは屋敷に入り、執務室へと案内された。


「失礼します。副領主様にお話があるという方が」


「こんな時間にどなただ?」


「ダリル村の騎士団の方だそうです。なんでも非常に緊急の件だと」


「そうか・・、なら、通してくれ」


「はい」


門番はドアを閉め、俺たちに向き合った。


「じゃあ、許可が出たので・・・」


「ああ」


ノックしようと手を挙げると、ロスがすごい勢いでおれの手をつかんだ。


「なんだよ?」


「入る前に、ノックなんてするな!失礼だろ?」


「・・・すいません、この子の家独自のマナーがあるようで。家庭独自のマナーは作らないほうがいいようですね」


「ははははは!なにいってんだか、なぁ!」


ロスが門番の肩をたたく。


俺と門番は顔を見合わせた。

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