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2:出会ってしまった二人?

木々をなぎ倒しながら、領主の屋敷ほどあろうかという巨大なドラゴンが村の反対側の山に衝撃と轟音を立てて不時着した。


すぐに、騎士団を呼ぶために走り出そうとした。


しかし、その時だった。


あの独特の空気を感じたのは。


「まさか・・・・・・」


おれはなにかが落ちた場所に向かって走り出した。


一時間後、俺はその眼前に見えるものに驚愕した。


「本当に、ブラックドラゴン・・・だったとは」


『人間、しかも、お前、私の呪いを受けているな』


「だれだ!!」


『私だ。お前の目の前にいるだろう』


「目の前って・・・・どこだよ!」


『だから、目の前にいるだろう』


「まさか・・・・?」


『ええ、ブラックドラゴンである私がお前に話しかけているのだ』


目の前で起きたことが信じられなかったが、すぐに、常時持っている加工用のナイフを構えた。


『そんなものを構えるな、どうせ意味はない。それに、お前の呪いを解いてやってもいい』


「本当か?」


『本当だ。だから話を聞くのだ』


「・・・・・わかった」


ブラックドラゴンに話しかけられているということが信じられなかったが、それでも、こうして話している以上、信じるしかないのだろう。


『人間よ、時間がない。手短に話すが、私はブラックドラゴンだ。太古より、私はこの世界を見守ってきた。時には人間を助け、時には殺したが、私の縄張りを犯さない限り、私は人間を殺さなかった。なぜなら、人間は魔物の増えすぎを抑え、大気に魔力が増えすぎるのを抑えていたからだ』


「大気に魔力が増えすぎると問題でもあるのか?」


『魔物が肥大化し、暴走する。だから、私は人間を特別扱いしていたのだ。だが、ある時、あの男がやってきた』


「あの男?」


『名はわからん。だが、その魔術師が若いドラゴンに勝るほどの力を持っていたから、よほど高名な魔術師だろう。その男は、私を殺し、私の核を手に入れようとしていた』


「核?ドラゴンの核を?」


『ああ、そうだ。だが、所詮は人間。倒すのはたやすかった。だが、奴は転移を使用し、私から逃げた』


「なぜ、核を手に入れようとしていたんだ?」


『魔法はもともとドラゴンのものだ。そして魔法の始まりは核を使った魔法だった』


「それを使用しようとした・・・ってことか」


『私に殺されかけ、あいつは別のドラゴンを狙った。レッドドラゴンだ。当然、私のようにレッドドラゴンもたやすく倒すことができただろう、普通ならば』


「どういうことだ?」


『あいつは、人間としてもともと異常だった。しかし、所詮はただの人だったのだ。人である限り、我々ドラゴンには勝てない。だから、あいつは人を捨て、竜人となったのだ』


「竜人?」


『ドラゴンの核を使用した魔法によって、ドラゴンの力を受け継ぐための魔法だ。奴は人でありながら、竜の力をその身に宿した。その時、あの男が使った核がレッドドラゴンの子のものだった』


『当然、レッドドラゴンは怒り狂い、あの男を探した。そして、レッドドラゴンがあの男を見つけたときにはすでに、あの男は数十のドラゴンの核を取り込んでいた』


「だけど、核を持つドラゴンは・・・」


『そうだ。長い時を経て、強力な個体となったものだけだ。だからこそ、恐ろしいことなのだ。そして、冷静さをなくしていたレッドドラゴンは、数多くの竜の力を手にしたあの男には勝てなかった。そして、奴はとうとう、私と同格である、最強種のクリムゾンドラゴンの核さえも取り込み、幾千ものドラゴンを統べ、竜人となった魔術師たちを従え、帝国を作り上げたのだ。』


「そんな話・・・・」


『この王国のある大陸の東はもともと私の縄張り、そして東がクリムゾンドラゴンの縄張りだった。だから、ごく最近までこの国には全く被害が及ばなかったはずだ。西はとっくに支配され、人間は滅んでいる』


「嘘だろ?」


『信じないなら構わないが、影響は表れるはずだ。今日からな」


「今日?」


『奴は私を殺すために再びやってきた。残念ながら、驚くほどに強くなっていたよ。私には勝てないほどに。ドラゴンの核を取り込んでも得られる力は半分にも満たない。一体、どれほどのドラゴンが犠牲になったことか』


「それで、ぼろぼろになって、この山に落ちてきたのか」


『だが、私は運がいい。お前に頼みがある』


「なんだ?」


『呪いが進行するのを止めてやる代わりに、私の子を守ってくれ』


「子?」


『正しくは卵だ。奴に奪われた』


「そんなの・・・・もしかしたらとっくに割られているかも」


『それはない。私の魔力を注がなければ卵が孵化することはない。奴にやられたのは奴の力だけではなく、奴とともにいたクリムゾンドラゴンの子の力も大きい』


「クリムゾンドラゴンの子?」


『竜人はその魔力で核の持ち主の卵をも孵化することができるのだ。そして、ドラゴンは初めて見たものを親として認める』


「なるほど、つまり、奴がブラックドラゴンの卵をも返したら」


『この大陸は支配されるだろうな。人間は死に絶えるだろう』


「そんなの!!」


『いやなら、協力しろ』


「協力?」


『私の力を、核を受け取り、竜人となるのだ』


「竜人に?」


『そうだ。私の核を取り込んだところで、半分も能力を受け継ぐことはできまい。だが、それでも王国のものと協力すれば、奴を倒すことができるかもしれない』


「・・・・・・おれが、竜人になっても、卵は奪還できないかもしれないぞ?」


『問題ない。それならそれでよいのだ。だが、このまま、何もできずに奴の思い通りになるのはごめんだ。もう私にできることは生憎これくらいしかないのでな』


「まぁ・・・・・もらっておけるなら、もらっておこう・・・か」


『感謝する、人間。名を聞いておこう』


「ゼロ、加工屋のゼロだ」


『ゼロか。はははは』


突然笑い出したドラゴンに、無性に腹が立つ。


「人の名になぜそこまで笑えるんだ?」


『はははは、まぁ、お前もそのうちわかるだろう。因果というものは恐ろしい』


「因果?」


『奴の苦しむ顔が目に見えるようだ。お前が大成することができればの話だが、竜生最後に良い未来を夢見ることができた。それでは、私の核を受け取るがいい』


ブラックドラゴンは口から鈍く光る玉を吐き出した。


その玉はこちらに向かって飛び、体に入り込んだ。


「これは?」


『すぐに変化が始まるだろう。呪いもとける。自分の核が、自分の体への呪いを許すはずがないからな』


ドクン 心臓のはねる音とともに、視界がぼやけ、意識が薄れていく。


『では、頼んだぞ! ・・・・・わたしは、永遠の眠りにつくとする』


そんな声が聞こえた気がした。




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