靴で野菜を食むように
命を蔑ろにする話です。苦手な方は読まれぬようご注意ください。
照りつける日差しの中、川沿いの道を歩いていて「シャキリ」という音を聞いた。足元からだ。何かを踏んでしまったらしい。些細な、けれども確かな触覚に私は立ち止った。
視線を落とし、スニーカーを上げてみる。現れたアスファルトの道路の上には、道端から伸びた蔓状の茎が一本横たわっていた。やや太い茎の中ほどに、縦に亀裂が入っている。中から滲んだと思しき汁で青々と変色しているのも分かった。こいつを踏みつぶしたに違いない。束の間、私の思考は停止する。
植物にだって命はある。命を傷つけてはならない。そんな道徳的な考えが浮かぶ一方で、私はもっと別の感想を抱いていた。
サラダを食べるような音だった。靴で茎をつぶす感触だって、歯で野菜を噛みきる感触そっくりだ。
赤い血も流さず、目も口もない生命を相手にしているせいだろう。植物を害した罪悪感は希薄だった。子供のように残酷な爽快感が、足から全身へ駆け巡る。私は、まだ無事だった茎の先端を、足元から摘み取り持ち上げていた。
手にした茎の断面をのぞき込む。厚く堅そうな表皮の内側に、みずみずしく液の滴る組織がある。私の靴底は縦に伸びる表皮繊維の結束を裂き、内部まで無残に破壊したのだろう。道すがら、ただ何気なく。そうして涼しさを覚えている。やっぱり残酷だと思った。
でも、快さに嘘はつけない。
手にした茎の先端を置いて、私は再び歩き出す。道端から伸びる茎を探しながら。シャキリ、シャキリ。スニーカーが茎を食む音が聞こえる。




