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昨日の敵は今日の〇〇??  作者: 蓮野ツバキ
冒険の始まり編
8/22

第8話 昨日の獣耳は今日の宝石??

やっと書けました。

長く空いてしまいすみません。

 喧嘩も終わり、再び廊下を歩いて来たカナタたち一行。

 何やかんやでやっと、大部屋に到着した。

 大部屋と言っても、屋敷のようなこの場所には、他にもいくつか大きな部屋がある。

 教会のような部屋や王様がいそうな部屋、それに倉庫部屋。

 他にもある中で、この大部屋に呼ばれた理由……、それにカナタは気づいていた。

 カナタが時計を見ると、部屋から出て、もう30分も経っている。

 ケルベロスとの遭遇、そして、リアとの喧嘩。

 ただ歩いて来た。……それだけ。

 そんな、地味に長い道のりを戦い抜け、やっとの思いで席に座る。


「さぁて爺さん。ここに呼んだのには、他にも理由があるんだろ。」


 座って間もなく、カナタは話し始める。

 そんなカナタの言動に対し、うろたえながらも、ロージエはゆっくりと聞き返す。


「お見通し……、なのですね。」

「ああ、もちろんだ。何だって、この部屋は『防音効果付き』の部屋なんだろ。」

「流石は『勇者』様。一体いつからお気づきに?」

「扉を閉めた時だよ。急に静かになったからな。」


 カナタは、止めを刺すように答えた。

 その一言が、相手を脅すような、そんな雰囲気を作り出している。

 そんな空気の中でも、空気の読めない『魔王』様が1人、双頭犬ケルベロスに弄ばれている。


「ちょっと、そこのクッキー盗ったわね!」

「ウォン?」

「何?とぼけてるつもり?」

「ウォ?ウォンー?」

「くッ。何なのよこのダメ犬(ケルベロス)!ちょっとカナタ!どうにかしなさいっ!」


 ケルベロスにクッキーを盗まれ、ギャーギャーと叫んでいるリアだ。

 「たとえ、犬が敵でも容赦しないわっ。」と言いながら、追っかけまわしている。

 カナタに助けを求めた事で、2人は会談を中止しざるを得なくなった。


「おいリア!重要な話をしてるんだから、クッキーぐらいで一々騒ぐな!」


 カナタは、走ってきたケルベロスを受け止めながら、リアを怒る。

 しかしリアは「そんな事は分かってるわよ。」と言いながら、カナタとケルベロスにじわじわと迫る。


「いい、カナタ。その子を今すぐに渡しなさい。そうしないと、またさっきみたいになるわよ。」

「何て執念だよ!」


 思わず一本、カナタはツッコミを入れてしまう。

 その隙をついて、リアはケルベロスを奪う。


「へへーんだ。もう逃がさないわよ。」

「ウォンー。」


 ケルベロスが気弱そうに鳴くが、リアは全く反応しない。

 それに対し、リアが本気だと分かったのか、ケルベロスは尻尾を丸める。


「あ。」

「何だよ爺さん、こんな時に。」

「いや、多分ヤバいです。」

「はぁ。」


 カナタは再び溜息をつく。


「何がヤバいんだ?」

「あのケルベロスです。尻尾を丸める事は、めったにないはずなんですよ。もしかしたら、何かあるのかと思いまして。」

「おいおいマジか。」


 カナタもさすがに、考えを改める。

 何せ、ここは異世界。ヤバい生き物がいないはずがない。

 しかも、そんな生き物に関する知識は、全くないのだ。


「リア!早く逃げろ!」

「もう遅いわよっ!せりゃ!」


 ケルベロスを投げる。

 そして……、


「クッキーの恨みっ!霧の雨(ミストレイン)!」


 刹那、ケルベロスが光に包まれた。

 その直後、ケルベロスに技が直撃する。

 辺り一面が煙に包まれ、誰の姿も見えなくなる。


「くそッ!殺す気なのかよ!早く見つけて、手当しねぇと。おーい……、」


 ギュ。


 カナタに何かが抱き着いた。


 背の高さからして、リアでもない。

 ティンは外で待機してる。

 爺さんとその他大勢(男)は、論外だ。

 そうなると、残るは……。


 誰かが窓を開けたのか、煙が外に出ていく。

 カナタがゆっくりと振り向くと、そこにいたのは、小さい女の子だった。


「だいじょーぶ?おにぃちゃん。」


 長い空色の髪に、緑色の瞳。そして、かわいらしい耳と尻尾。

 カナタからすれば、ラノベとかに出てきそうな獣耳っ娘だ。

 そんな小さな女の子が、ギュっと抱き着いてきている。


「お、おにーちゃん?」


 カナタはキョトンとしている。

 なぜなら、裸だから。

 何となくだが、カナタは理解している。

 この少女の正体も、裸な理由も。

 それゆえに、驚きを隠しきれていない。


「カ~ナ~タ~。」


 リアの声が聞こえ、はっとする。

 この状況は、本当にヤバいのだ。

 どう見ても、カナタは変態だと思われてしまう。


「おい。隠れるぞ。」


 カナタは指示を出す。

 時間もなく、一時的な避難にしかならないが、リアから逃げるには十分な時間だった。

 そのかいあって、リアは部屋の中を探し回っている。


「ちょっとカナター。どこにいるのよー。」


 部屋の中にリアの声が響く。

 しかし、誰もその声に答えようとはしない。

 椅子の下から部屋を見てみる。

 部屋の現在の状況はこうだ。



 無傷1名、潜伏者2名、気絶5名

 壁と窓に関しては、全て崩壊

 また、部屋に飾ってあったもの、並びに高級グラスなどは、破壊されている

 部屋の中で無事だったものは、ほとんど無い

 推定損失額は7000デュアーン



 ああ、終わった。

 リアはなぜ、厄介な事を起こすんだ。

 こんなんじゃ、すぐに俺たちは破産しそうだな。

 だが今は、コイツの事が最優先事項だ。


「なぁ。」

「なんですか、おにぃちゃん?」

「どうしてお前、人の姿になれるんだ?」


 何を隠そう。この裸の女の子の正体。それはケルベロスなのだ。


「なんでかわかんないです、おにぃちゃん。」

「分かんないって、じゃあ何で尻尾を丸めた?」

「だって、こまったときにするから?」

「いや、逆に聞き返されても困るから。とりあえず、服を探さないとな。」


 周りを見る。基本的に全てが破壊済み。


「ったく、何て破壊力だよ。どうすればいいんだよ、この状況。せめて、誰かいれば……。」

「お呼びですかー?」


 ふと、声がした方に振り向く。

 この声で、この状況で、隣にいてもおかしくないやつは1人。


「呼ばれて飛び出るティンが来ましたー。さて、何をすればいいですか?」

「お前さ、どうしてここまで来られるんだよ。つーか、ネタは止めろ。お前が言うとイライラしてくる。」

「それは秘密ですー。あと、ネタじゃなくて、『お姉さん』秘伝の交渉術です。」

「分かったよ。だから、コイツに着せる服を頼む。」

「了解ですっ。」


 一瞬の隙をつき、軽々と天井に張り付くティン。

 カナタの苦労を無駄にしながら、部屋の外に出ていく。

 それと同時に、獣耳っ娘改め、ケルベロスの女の子と2人で隠れる状況に戻る。

 ふと、カナタは隣の女の子を見ると、ある事に気づいた。

 この女の子には、名前が無いのだ。

 ケルベロスの時に名前を付けなくて良かったかもしれないと思いながら、話しかける。


「なぁ。」

「なぁに?」

「お前にさ、名前が無いなと思ってさ。」

「なまえ?」

「やっぱりか。だったら、考えなくちゃな。」


 名前か。どうするべきなんだろうな。

 やっぱりここは、何かを元にした方がいいかもしれないな。

 えっと、コイツはケルベロスで、女の子で、おまけに小さい。

 他に何かあったっけな。


 そんな風に考えていると、1つの名前が浮かび上がった。

 結局、ほとんど関係ない名前になったが、カナタはさっそく、それを伝えてみる。


紅葉(もみじ)……、なんてどうだ?」

「もみじ?」

「そうだ。俺の世界……って言っても、分からないか。俺の故郷の植物の名前だ。すごくきれいなんだ。」

「そーなの?」

「ああ。毎年秋になると、いろんなところで話題になる。小さくて、変化する。だから、お前にぴったりの名前だと思ったんだ。」

「それがいい!」


 嬉しそうにしながら、返事をしている。

 どうやら、気に入ったようだ。


「分かった。改めてよろしくな、紅葉。」

「うん!おにぃちゃん!」

「よろしくですー。紅葉ちゃん。」

「早っ!っていうか、どっから聞いてた!」


 いつの間に来ていたティンに、カナタは容赦なく質問する。

 そうすると、ティンの口からとんでもない答えが返ってきた。


「名前がないってところからですー。」

「本当に一瞬で盗ってきたんじゃねぇか!って、それより早く服を。」

「そうでした。」


 ティンから、メイド服を受け取る……。


「……って、全然チガーウ!メイド服はおかしいだろーが!しかも何で子供用?」

「買ってきたんですよー。」

「買ってきたんかい!それに早っ!」

「だってー、探すより早いですもん。」

「だからっておかしいだろ!なぁ紅葉……、」


 言葉を失う2人。

 ついに、この時がやってきたのだ。

 リアに見つかる時が。


「なぁにしてるの?お二人さん。」


 あーあ、終わった。

 そう思った瞬間、リアの顔が変わった。


「何、この子。」

「いや、それは……。」


 マズイ。超マズイ。マズイマズイマズイマズイ。


「迷子……、」

「すっごくカワイイじゃにゃい!ギュってしちゃっても問題ないわよね。」


 あ、助かった。そして噛んでんじゃねぇ。

 ホント、バカだコイツ。


「ねぇねぇ、名前は何ていうの?」

「もみじだよ。おにぃちゃんがつけてくれたの。」

「ん?おにぃちゃんて誰?」

「おにぃちゃんはおにぃちゃんだよ。ねっ、おにぃちゃん!」


 そう言いながら、また抱き着いてくる。

 それと同時に、リアが睨みつけてくる。


「あ、これは……。そっ、そう。町で拾ったんだ。」

「ふぅん。まぁいいわ。かわいいから許す。」

「サンキュ、リア。」

「何言ってんのよ、変態。」


 どうやら俺はロリ認定を受けたらしい。

 だが、確かに俺は年下の方が好きだ。

 あながち間違っちゃいない。


「おにぃちゃん。」

「何だ紅葉。どうかしたのか。」

「このふく…、にあってる?」


 メイド服を見せながら、カナタの服を引っ張る紅葉。

 紅葉は服を着た事がない。

 だからこそ、少し不安そうだったのだ。

 そんな様子の紅葉を見て、カナタは頭を撫でながら告げる。


「とってもかわいいぞ。まるで、人形みたいだな。」

「かわいいの?ほんとに?」

「ああ、もちろん。俺が保証する。きっと、そこの2人もかわいいと思ってるさ。」


 カナタは紅葉を持ち上げ、後ろが見えるように移動した。

 そこでは、ティンがニッコリと笑っている。

 いつもはキレッキレのリアまでもが、やさしく微笑んでいる。

 きっと、ケルベロスだと知ったらキレる可能性が高いが、それは今関係ない。

 そんな姿を見て、紅葉は嬉しそうにしている。


「やったな、紅葉。お前のこの姿、あいつらもかわいいってさ。よかったな。」

「うんっ!もみじやったよ!」

「そうかそうか。」


 カナタは再び頭を撫でながら、紅葉を褒める。

 そして、脳内スイッチを切り替え、リアに怒る準備をする。

 さぁ、戦闘開始だ。


「さぁてリア。それはさておきどうすんだ?」

「へ?」

「この部屋だ。お前、爺さんたちや飾ってあったものまで攻撃しただろ。」

「そ、そうね。」

「お前はやっぱりバカだな。手加減もできないなんて。」

「てっ、手加減の一つや二つぐらい、できるわよっ!」

「その結果がこれだ。」

「むぅ。」

「そんな顔しても無駄だ。早くこの部屋を片付けるんだな、バカ『魔王』。」

「うー。分かったわよ。」


 嫌そうな顔をしながらも、少しずつ部屋を片付けるリア。

 まぁ、紅葉のかわいさに免じて、この辺で終わりにしておくか。

 俺も手伝わないと間に合わないしな。

 ったく、いつもいつも大変だぜ。


 そんな事を考えながら部屋を片付けていると、何か変なものが出てきた。


「これ、宝箱か?」

「えっ!何々?どうしたのカナタぁ!」


 すごい勢いで飛んできたリアをかわしながら、宝箱を開けてみる。

 そこに入っていたのは、なにやら小さい宝石だった。

 中身を確認し、そのまま懐にしまう。


「あっ、カナタ!」

「爺さんたちにも、お前らにも悪いと思う。だが、いただく。これは俺のもんだ。」

「ちょ、カナタぁ。ずるいじゃないのー。」


 再び、部屋の中で追いかけっこが始まった。

 気絶中の爺さんが起きるまで、この戦いもまた、終わらなかったという。

もう少しで旅立てます。

ほんとにあと少しです。

もう少々お待ちください。

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