第5話 昨日のお金は今日のときめき??
遅くなってしまって、すみませんでした。
第5話更新です。
ティンと他愛もない会話を続けていると、やっとリアが起きた。
ゆっくりと体を起こすと、部屋にいる少女を見て、驚きと困惑の表情を見せる。
その顔は、とても『魔王』とは思えない。
リアはそのまま慌てて飛び起き、すぐに身構える。
「あなた、誰なの?カナタと何してるのよ?」
「いやー。怪しい者じゃないですよー。」
「うるさい!私の質問に答えなさい!!」
「私、ティンって言います。これからお世話になりますっ。」
「お世話ねぇ。私がそんな事すると思ってんの?」
リアは完全否定する。
『魔王』って、ここまでワガママなのか。
まぁ、コイツに限ってかもしれないが。
それにしても、何でここまで拒否反応を示すんだ?
まさか、コミュ症ってことはないよな……、『魔王』だし。
でもとりあえず、説明しないとダメそうだな。
「リア、ティンは依頼人だ。何でも『お姉さん』を探しているらしい。だから、全然気にしなくて大丈夫だ。」
「は?依頼人?」
「そーです。依頼人です。無害です。ゆるーいです。」
「依頼人?そうねぇ、何を報酬に貰おうかしら。」
「おい!まず、報酬なのかよっ!」
「え?仕事じゃないの?」
「まぁ、そうだが。」
「だったら少しだけ……。」
「リア、涎垂れてるぞ。」
「だっ、だったら何よ。私は嘘はつかないっ!」
「でも、確かにそれは正しい事かもな。ティン、お前はどう思う?」
「別にお金払ってもいいですよー。所持金はほとんどないですけど……。」
「「はい??」」
俺とリアの声が重なる。
俺らが悪人だったら、間違いなくティンの人生が終わってた気がする。
「何でほとんどないんだ?」
「ここまで来るのにお金を使っちゃったっ。」
ウィンクをしながら、ドジっ子アピール。
だからと言って、手加減はなしだ。
「おい。つまりは、お金はあったんだな。」
「はい……。50デュアーンも使っちゃいました。」
「ポン?」
「あ、カナタさんたちはお金の単位、知らないんでしたっけ?」
「ラッキー。」
「ガッツポーズしてないで、全部言え。」
「やっぱりですかぁ。」
ティンを拘束、問い詰めた結果、以下の事が分かった。
・この世界のお金の単位は、下から順に、ピン、ポン、パン、デュアーン。(何だよデュアーンって!そこはプンかペンだろ!)
・100ピン=1ポン、10ポン=1パン、10パン=1デュアーン。(日本と似てるな。)
・お金は、セルファ都市銀行から発行されているらしい。(他にもあるそうだ。)
結構分かりやすかった。
だが、何でこんなに似てるんだ。
まさか、俺たちよりも先に来たやつがいるのか?
だが、もしかしたら……。
そう考えたカナタは、ある事を思いついた。
もし、そんな誰かがいるなら……と。
「なぁ、リア。」
「ん、何よ。」
「元の世界に帰るための、いいアイディアが浮かんだ。もちろん、いろいろ条件付きだが。」
「本当に!何なの、そのアイディアって?」
希望が見えたのか、リアがカナタに飛びつく。
無論、その勢いはイノシシのごとし。
さすがは『魔王』様。
しかし、その勢いをカナタは受け止めきれなかった。
そのまま、リアが押し倒す形になる。
どーんと、大きな音が響き、2人は倒れこむ。
「ヘーキでーすかー。」
「ああ。リアは平気か?」
返事がないので、カナタは起きようとする。
しかし、返事がない事を確認しなかった事が、災いの原因だった。
モニュ。
「へ?」
何だこれ?
この柔らかい手触りは何なんだ?
モニュ、モニュモニュ。
何か、嫌な予感がする。
そっと、目を開けると……。
リアの顔が真っ赤になっている。
そして、カナタの手は、さほど大きくない胸をがっちりと掴んでいる。
「あ。」
カナタはやっと気づく。
『魔王』に対して、何をしているのかを。
カナタは飛んだ。
正確には、飛びのいただけだ。
だが、そう見えてしまうほど、高かったのだ。
「あ、いや、その、つまり、あのな……。」
「慌てて言っても、意味が分からないですよー。リアさんも何か言いたげですよー。」
ティンの助言が、カナタに突き刺さる。
きっと、これからもっと大変になる。
そう思いながら、リアを見ると。
「……ち。」
「はい?」
「……カナタのえっち。」
胸を隠しながら、小さな声で反撃している。
その頬は、蒸気が出そうなくらいに赤い。
『魔王』らしくない。
そう思うと同時に、もう1つの感情が生まれ、カナタの顔も真っ赤に染まっていく。
何でかわいいと思ったんだ。
だって、リアだぞ。
あのバカな『魔王』だぞ。
何度も戦った、『魔王』だぞ。
それに、俺には桃香もいる。
それなのに、何だよこの感覚は……。
カナタは混乱していた。
どうしようもないくらいに。
もちろんそれは、リアも同じであった。
何なのよ、もう。
一体どうしたの、私?
私は『魔王』よ。
そうよ。オシショー様と約束したじゃない。
誰よりも強くなるって。
なのに、そのはずなのに、何でこんな気持ちになるのよ……。
ただ、何も言えず……。
感じた気持ちは、誰にも言えず……。
時の流れを感じさせないほど静かな空間が、2人を包みこむ。
「いやー、2人は照れ屋さんなんですねー。」
ギロッ。
たった一言で、2人の注目が1つに集まる。
無言の空間を破り、空気を読まない発言をした者の元へ。
そして、ティン捕獲作戦が開始された。
ティンが捕まると、そのまま縄で吊るし、ベッドの横で2人は小さくなる。
どうしてこうなったのかを知るものは、3人以外、誰もいないのであった。
忙しい中で書く時もあるので、更新が遅くなってしまうことが、またあるかもです。
ご理解お願いします。<m(__)m>
次回も少しかかるかもしれないです。