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昨日の敵は今日の〇〇??  作者: 蓮野ツバキ
momoka memorial
22/22

第1話 桃香の番ですっ!

 気分転換に番外編書きました。

 これは、他でもない。私のお話。

 そう、カナくんに置いてかれちゃった、私のお話。



 ………というかその前に覚えてますー?私のこと。

 まぁ、カナくんメインですから。そうですから。

 でも、私のことも、ちょっとは気にかけてほしいです。



 それではもう一度、自己紹介させてもらいますねー。

 私は桃香!斎藤桃香です!

 カナくんのお・さ・な・な・じ・みですっ!

 私はヒロインじゃないとか思ってたそこのあなた!覚悟してくださいね!

 私は、そう簡単にヒロインから除外なんてされませんよ!

 いいですか!これは私の物語なんです!

 カナくんを………、




 『魔王』から取り戻すためのっ!







 辺り一帯は光に包まれている。

 それも、ただの光じゃない。召喚の光だ。

 その光に、この場で唯一巻き込まれなかった少女。それが、彼女である。


「もー!何が何なのー?」


 斎藤桃香16歳。

 ごく普通の高校生であった彼女が何でこんなところにいるのか?

 それは、召喚されたからである。


 幼馴染であるカナタと共に、学校へ向かっていたある日のこと。突然2人は異世界に飛ばされた。

 もちろん、最初は戸惑うばかりの日々である。

 自分たちが何でこんな目に合わなければならないのか。なぜ自分たちが選ばれてしまったのか。本当に元の世界に戻れるのか。そんなことばかり考えてしまっていた。

 でもそれは、カナタがいたことであっという間に解決した。

 幼馴染との異世界生活。そんな展開、普通はありえない。

 だからこそ、自分たちで生きよう。ここを生きて、いつか普通の生活ができるように頑張ろう。そう思えたのだ。


 だが、そこにとある女が現れた。

 その女は、何かあるとすぐにカナタのところに来る。そして何かよく分からないまま戦う。

 そして何度も戦ううちに、少しずつカナタが影響を受けている。

 このままではいけない!そう思った矢先にこうである。

 私は寝坊によって、人生最大のミスをしてしまったのだ。


「ありゃ。だーれもいない。」


 桃香は不思議そうに周りを探す。しかし、そこには何もない。

 神柱(ピアーズ)とかいう神殿のくせに、石ころ1つもありゃしない。


「カナくぅーん!『邪魔王』様ー!」


 カナタの名前を呼んでみるも、誰も反応しない。

 完全な消失である。

 あ、ちなみに『邪魔王』はリアのことだ。一応いるか確認しておいただけだ。彼女に興味はない。


「じゃあやっぱり、今の光って召喚の光だったんだー。……ってことはつまり!私置いてけぼりってこと!?そんなぁー。」


 感嘆の声を神殿に響かせながら、桃香は自分の失態を悔やむ。

 自分が朝、ちゃんと起きてればよかっただけの話なのだ。それゆえに、自分を責めてしまう。

 さらに、召喚というこの非現実的な場面において、2人が召喚されたということは、とても大きな問題なのだ。


「うー。カナくんと奴が2人きりにー。」


 2人が召喚されたということは、きっと、昔の自分たちと一緒である。そう、桃香は考えていた。

 つまり、カナタの運命は2つに1つ。




 1.『邪魔王』に殺される。

 2.『邪魔王』ルート。




 どちらかだ。


「ヤバいよぉ!私のカナくんがぁ!」


 最悪のパターンは考えないことにする桃花。

 となると、もう1つしかない。


「これは、一刻を争う超緊急事態だよっ!待っててねカナくん!今行くよ…………って、私はどうすれば?」


 せっかく頑張ろうと思ったものの、どうしようもできないことに気づく。完全に空回りしてしまった。

 とりあえず1回帰って考えることにする桃香であった。






 ここは宿場町ウィア。冒険者の町と言われるほどの快適な町。

 桃香は、カナタと共にここで暮らしていた。……昨日までは。


「ただいま!」


 町の周りをぐるりと囲む壁。その端っこにある2つの門がこの町に入るときの検問所みたいになっている。

 それをくぐると同時に、門番さん(内側)にあいさつするのは、桃香の習慣の1つであった。


「モモカ・サイトウ!そんなに慌ててどうしたんだい?それにカナタ・ミカゲは?」


 少し息切れしている桃香に、門番さんが不安な表情を浮かべる。


「別にいーの!今からギルド行くんだから!こう見えても今機嫌悪いのー!急いでるからまた今度にしてー!」

「あ、ああ。」


 普段ならありえない対応をしながら、まっすぐにギルドに向かう桃香。

 その目には、焦りと悔しさがたっぷりだった。

 町に入って一直線。中央通りのど真ん中にあるのが、ここウィアのギルドである。

 ギルドに到着するやいなや、受付にいる金髪の女性のところに向かう。抱きついて……そして泣く。


「カナくんがさらわれたよぉ!負けヒロインになるのだけは嫌だぁ!カナくんは私のだよぉ!」

「ちょ、どうしたのモモ!何で泣いてるのよ!」

「カナくぅーん!」


 泣いた時間は、およそ30分だとギルドの客は後に語る。

 そして、桃香の抱きつく胸を見て、人々はその人物の威圧感を感じていた。

 憎しみ、苦しみ、悲しみ。そんなものすら簡単に超越してしまうほどの、恐ろしい覇気を。




 泣くことおよそ3時間。やっと泣き止んだ桃香は、その受付嬢、リエス・テューに事情を説明した。

 彼女はトップクラスの受付嬢で、その上、成績優秀才色兼備。いわゆるお嬢様でもある。ちなみに、美女ランキングでは、いつもトップ5に入っているとか聞いたこともある。

 そんな彼女と出会ったきっかけが……胸だ。

 「胸を大きくしたいからぁ!あなたみたいにぃ!教えてよぉ!」と泣き叫んできたことは、今でも鮮明に覚えている。

 彼女はまだ、私の胸を敵視しているのだが、それでもこそ世界では、親友とも言える存在なのだ。


「なるほど、そういうことだったの。」


 リエスは呆れた様子で、桃香の話を聞いていた。

 あまりに余計なことだらけだった話から、状況と思いだけをしっかり聞き出す。

 楽勝な様子で聞いていられるのも、彼女がトップクラスである証明である。


「それは困ったわね。何か異世界へ向かう方法を一刻も早く見つけなきゃだわ。」

「リーちゃんありがとぉ!」


 リエスに感謝を述べる桃香。安心した表情になり、いつもの調子も戻って来る。

 親友がいることだけが、今の桃香にとっての支えでもある。


「で、早速なんだけど。これ、見てもらえる?」


 リエスは、胸ポケットから依頼書を取り出す。

 その中身を見て、桃香は驚きの表情を浮かべる。

 何を隠そう。それは、異世界へ繋がる鍵『オルティオ』についての依頼書だった。


「リーちゃん!これって!」

「そうよモモ。これは『オルティオ』についての依頼書。貴重なものだから、あなたたちに届けろって言われてたの。これがあれば、あなたたちも帰れるかもって。」


 リエスは、ばつが悪そうに横を向く。


「今日ここに来るって聞いたから、それを待ってたんだけど……。それがまさか、こんなことになるなんて。一歩手遅れだったわね。」

「そんなぁ。」


 桃香の顔がまた不機嫌になっていく。

 それを見たリエスは何とかしなければと、必死に慰める。


「ま、まぁでも、これがあればいいわけよ。これを探せばいいだけ。たったそれだけで、あなたの大切な人が救えるの。それにさ、これはチャンスでもあるのよ。」

「えー、チャンスって?」

「あなたの言ってた『邪魔王』、彼女だけ残してくればいいじゃない。そうすれば、あなたの独り勝ちよ。他に邪魔は入らないわ。」

「確かに!」


 パッと明るくなった桃香に、ほっと安堵するリエス。2人は改めて目を合わせる。

 お互いの意思を確認するために、そして、2人が真の友情で結ばれていることを確認するために。

 そして桃香は決意することにした。


「分かった。その依頼引き受ける。」

「オッケー。でも、きっと大変な旅になる。そんな予感がする。だから私もついていくことにするわ。よろしくね。」

「こっちこそだよ!さぁ、リーちゃん、こうしてる間にも、カナくんはピンチだよ!早く行く準備しよっ!」


 桃香はリエスを連れ、馴染みの武具店に向かう。

 時間はもう夜。明日の出発に向けて、2人はそこで道具を揃える。

 そして、武具店からの帰り、桃香は月に向かって呟いた。


「待っててねカナくん。必ず行くから。」


 決意の言葉を胸に、桃香は月に向かって歩き始める。

 月の光に包まれた彼女は、まるで天使のようだった。

 桃香編もスタートさせました。

 たまに書いていこうと思ってます。

 こっちもどうぞ、よろしくお願いします。

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