第21話 昨日の100選は今日の覗き穴??
2か月ほど間が空いてしまいました。
第21話です。
結局、俺の悪い評判は一瞬のうちに世界を駆け巡った。
そのツブヤキがこちら。
御影カナタが私のところに来た。
何か私の胸を狙ってるみたいだった。
結局触られた。こねこねされた。ぺろぺろされた。
…………えっちぃです。御影カナタ。
確かにえっちぃ態勢とやらにはなったのだが、それは単なる事故だ。誰が悪いわけじゃない。狙ってたわけじゃない。
そして3行目!これが1番の問題。
何がこねこねぺろぺろだ!おかしい!おかしすぎる!
何で俺ばっかり、いつもこんなひどい目に遭うんだ。だいたい、ぶっ飛ばしたのはどこのどいつだと思ってんだ。
ほんと、いつもこうなるな。
「で、お前の言い訳を聞かせてもらおうか。俺が言葉でボコボコにされるって分かってるのに、何で話を盛ったんだ?」
カナタは、ルミナを正座で座らせている。
もちろん叱るためだ。こんなことをした少女には、然るべき対応が必要だと、カナタは考えている。
名誉棄損は罪だ。カナタが初めて召喚された世界でもそうだった。当たり前と言っても差し支えない。
だが、それを分かった上で、カナタはこうして叱っている。相手がカナタだったことと広まったのが天子だけということ。それが、ルミナの運が良かった点だ。
ルミナは申し訳なさそうに、「ごめんなさい。」と呟いている。
「全く。ごめんで済むなら警察はいらないとかよく言うが、今回はお前を許してやる。だからこれ以上、そうゆうことは止めてくれ。俺の精神が先にやられる。」
カナタは少しわざとらしく言ってみる。もちろん、反省させるためだ。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。私、お兄ちゃんがそんないい人だと思ってませんでした。ありすちゃんの言葉、少しばかり鵜呑みにし過ぎたみたいです。」
反省してはいるようで、ちゃんとカナタの目を見て謝っている。
カナタ的には、少しばかりグッド!ちゃんと反省できるだけいい。
「でも、この世界には警察はいません!いるのは警備の兵隊さんだけです!」
「お前が言ってることの方が、よっぽど面倒なことだと思うんですけど!」
それでもなお、ちょっとは反撃しなきゃって感じで頑張っている。やっぱり、少女というより幼女に近い。
だがそれでも、アリスまでとはいかないが、この子にもそっち系の血が流れているのかもしれない。
「面倒って言わないでください!私だって、ちゃんとすごいんですからぁ!」
えっへん!
そう言わんばかりのポーズで、机の上に立つ。
つまりそれは、下から見る形になってしまうことを意味するのだ。
必然的に見えてしまう。
落ち着け俺!俺は断じて悪くない!見えてしまったものは仕方ないんだ!その後どうするかが、『勇者』として、男としての見せ所だ!
こんなときは…………話題?……そう、話題だ!話題転換が重要だ!
桃香からもらった『女の子をリードする手引きの書~徹底攻略100選編~』!お値段なんと500円!読まされててよかった……。
「なっ、何がどうすごいのか、俺にはさっぱり分からんな。だけどそれは後でもいい。俺がここから出る方法を教えてほしいんだが、お願いできるか?」
「あっ!それもそうでした!だったら一気に説明しちゃいましょう!」
机を降りてくれた。
ありがとう桃香。お前のおかげだ。
机から降りたルミナは、大きな岩に向かって手をかざす。
「私は結界を作れます。なので、お兄ちゃんが今いるのは、普通の森の中にある、結界の中なんです。」
手をかざしたその数秒後、周りの空がきれいな緑色に包まれる。
それはまるで、輝く宝石のように。結界が温かな光を放つ。
これがルミナの結界なのだろうか。
「誰も破れないこの結界の中に、人が飛んでくるなんて思ってもみませんでした。だからあんな対応になっちゃって……。なので、本当にごめんなさい。」
「ごめんなさいは俺もだろ。だからもういいんだ。」
「うぅ~、ありがとうございます。」
少しだけ涙目の少女は、俺の目を見つめながら、話を続ける。
「結界の話はまた今度にするとして、ここから出る方法ですよね……。あまり扉を開けたくないんですけど……。でも、今だけはっ!今だけは頑張りますっ!」
首を上下左右させながら、
「扉か。そんな単純なことだったとはな。」
「はい、普通のドアです。ごく普通の、どこの家にもあるドアです。」
「俺が考えているよりはるかに単純だった!?」
開けてびっくり玉手箱ってか。
この空間は少し奇妙なのに現実的らしい。
「はい、どーぞ。」
「早っ!」
俺が考えているそのコンマ数秒。その間に開いた。
「私はここから出ないので、何かあったらありすちゃんに言ってください。すぐにツブヤケルと思いますから。」
「分かったが、そのツブツブしたのは、完全に俺らの世界のだろ。」
ツッコミながら、ドアを開けると、すぐに見慣れた光景があった。
吹き飛ばされたところから、およそ500mほどだろうか。そんなに遠くはない。
カナタは、感謝の意を伝えて一歩外に出てみた。
すると、そこにあったはずの扉は、きれいさっぱり消えていた…………とか言いたい。
中からの覗き穴だけが、そこにポツンと漂っていた。
なんとも言えない感じが、また微妙な雰囲気を出している。
何も見なかったことにして、カナタはリアを探そうと、歩き始めた。




