第2話 昨日のうさちゃんは今日の悩み??
早いですが、完成したので投稿します。
たった数秒。だが、されど数秒と言える。
召喚されている間の光景は、誰も見ることができないのだ。
そう、見られてはいけない光景……なはずだ。
だが今、ちょっと見えた。
なんか、神様みたいな人。
おいおい。こっち見て手を振るな。いってらっしゃいすんな!
そんなおかしなプロセスを経て、俺は眩しい光に包まれた。
「おお。やっと到着なさいましたか、『勇者』様方。」
チカチカする目を開けると、そこには……、なんだこりゃ。
1人の白髪の老人と、万人単位の人々。どんだけいるんだよ。
まぁいい。それよりも事実確認だ。
「おい、爺さん。」
「はい。どうかいたしましたか?」
「なんで俺はここにいるんだ?」
「おおっと、そうでしたね。」
「ん、まさか忘れてたのか?忘れてたんだろ、おい。」
「そっ、そんなはずがあるとお思いで?」
「だったらそんなこと言わねぇよ!早く認めろよ!」
「……。」
「はぁ。……ったく、早く状況を説明しろ。」
「ここは神に選ばれし都市、セルファ。あなた方は、私たちが召喚した『勇者』なのです。『勇者』様方、どうかこの世界をお救いください。」
「「はぁ??」」
ん、今の声、まさか。
……っていうか、ちょっと待て!さっきあの爺さん、『方』って……。
「ちょっと待ってよ。どうしてそうなるの?ここはどこなの?ねぇ、ねぇってば~!早くお家に返しなさいよ~!」
「おい。ちょっとこっち来い。」
「なにすんのよ~。……って、何でいるの?」
「こっちが聞きたいわ!おい爺さん、コイツに説明するから時間をくれ。」
「了解しました。」
部屋の隅に元『魔王』さんを引きずっていく。
いつまで泣いてんだよ、コイツ。
「なんなのよ~。どうなってるのよ~。」
「順番に説明するから、とりあえず泣くの止めろ。」
「う~。」
まだまだ、泣き止まない。
いっそ、挑発してやろう。
「そういえばお前、『お家』って言ってたな。『魔王』のくせにな!」
「なによっ!私の喋り方はカワイイのよ。誰にも文句は言わせないっ!」
「なんだ。いつもみたいに話せるじゃねぇか。」
「うっさいっ!……それより早く説明してよ。」
「分かった、分かった。いいか、俺たちが今いるのは異世界だ。俺たちは……。」
そうだ。俺は……。
何でなんだ。何でこうなるんだ。
「どうしたの?急に喋らなくなっちゃって。」
「はぁ……。あのな、召喚されちまったんだ。」
「嘘……、でしょ……。」
「残念ながら、現実だ。俺は2回目だから、よく分かる」
やっぱり。コイツでも最初はこうなるか。
そう思った時、思わぬ答えが……。
「……う、」
「う?」
「私の……、」
「?」
「うさぎちゃ~ん!」
「は?」
「あれがないと、夜寝れないのよっ!」
「何言ってんだよ!まずは自分だろ、おい!」
「だって……。」
「何が『だって』だ。お前、本当に『魔王』か。」
「そうよ。だけど、悩みは誰かに言うものでしょ。こんな大惨事に、グダグダ言ってられないっ!」
「珍しく冷静な感じだな。」
「当たり前でしょ!私には、うさぎちゃんが必要なのよ。」
「やっぱり、そっちかよ!」
まぁ、なんだかんだ言っても、コイツの言ってることは正しい。
一応『魔王』だし、頼りにはなるだろうな。
「で、本題はどうなの?」
「おお、そうだったな。話す前に、先に言っておくべきことがある。少しだけだから、しっかり聞けよ。」
「分かったわよ。黙って聞くわよ。さぁ、話してみなさい。」
「まず、それだ。」
「それって?」
「単刀直入に言おう。お前、『魔王』辞めろ。」
「えっ。どうしてよ?」
「召喚された時に言ってただろ。お前も、この世界では『勇者』の1人だ。『魔王』なんて名乗ったら……、分かるだろ。」
「分かったわ。ただし、この世界でだけよ。」
「それで充分だ。」
納得してくれて助かった。マジで。
もしコイツが拒否なんてしたら、それこそ、この世界が危ないかもしれない。
「ねぇ。」
「ん、どうした?」
「名前、聞いてなかったわよね。教えなさいよ。」
「ああ、確かに。俺は御影カナタだ。よろしく頼む。」
「私はリア。リア・セレイア。よろしく……。」
「ああ、よろしく。」
リアか。『魔王』にしては、普通の名前だな。
まぁ、コイツらしくていい。
「さてと。じゃ、残りの説明よろしく、爺さん」
「終わりましたか。それでは、説明いたしましょう。」
こうして俺たちは、『勇者』ということになったわけだ。
俺は、『勇者』の称号が2つあるんだが、仕方がない。
爺さんの話、しっかりと聞かせてもらおうじゃないか。
会話多めですみません。
「始まり編」もうちょっと続くので、お付き合いください。
追記・??を付け忘れたので、少し編集しました。