第19話 昨日の『奴』は今日のお花畑??
やっとこさっとこ、久しぶりの更新です。
……ここは一体、どこなんだ?
辺りには、花!花!花!ここは立派なお花畑である。
ついでに言うと、そこに俺1人だけなのである。
「って!何でお花畑にいるんだよ俺!」
カナタもだんだんとぶっ壊れ始めている。
そう、ここはお花畑。普段から大変ツッコミが激しい彼にとっては、素晴らしいほどの精神崩壊が起こる場所なのだ。
それでも彼は理由を探している。こんなところで、立ち止まるわけにはいかないのだ。
「思い出せ俺。今まで何をしてきた。俺がここにいるのは何でだ。…………何でなんだぁぁぁぁ!」
カナタは必死になって記憶を探る。
もちろん、思い出せるという確証はない。
けれど、そうしなければいけないという使命感と、早く元いた場所に戻りたいという思い。それに動かされて、彼は必死に考える。
「確か俺は朝、『奴』と戦ってたんだったよな…………」
「きゃあ!ちょ、カナタぁ!早く来てよぉ!」
「ちょっと待ってろ。今すっきりさせてやるから。」
現在の時刻は、午前6時過ぎ。
宿へと帰った2人は、そのままぐっすり眠りについた。
朝になり、2人は起床する。その部屋に響いていたのは、他でもないリアの声だ。
「嫌ぁ!お願いだからぁ!早くしてよぉ!」
リアは必死にお願いするも、カナタは動けない。
否、動けないのだ。
「ヘルプぅ!ヘルプなのぉ!」
普段とは真逆の、リアのかわいらしい声がただただ聞こえる。
2人が朝からこんなことになったのは他でもない。『奴』の仕業だ。
「そこだぁ!」
カナタが仕留めにかかる。
しかし、『奴』にそんな攻撃は通用しない。
カナタの一撃を華麗にかわし、その黒い体は、少しずつリアの方に迫っていく。
「ひゃぁぁぁぁぁ#$%&*!?」
「リアっ!」
そろそろリアも限界である。
もうやるしかないと、カナタは覚悟を決める。
『奴』に狙いを定め、箒を剣のように放つ。
「はぁぁぁぁぁ!せいっ!」
カナタの出せる限界の攻撃。
しかしこれも、かわしてしまった。
これこそ、『奴』の真骨頂。とにかく早いのだ。
「くっそ!こっちにも出るなんて俺は聞いてねぇっての!」
仕留められない『奴』に対して、ふざけんなと悪態を吐く。
だが、そんなことをしていても何も始まらない。
『奴』を葬り去ることこそが、唯一の対抗手段なのだから。
「おはよう、カナタ。ついに、やっちゃったって聞いたよ。」
「いややってねぇよ!てか、殺れてねぇよ!」
何か急に来たゲイン。しかし、彼にかまっている暇もないのだ。
「よし!そこだぁ!」
ちょうどど真ん中。リアのすぐ下まで接近した『奴』を、俺は全力で狙う。
再び『奴』に箒が迫ったその瞬間、事件は起こってしまった。
そう、『奴』が飛んだのだ!
そしてそのまま、「飽きました」とばかりに外へ飛んで行く。
これで一件落着かと思いきや、『奴』を殺りにかかった、その勢いだけは止められなかった。
つまりは、リアにぶつかるということ。
「しまっ!」
「きゃあ!」
ぶつかるということは、押し倒すということ。
つまり…………
「カ、カナタ……どこ、触ってるの?」
「……っ!これは違っ!」
「違わないでしょ!この……変態勇者ぁ!」
ドゴォンと、部屋に爆音が響き渡る。
そして、カナタの平和な朝は、どこかへと消え去っていったのだ。
「そうだ。今日の朝は、あんな感じだった。で、俺は弾き飛ばされた。確かそのときは…………」
弾き飛ばされた俺は、そのまま池ポチャした。池ポチャというには、小さすぎだが。
「ぶはぁ!ったくリアのやつ!助けてくれっつったのに!何だよもう!」
俺は、日頃溜まった鬱憤を水に流すように吐き出す。こっちに来てからは、よくあることだ。
少し落ち着いたので、周りを確認する。まぁなんと!
……何もない森だった。
「はぁ。一体ここどこなんだ?」
見事に迷子になった。
とりあえず高いところを目指そうか、そう考えたそのときだった。
「ひゃあ!わっ、私の聖域に人が、人がぁ!」
「……あ、あいつが原因だ。」
やっと気づいた。
しかしまったく分からない。何が何なんだか。
「あ、やっと起きた。」
聞き覚えのあるその声に、すぐに後ろを振り向く。
そこにいたのは、他でもない、その少女だった。
「私の聖域に入ったお兄ちゃん。あなた、何者ですかっ!」
ビシッとこちらを指さす少女。
「前にもこんなことなかったか?」とついつい思ってしまう。
「は?」
だがカナタは、唖然としていることしかできなかった。




