第15話 昨日のカードは今日のクエスト??
切りがいいので投稿します。
追記・ギルドカードに「レベル」を追加しました。
ギルド加入と言っても、それはもう本当に簡単なものだった。
まず、冒険者ギルドカードの発行。
ギルドカードの元(と呼ばれているらしいが、本当は特殊素材の紙)を持って、ゲインの言った、何だかよく分からん呪文を唱えるだけでいいのだ。
な、簡単だろ。
だが、問題は別のところにあった。
ギルドカードはその人の能力を映す鏡のような役割もしていたのだ。
もちろん、普通の人にとっては身分証明にもなるし、悪人などの特定にも使われている。
でも、俺らが身分を証明しようとすれば、それはそれは大事になりかねない。
偽造もできない、偽装もできない。おまけに、再発行の際は元のデータが引き継がれるときたもんだ。
しかもすでに、俺らは『魔勇同盟』に加担している。もうすでに、データ化済み。
その結果がこちら。
御影カナタ 16歳
属:人間
職:『勇者』
『剣士』
ツッコミ担当
レベル:50
ステータス:攻撃力450
防御力450
魔力200
回復力300
加入:冒険者ギルド
『魔勇同盟』
能力:剣技レベル50
魔法レベル30
ツッコミレベル100
技:颯の剣
光の剣
加速
さりげない精神攻撃。
疑問な点がたくさんあるが、1番気になったことだけを言わせてもらった。
………………ツッコミって職なの!?1番強いってどうなの!?俺ってザコなの!?
もちろんリアには笑われたさ。心が痛くなるほどにな。
それでも、いいステータスだとゲインに言われて、なんとか立ち直ったのさ。悪いかっ!
そして、さんざん俺をバカにした、リアの結果がこちら。
リア・セレイア 15歳
属:人間
職:『魔王』
『勇者』
『魔法術師』
レベル:150
ステータス:攻撃力600
防御力200
魔力400
回復力300
加入:冒険者ギルド
『魔勇同盟』
能力:魔法レベル1000
技:霧の守護
炎円
昇拳
……『魔王』ってやっぱ強いんだな。そう感じた。
俺と比べると、一見変わりない感じもしないではない。だが、ふざけたステータスがないこと。これが1番羨ましいところだ。
しかも、ちゃっかり魔法レベル1000だと。……すげぇじゃん。
技もなんか多いし。なんかもう俺が嫌になっちまう。
……俺って『勇者』なんだよな。
そんなギルドカードによる判定も終わり、改めて冒険者ギルドの一員になった俺たちは、ゲインと共に1階に向かった。
目的はそう……初クエストだ。
ゲインが適当に、クエストを漁っている。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪」
「あのさ…、もうちょっと真面目に考えてもらえない?」
ギルドカードの結果が悪く、ツッコミを入れる気になれない俺。
代わりに、リアがゲインを止めようとしてくれている。……サンキュ。
「だってさ!初めてのクエストなんでしょ!とびっきりに楽しいものがいいじゃん!」
「そうゆう問題なの?まぁ、考えるだけなら別にいいわ。決めるのは私だし。」
「………俺は?」
『魔王』に、常人の言葉は通じない。いろんな意味で。
ギルドマスターらしくない『魔王』も、勝手に決める『魔王』も勘弁してくれ。
「うーん。あんまいいのがないなぁ。どうしようかなぁ。」
必死に考えているように見せるゲイン。
いくら必死っぽくしたって、リアと戦ってきた俺の目からしたら、バレバレなのだ。
さぁ。俺にクエストを選ばせる番だぜ。
「あ、そうだ!あれにしよう!うん。それがいい!」
そう言うと、ここで待ってろと俺たちに告げ、奥の部屋に入っていく。
ゲインは、あっという間に戻って来る。
どうやら俺の番はなし。さらば、俺の初クエスト。
「これが君たちの初クエスト!その名も……」
ダララララララ、と聞こえてきそうなポーズをとりながら、俺の前に紙を差し出す。
そのクエストとは………、
「『ゾンビ除去大作戦』だ!」
「うぇ?」
失礼。突拍子もない声が出てしまった。
いきなりゾンビとは、……思わなかったのでな。
「ゾンビって、あのゾンビ?死んだやつが生き返ったやつ?」
「そうそう。君たちには、5年前から活動しっぱなしのゾンビさんたちを、浄化してもらいまーす。」
浄化ねぇ。
まぁ、俺はいいとして、リアが何て言うかだよな。
……って言っても、俺は魔法レベル30なんだがな……。
「いいわよ!」
「えぇぇぇぇーーーーーーーーーー!」
リアがあっさり返事した。
絶対嫌とか言いそうなのに。
「何驚いてんの?」
「いやいやいや。相手はあのゾンビだぞ。グロくて、キモくて、クサいあいつだぞ。本当にいいのか?」
俺がそう聞くと、リアは平然として答えた。
「は?何言ってんの?こんな時こそ私の出番でしょ。私は『魔法術師』よ!私の魔法から逃れられるものはいないっ!」
あ、コイツ調子乗ってやがる。
ステータスがいいからってだけで生意気だ。
このクエストで、絶対何かやらかすな。
「はいはい、分かった分かった。で、うちのリアさんも乗り気なんでやります、はい。」
「やったー!じゃあ今日の夜。町のはずれの廃屋に集合だよ。それまで自由に町観光でもしてて。はいこれ、お小遣い。」
「これ、先払いですか?」
「違うよ。単なるお小遣い。楽しんでね。」
リアと顔を合わせる。
「おし。観光すっか。」
「そうね!」
再度観光開始だ。
また、至福のひとときを味わえるぜ。
そう思っていた。
…………真夜中の町を知るまでは。
次回、ゾンビ回です。
お楽しみに。