第13話 昨日の嘘は今日の真実??
あけましておめでとうございます。
第13話です。
俺たちの着いた町、フィリオンはとても素晴らしい町だった。
町に入ってすぐのところに、道案内を雇うことができるお店があり、とりあえずそこで、今日1日案内してくれる人を雇えた。
案内してくれるのはグルトさん。彼によると、どうやらティンたちに連絡をとれるのは、伝書鳩ならぬ伝書鷲だけらしい。
伝書鷲を借りられるお店も紹介してくれたので、ティンたちに手紙をお願いした。スコーンまでは、1週間ほどかかるらしい。
どうしてここまで1日で来られたかは気にしない。そんなことを気にしていたら、こっちが疲れるだけだ。
その後も、この町の名所やお店を紹介してもらった。もちろん宿もだ。
食事に関しては、所持金はあまり多いとは言えないが、半端じゃない量の料理を食べることができた。
なぜか、この町の物価が安すぎるからである。
そうして俺らは、無事に眠ることができたのだった。
ああ、この町最高!
翌日、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
熟練っぽい冒険者たちの間を抜け、受付に向かう。
「すいません。俺たち冒険者ギルドに加入したいんですけど……。」
「はい、加入ですね。審査がありますので、こちらへどうぞ。」
どっからどう見ても営業スマイルな受付嬢に案内され、俺たちは奥の部屋に入った。
審査とかに使われるのであろう器具がズラリと並べられている。
「ギルドマスターをお呼び致します。少々お待ちください。」
そう言って、部屋を一度退出する受付嬢。
彼女が出ていったことで、俺とリアが2人きりになる。
面倒だなぁ、と感じた瞬間、リアが話しかけてきた。
「ねぇ、カナタ。本当にごめんなさい。完全に私のミスだわ。私がもっと正確なナビゲートができればよかったのに……。」
リアは、しょんぼりしながら、カナタに謝る。
「それは昨日許しただろ。それに俺は、反省が見えないのが心配だ。」
そう。昨日の夜にも同じことがあった。しかも、ベッドの中で。
節約のために2人で同じベッドで寝たからこそ、リアの鼓動がしっかりと伝わってきていたのだ。
それゆえに、リアの気持ちははっきりと伝わっている。
もちろん、背中合わせで寝た。やましいことは何もない。
相当落ち込んでいる『魔王』様を慰める方法など、俺にはまださっぱりだが、それでも今回は、前よりもやさしくしたつもりである。
「ていうかむしろ、俺は感謝してると思う。こんなにいい町はそうそうないだろ。いい経験だ。」
「そう……、ありがと……。」
控えめなリアも新鮮でいいな、と思っていると、部屋に1人の男が入ってきた。
「やぁ、こんにちは。君たちが新しい冒険者か。よろしくねー。」
いや、男ではなく青年と言った方がいいかもしれない。とても親しみやすそうだ。
「ふぅん。あなたがギルドマスター?」
リアが『魔王』様の言葉遣いに。抜け目ない。
「そうですよ。僕はゲイン・ディー、ここのギルドマスターです。」
軽い口調で答えるギルドマスター。
逆に、このギルドがちょっと不安になりそうなやつだ。
「俺は御影カナタだ。で、こっちはリア。一応、2人とも『勇者』だ。よろしく頼む。」
「よろしくね、カナタにリア。」
ゲインと軽く握手を交わす。
隣で、「一応ってどうゆう意味よ!」って叫んでる『勇者(仮)』は無視しておく。
「ところでさ。君たちが『勇者』っていうのは本当なの?」
「ああ、そうだが。」
「じゃあ、話し合いから始めないとね。とりあえず座って。」
そう言われ、リアと共にもう一度、ソファーに腰掛ける。
話のスピードが速く、よく理解してくれているようだ。とても助かる。
「さぁて、まずは僕が質問していくよ。」
ゲインも反対側に座る。
ちなみに、王様っぽいいすだ。
「君たちは、糞爺に騙された『勇者』さん。間違いない?」
「ああ、『勇者』であることは間違いない。だが、騙されたってどうゆうことだ?」
騙されたという言葉に、少しばかり違和感を感じる。
クソジジイっていうのは、爺さんで間違いないだろう。……たぶん。
だが、騙されたってことに関しては、ちゃんと聞いておかないとな。
なにせ、俺たちはこの世界に来たばっかの人間だからな。
「そのまんまの意味だよ。君たちは教会に利用されているだけなんだよ。」
簡単なことだよ、と言わんばかりの顔で、はっきりと言い返す。
「なーに、君達でもすぐに分かるよ。簡単なことだよ。」
マジで言いやがったコイツ。
心の中でツッコミを入れながら、話を聞く。
「あの爺の言っていることは間違っているんだ。この世界で悪いのは『魔王』じゃない。真の悪は『教会政府』の方さ。」
「『教会政府』?」
「ああ。あの爺のいる、ハイエナの群れみたいな組織のことさ。だいたいみんなそう呼んでる。」
『教会政府』。まさにぴったりな名前だ。
あれだけの人数がいながら、一部の人間がいい生活しているみたいだったしな。
爺さんのやつも、少しわざとらしかったし。
「そーんな『教会政府』さんは、この世界を支配するために『勇者』を召喚してるのさ。まぁ、ほとんどが失敗するらしいけどね。ザコだから。」
笑いながら、淡々と話すゲインを前に、俺らは唖然としている。
もうこれ以上、ツッコミ担当でも耐えられそうにない。
「おいおい、冗談はやめろって。面白くないからよ。」
「これが冗談に思える?」
俺の言葉を無視するように、そして、威圧するように告げられた。
「まぁ、証拠不十分ってこともあるよね。だったら、これでどうかな?」
胸元のポケットに手を入れ、そこからバッジのようなものを取り出す。
不敵な笑みを浮かべながら、彼はもう一度自己紹介をした。
「改めて自己紹介です。僕はゲイン・ディー……」
その印から、謎に満ちた気配を感じる。
強く、優しく、恐ろしい、そんな気配……。
そう。まるで、リアのような。
ん?リアのような?
それってまさか……。
「『魔王』だよ。よろしく!」
やる気MAXです!
どんどん書いていきます。