第1話
僕は、ずいぶん前から施設で暮らしている。
僕はみんなから、『ガイジ』と呼ばれている。たぶんこの言葉は、いい意味での言葉ではないんだろうと、思ってはいるのだけど、どういう意味なのかはわからない。
僕のお父さんとお母さんは、ずっと前には居たんだと思うけど覚えてない。
施設では、いつもテレビをみたりゲームをしたりして過ごしている。
施設の人たちは、優しい人もいるし、そうじゃない人もいる。
そうじゃない人は、僕がご飯をこぼしたり、お茶をこぼしたり、たまにだけどトイレに失敗しちゃったりすると、ぶったりしてきて『このガイジが!汚ねえな!』とか『ガイジなんか死ねよ』とか言われます。
ガイジって意味はよくわからないけど、きっと僕が失敗してしまったから怒っているんだと思って、そんなときはずっとごめんなさいって言うんだ。
そうすると、みんな許してくれるって絵本に書いてあったから。
でも、ずっと僕がごめんなさいって言っていると他の施設の人が『もう、謝らくていいんだよ』とか『あなたは悪くないのよ』とか言ってくれて抱きしめてくれたりします。
僕はそんなとき嬉しいような悲しいようなよくわからない気持ちになります。




