第2話 内なる覚醒
そこには、懐かしい曾祖母の姿が映っていた。
「これを見ているってことは、私は死んでいるのだろう
猛に言っておくことは、私の遺産、其れを継いでほしい
遺産は、財産のみではなく、私の意志を継いでほしい
相続の事は弁護士に任せているので
猛は心配することは無い」
しかし、安部家は代々、政府と繋がりが有って
防衛にもかかわっていたのだった
政府の要人の名前も連ねてあった。
曾祖母は
守るべきもの
正義
信念を掲げて関わって来たのだと言う
地下には、部屋がある
そこに行けば全てが解るそうだ
そして、俺の力を封印したのは曾祖母だと言う
猛の中には、代々の安部家が滅ぼした妖魔達の
強大な呪いが身体の中に秘められていると言う
何代か前の妖魔のボスを倒した時に
「お前の子孫を、呪ってやる、その時に儂らの
恐ろしさを、思い知れ!」と言って滅んだそうだ
その時は、戯言と聞き流したが
猛が生まれたときに、背中にその妖魔のアザがクッキリと
浮き上がったそうだ。
猛は赤ちゃんの頃から
おもちゃを飛ばしたり、動物を操ったり、果ては火を
使うようになった
強い精神力が無ければ妖魔に飲み込まれてしまうと
曾祖母は、成人に成るまでと封印したのだった
俺は全く自覚して無かったが
コントロールするには強い精神力と強い正義感厳しい訓練が
必要との事。
俺は、妖魔を抑えられるのか?
抑えられなかったら、俺は化け物になってしまうのだろうか?
不安が広がってくる。悪いイメージしか浮かばない。。。。
曾祖母が、亡くなって封印の力は、日に日に弱まっているとのこと。
早急に訓練すること、地下にはそういう設備があるとの事だった
そういう内容だった。
いつの間にか、クルルが俺の傍に来てスリスリしていた
俺の思いつめた様子に
直ぐに少女「かおり」に姿を変えた。
かおりが、愛しく、可愛いく感じた、彼女の胸に顔を埋めた、泣きそうに
なるのを必死で、押し殺した。
ビックリした、彼女に
「暫く、こうしていて。」俺は懇願するように振り絞って呟いた。
彼女は、何も言わず、俺を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれた。
* * * * * *
地下室に向かった、階段の傍にある振り子付きの大時計
その振り子を、引っ張ると、静かに大時計の裏が開いた
そこは地下室に降りるエレベーターになっていた
ボタンは地下3階まであった、照明はLEDなんだろう
自動でついた、時間は少ない、指定された部屋にと向かう
地下1階の訓練室に直行した、かおりも一緒だ
ドアを開けると照明がつき、そこは鏡張りの部屋だった
かおりに、この階の何処かにある魔道具を
探して持って来てほしいと頼み
かおりを部屋の外に押し出すと
鍵を掛けさせ、鏡の部屋の中心に立った
マジマジと俺自身の姿を眺めていた。
暫くすると、俺の顔に、鬼の顔が重なり変化していく
それとともに激しい怒り! 憎しみにが満ちていき心が
支配されていく、それに必死で抗うが、蛇のように心が
絡みとられていく、部屋の一廓にはガラスが張られていて
隣の部屋に繋がっているのだろう
そこに、かおりがいて、ガラスを叩き、泣きながら
何か叫んでいるが声は聞こえない。
少しの理性が彼女の為に! 俺は戦う! 彼女を守る!、と言っていた
俺は、薄れゆく意識の中、ブーツの短剣を抜き、膝に突きさした
かおりは口に両手をあて、叫んでいるようだった。
血はドクドクと流れている
俺は負けない! お前なんかに絶対に負けない! ウオーーーー。。。
叫んで、気を失った。
気がつくとベッドに寝かされていた、かおりが運んだのだろうか?
膝も治療されていた。どれだけ眠っていたのだろう
どうやら出血が多くて気を失ったようだが
まだ、妖魔の呪いを克服したわけでもない
直ぐに次の作戦を取らないとと
ふらつく足取りで、部屋に戻ろうとしたときに
かおりがやって来た、「頼まれたもの持って来たわよ。」
其れを手にして、直ぐに部屋に入り鍵を掛けさせた
額に銀を織り込んだ、鉢巻を巻いた
首には、銀のネックレス
両手にも、銀の腕輪をはめた
両脚にも銀の輪をはめた。銀の鉢巻、腕輪には
何やら呪文が書かれている、呪いを軽減するものだ
大きく深呼吸して、両手に力を込め電撃を作り出す準備をした。
自分に電撃を打つのは勇気がいった、でも鬼に渡すぐらいならと
腹を決め唇を噛んだ。
「俺は、絶対にお前になんか負けるものか!」
そう叫んだ瞬間、歪んだ鬼の顔が鏡に映る
其れは俺の顔に重なり、
響く唸り声の様な声で フハハハハハハハハ
「無駄だ。俺に適うわけがない、観念しろ
儂にその身体をよこせ!」
手足は、ボコボコと赤黒く膨れあがっていく
俺は、薄れゆく意識の中で電撃を自分に向けて撃った
電撃は弱くても駄目、強かったら俺の身体は丸焦げになる
しかし、薄れゆく意識での調整などできなかった。
かおりを見た、声など聞こえるはずもないが
守ってあげられなくてごめん。と呟き
その瞬間バリバリと電撃が走り、部屋は光で目が眩んで見えなかった
かおりが飛んで入って来た、そこには服も髪も焦げた
猛が倒れていた。
「猛!猛!猛~!!」
かおりの声が遠くに聞こえた。
* * * * *
ベッドで目が覚めた。かおりが泣いている
「猛!! 猛ー!! 猛~!!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの、かおりがいた。
良かった。。。死んじゃったかと思った」
「もうやめて!猛 死んじゃう」
「グスッ。グスッ。ウエッウエッエエエエン」
かおりの頭を撫でながら、言った。
「俺の中に巣くうやつは、とても強大なやつだ
こいつに勝たないと俺は俺でなくなる。大丈夫だ
次はきっと勝つ、ねじ伏せて見せる!!」
少し休んで、また部屋に向かった
歩くのにも、かおりの肩を借りなければ
歩けないほどに、衰弱していた、苦しい。。
でも敵も苦しいはずだ、もう一息だ。
鏡の前で叫ぶ!
「俺の軍門に下れ! ならば許してやる。俺は妥協しない
もし俺が死んだらお前も、居場所はないのだ、一蓮托生なのだ!!」
「覚悟しろ! いくぞ!!!」
鏡がゆらりと妖魔を映し出した。
「儂の名は、ザブルス、俺は決して負けない!
お前を食いつくすのだ!」
なぜか名乗った。しかし
心なしか、前回の勢いは感じられなかった
クソ!俺は、電撃を大きく手に貯めた。
次の瞬間 「くらえ!!」自分に打った
バチバチバチバチ、、、、、、、
ドスンと倒れた。
「キャー!!」
かおりの叫びが聞こえた気がした。
◆
俺は、草原に立っていた。
周りには、誰もいない、どこまでも続く草原しかない
俺は死んだのだろうか?
ふと、そう思った。
ずっと、続く草原を歩きだした。
日は高い、でも熱くはない。
何もない草原をただひたすら歩いていると
前に人?がいる
見たことが有る。
いや正確には人ではなかった。
あのザブルスだった。
俺は構えた、まだやる気なのか!
ザブルスは、「まぁ待て、待て、お前も大したものだ
このザブルス様と遣り合うのだからなぁ、なんかこう
お前を少し気にいったぞ」
ザブルスは少し照れ笑いをして見ている
とことん戦った、戦友のような感じなのだろうか?
妙になれなれしい。
そう思って見るとあの鬼のような顔も
禍々しいそれではなく、
勇敢な戦士のように見える。
「俺はお前に取り付いてしまっているのだし
なんだ、そのー、つまり、お前の勇気も気にいった
なので許してやる。」
居丈高だが、仲直りしようと言うことなのか。
フッ。。俺は笑ってしまった。
ザブルスも俺につられて大笑いしていた。
、、、、、、、、、、、
目が覚めた、かおりが泣きじゃくっていた
俺の心臓は数分止まっていたそうだ
やっぱり俺は、死んでいたのか
AEDで必死に蘇生を試みて俺の
名を呼び続けて、いたんだそうだ
おかげで、俺は生き返った
かおりがいなかったら俺は勝てなかった
己との戦いに勝利することが出来たのは
かおりのおかげなのだ、かおりを抱きしめた。